2023ファジアーノ岡山にフォーカス41『 夢の上に20年~継続~ 』J2 第30節(A)vs大宮アルディージャ
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タイトル画像は、noteの機能により選択した「subaruphoto2002様」からお借りしています。
1、夢の可能性~ ∞ ~
ファジアーノ岡山が、結成してから実に20年、色々な壁を越えて、今は、J2の舞台で戦っている。当時抱いていた大人達の夢は、子どもたちの夢へと大きく膨らんだ。先日NECナイメヘン(オランダ1部リーグ)へ移籍した佐野 航大もファジアーノ岡山というクラブに夢を抱き、愛着を抱き、最後はファジアーノ岡山というクラブで、引退したいと語ってくれた。
ファジアーノ岡山というクラブは、選手や監督、コーチ、サポーター、スポンサー、スタッフ、ボランティアなど、多くの方の夢によって、成り立っている。ファジアーノ岡山というクラブが、夢の存在である限り、夢の力にかえて、ファジアーノ岡山というクラブは、少しずつ強くなっていく。
ファジアーノ岡山ユースUー18が、3位という過去最高成績を収めただけではなく、エースが、大会の得点王となった。U-15もノックアウトステージへの進出を決めた。夢という名の無限の可能性を力に、岡山は、着実に力をつけている。
しかし、それは、相手クラブも同じであり、岡山が、手にしたと思われた「勝利」を、試合終了間際に、大宮の33室井 慧佑に同点ゴールを決められてしまい、勝ち点3が、勝ち点1へと変わった。夢の大きさを競う競技ではなく、選手としての実力やチームとしての完成度や戦術の浸透度、相性やコンディションなどが複雑に影響して、勝敗は決する。
しかし、チーム強化やチームの目指す理想像というのは、クラブによって大きく違う。大局的には「夢の実現」のために、戦っている。そういった意味で、両チームは、最後まで勝利を目指すのである。どんな状況でも下を向かない、そういった両チームの意地と誇りを感じた引き分けとなった。
2、試合寸評~辛抱~
大宮は、90分間通して、J2屈指の基礎技術の高さを活かした切れ味鋭いカウンターで、決定機を演出する。岡山は、失点が多いチームではないが、大宮にカウンターやピンポイントのアーリークロスでのゴール前への進入を何度も許しただけではなく、決定機も何度も作られた。
ただ、それでも大宮が現段階で、最下位であることからも、攻守で戦術で、ハイレベルでないとJ2で勝ち点3を得る事が難しい。そう感じられる大宮の攻撃のクオリティの高さを感じられた。
岡山もボール奪取からのボール保持で「運ぶ→仕掛ける」という所まで比較的スムーズに行けた事で、大宮の攻撃の回数や時間を抑制することができた。オープンに攻め合えば、このカードであれば、分が悪い試合になっていたと感じられた。
岡山の着実に前進し、人数をかけた攻撃、大宮のプレーのクオリティを全面に出した少ない人数でも崩し切れる攻撃で、攻め合ったが、両チームの粘り強い守備対応や決定機でのシュートの精度を欠いた事で、0-0で折り返した。
後半の頭から19木村 太哉が入ると、ハードワークや全員守備全員攻撃が武器の岡山が若干だが、流れを掴む。ただ、試合を動かすほどの勢いまでは届かなかった。ただ、アクシデント込みで、23ヨルディ・バイスや7チアゴ・アウベス、17末吉 塁、48坂本 一彩といった選手の投入により、クオリティの部分で、大宮に迫る。
特に23ヨルディ・バイスの存在感は、一際際立つ。攻撃参加からのキープやドリブルで、攻撃に厚みを生み出すだけではなく、後少しというミドルシュートやセットプレーでの決定機に絡む。
試合が動いたのも23ヨルディ・バイスの守備からだ。スライディングタックルで、奪いかけたボールは、17末吉 塁の下へ行く、そこから大宮の複数の選手の間を奇麗に通過すると、フリーの7チアゴ・アウベスの下へ、この決定機を持ち味の決定力を活かして決めきった。
残り時間約5分ぐらいという事もあり、岡山が勝利を手繰り寄せた試合に感じたが、ほぼラストワンプレーという時間。大きな展開の正確なサイドチェンジで、寄せが間に合わない状況を作り出すと、速くて正確な鋭いクロスを入れて行くと、23ヨルディ・バイスの前に飛び込んだ33室井 慧佑が頭で合わせて、ゴールネットを揺らした。
劇的な展開により、両チームが欲しかった勝ち点3ではなく、勝ち点1を分け合った引き分けに終わった。
3、大宮の武器と相性~得点力~
大宮は、30節終了地点で、22チーム中22番目の最下位という位置にある。ただ、歴代のこの順位のチームに共通するような力不足のような絶望的な内容ではなく、むしろJ2でもトップクラスの得点力のあるチームであるように感じた。
ただ、実際の数字上では、そのクオリティの部分に対して、物足りないものとなっている。それは、少ない人数でも攻め切れるクオリティの高さに対して、全体としての守備強度の低さが、中位から上位のチームに比べて、響いているように感じる。
というのもJ2もレベルが向上し、総合力が問われるリーグとなっているからだ。良い選手を揃えるだけでは勝てない。選手の相性や対戦チームのサッカーの相性や3バックや4バックの使い分けなど、実力差を覆す戦い方や実力差を生み出す戦い方、戦術的にサッカーをさせない戦い方。
22チーム全てが、そういった武器を持っている。そこに勝ち続ける事の難しさ。これは、今季の順位表を見ても明らかである。序盤からここまで好調を維持しているチームは、町田のみで、優勝候補にも上げられていた磐田や清水も序盤は、苦しんだ。清水に関しては、監督交代もあったくらいだ。
だからこそ、大宮のカウンターの成功率に裏付けされる攻撃時のクオリティの高さは、J2トップクラスに感じた攻撃面の爆発的な力というのは、残り12試合もあれば、十分降格圏から脱出できる得点力があるというチームに感じた。
ただ、問題であるのは、降格圏が中位と陸続きであり、大宮同様に、勝ち点を積み上げる事ができる強いチームばかりという事だ。J2では、反則級と言える10シュヴィルツォクを獲得した大宮をもってしても簡単ではない。
同時に、もしここで残留することができて、今季の戦力に対して上積みして、守備面の課題をクリアできれば、昇格争いに絡める可能性も十分ある。それは、やはり昨季プレーオフに迫った徳島が、21位つけていることからも歯車が噛み合う噛み合わない部分で、この順位になってしまうというリーグだからだ。
それは、岡山にとっても同じ事で、今季このままプレーオフに迫る勢いを作り出せず、今の順位のまま終えて、ストーブリーグで、的確な補強ができれなければ、残留争いに巻き込まれる可能性もある。
J3も年々レベルが上がっており、J1経験クラブですらJ2になかなか上がってこれないリーグになりつつある。J3からJ2やJ1に移籍する選手も多くなり、日本サッカー界の底上げに大きく貢献できるリーグへと急成長している。
大宮の少ない人数で攻め切れるカウンターの流れ、特にアーリークロスやロングパスの正確さから岡山の攻撃から一転して、大宮のビックチャンスになるというシーンが何度もあり、30試合戦ってきたが、今季の岡山が、何度も同じ形で、カウンターを受けた事は珍しいことだ。
最後の同点シーンの一連の流れを見ても、事故的失点というよりは、前半から大宮が、続けてきたクオリティの高い攻撃が、最後にようやく決まったという確率の収束のような得点に感じた。
岡山としても決定機があっただけに、そこで決めきれなければ、こういった展開が待っている。今季何度も経験してきた岡山の隙を突かれてしまった。大宮としても岡山としても勝ちたかった試合と言えるのも、両チームの良さ、特に攻撃で出た試合であった。
4、ルカオとチアゴ~天秤~
99ルカオと7チアゴ。両選手はタイプの違うストライカーである。共存も可能であるが、1.5列目や2列目に良い選手が揃っている現状であれば、この試合のように、別々に出場することが効果的である。
ただ、99ルカオは、自ら点を決めるというよりは、チームに推進力を生み出し、押し込んでチームの得点力を高めるタイプのストライカーだ。18櫻川 ソロモンと同様に、現在のJ2で相手DFと対峙した状態で、シュートを決めきる力や剥がしてシュートまでいくという部分や得点パターンの部分で、やや物足りない部分がある。
ポストプレーやドリブルで、前進できるもやはり味方選手のサポートは、必要不可欠で、最後の所で、決めきるという部分では、7チアゴ・アウベスである。
ただ、今の岡山でどちらが、勝利に繋がり易いかと言われれば、7チアゴ・アウベスである。やはり、自ら得点できる力があるからだ。他の選手の中に、二桁得点決める事ができる選手が中盤にいれば、99ルカオの方が、勝利に貢献できるかもしれないが、22シーズンと23シーズンを考えてもストライカーが、点を決めないと勝てないチームである。
全体のチーム編成を見ても攻撃的なチームを標榜しており、最後の仕事ができる7チアゴ・アウベスの方が、守備面での隙やチャンスメークで、組織的に浮く、甘くなる場面が生じてしまっても、この試合で守り切れていれば、勝てたように、勝ち点3に近づける事ができる力がある選手だ。
ただ、怪我の多い選手で、今季のように離脱期間が長くなれば、チームが得点力不足に陥ってしまう可能性の高い選手だ。来季の編成は、まだどうなるか分からないが、プレーオフを考えてもこの試合のような試合運びを軸に考えたい所ではあるが、99ルカオか7チアゴ・アウベスタイプを考えた時に、フィニッシャーと言えるタイプのストライカーを多少無理してでも2人確保して欲しい。
J1昇格の可能性がまだ残されているので、J1を意識しても仮に昇格できなくても昇格するためにも、最前線の部分で点が決められるストライカーを二人確保して今から動いておくことも、どういった結果になっても来季に繋がるからだ。
48坂本 一彩のように、1.5列目でも高い決定力のあるストライカーもいるが、やはり強いチームや互角のチームに対しては、フリーの状況を作ることやシュートコースを見出す事は難しく、そこをこじ開けるようなストライカー。もしくは、アタッカーの獲得は、必須だ。
選手が、揃えば勝てるリーグではなくなっているので、補強を考えるだけで、泥沼に嵌ってしまいそうで、プロという世界の過酷さや怖さというのを強く感じられる。そして、こうやって好き勝手に、願望や書く事ができる、気楽さというのを感じてしまう所ではあるが、だからこそ、選手や監督、クラブへのリスペクトを大事にしなければならないと感じた。
ただ、99ルカオ路線か7チアゴ・アウベス路線か。残り試合のチームの戦い方。そして、その先の結末の先にあるチームのビジョンが、早ければ9月8日までの追加登録期間内に、動きがあるかどうかで、その辺りの方向性が見えてくるかもしれない。
99ルカオ路線と7チアゴ・アウベス路線のどちらが良いの話でもなく、どちらに天秤が振れるかという話であるが、私の中では、唯一無二の仕事のできる7チアゴ・アウベスタイプのストライカー、もしくは、アタッカーの必要性を、繰り返しになるが、感じている。
どちらのタイプのストライカーが、今の岡山には必要であるのか?皆さんのご意見を拝聴してみたい。
5、夢の上に20年~継続~
U-18のクラブユース選手権の結果だけではなく、試合内容から、下部組織の選手が、トップチームに増えて行く。そういった未来が近づきつつある。学芸館の岡山県勢初の全国大会での優勝を含めて、ホームタウンやユース出身が、チームを底上げしていく事の必要性。J1昇格から定着をクラブとして目指していく中で、必要不可欠であるとも感じる。
来季は、初めてユース出身選手として、大学経由で、実績を積み即戦力として期待される太田 龍之介が内定しており、いよいよファジアーノ岡山というクラブが、30山田 恭也に続く、チームの戦力となる選手が増えてくる中で、スタート地点に立ったと感じている。
このレビュータイトルである夢の上に20年。プロリーグに昇格してからは、14年目に立った岡山が、新たなステージに入った。そこを実感できつつある。
J2からJ1への扉の手前まで迫ったシーズンもあったが、未だに届いていない。北川社長が、市民クラブとしてJ1を目指せるリミットが迫っているというお話をされていたが、ファジアーノ岡山というクラブでのプレーを夢見たユース生やホームタウンの子供達が岡山に増えてくることで、その資金力を覆せれる戦力を擁する事ができる可能性もある。
そういった意味でも今季以降の岡山が、どう歩んで行くか。それは、やはり岡山というクラブが、J1にどれだけ近づけるか。辿り着いた時に、どれだけ戦えるか。そこに直結すると確信をもって言える。
「子どもたちに夢を」というクラブ理念は、子供達に夢の存在と、ファジアーノ岡山がなるだけではなく、ファジアーノ岡山としても子どもたちの可能性に夢を抱く。そういった想いもあるのではないか。先日ユースの試合をYouTubeで観戦しながら抱いた感情である。
岡山が、今後Jリーグで戦って行く中で、市民クラブとしての限界に直面するかもしれない。しかし、その壁を敗れるのは、どの時代でも若い力である。
子どもたちの夢の前に自分達の生活がかかっている選手もいるかもしれないが、夢のために戦える選手、そこを力に戦えるチームがあっても良いのではないか。ファジアーノ岡山というクラブが、そうであって欲しい。「子どもたちに夢を」という理念をこれからもぶれずに貫いて欲しい。
J1に上がれなくても、市民クラブとして、子どもたちの夢であり続けて欲しい。
これからも夢の存在、夢の場で合って欲しい。
その延長にJリーグで戦える意義、J1を目指す戦いが合って欲しい。
これからもファジアーノ岡山であることを願って、今日のユースの試合とファジアーノ岡山を応援したい。
文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino
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