2022ファジアーノ岡山にフォーカス15J2:第9節: FC琉球 vs ファジアーノ岡山「守備的⇒攻撃的」

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1、プレースタイル


 今季の岡山ではありそうでなかった点の取り合いとなった琉球戦を振り返っていきたい。

 琉球は、試合前時点で、岡山と同じ得点数ながらも失点数がその倍あるという事で、岡山との勝ち点を大きく開いている。得点が獲れることは良い事ではあるが、失点も少なくしていく必要がある。昨季まで堅守を売りにしていた岡山だからこそ、この部分を強く感じる所ではある。

 得点が獲れているが、守備をどう安定させていくのか、良い守備は良い攻撃に繋がる。再試合という事になったが、前節の山形戦がそういった感じで、13金山 隼樹が、絶体絶命の危機をファインセーブで凌いだシーンがあった。カウンターを受けた時に、高卒ルーキーの22佐野 航大が、1対1で抜かれる事があれば、絶体絶命のピンチで、ボール奪取して防いだという試合もあった。振り返れば、良い守備があるから同点や逆転が生まれる。攻守一体とは的を得た語句である。

 結果から言えば、良い攻撃はできたが、勝ち点3をあと少しで逃したという試合となった。

 3点も獲れたのに勝ち点3に繋げることが出来なかった。そう感じた方も多い方とは思いますが、これは、琉球のサッカースタイル故に、勝利するためには、大量得点が求められたとも言える。琉球は、攻撃を意識して、一定の距離感を保つことで、コンパクトではなく、幅を広く使うという意識が高く、守備が緩めで、岡山が、やりたいサッカーがある程度できた。

 ただ、琉球には、守備のスペシャリストと言える選手が少なく、どちらかと言えば、超攻撃的で、特にサイドから中に入れて行くという攻撃の練度は、ここ数シーズンのJ2での戦いを見ても顕著で、この部分は、より今季に磨きがかかっている印象を持った。

 岡山のCBには、23ヨルディ・バイスと5柳 育崇という空中戦に強いCBを擁しているので、得点を奪うためには、クロスの質や、バランスを崩すといった1クッションを置いた攻撃の工夫が求められる。

 多くのチームが、ここでCBを釣りだす形を作って行く中で、琉球は、速攻と質の合わせ技の正攻法で、岡山の攻略を目指してきた。サイドでのボールを保持する選手個人のスキルと、人数をかけた崩しでチャンスを探り、隙があれば、高精度のクロスを入れて行く。

 いくら守備側に、高さがあってもピンポイントで合わせられてしまうと、守備側が失点を防ぐのは難しくなる。先制点のFKにしても攻撃のクオリティは、やはりこの順位に停滞するチームではないものを持っている。

 こういった攻撃の良さを活かすために、琉球は、攻撃にスムーズに移るために、特に高い位置に上がることに躊躇いはない。攻守のバランスが組織的に大きく崩している訳では無いが、どこか守備が軽く見えるのは、攻守の意識的な部分が大きい。

 守備重視のチームであれば、守備時に危ない所を消して、スペースを消す守備やボールホルダーの選択肢を消す守備をするが、琉球は、守備をしていても攻撃を意識している節があるので、攻撃と守備が入れ替わった時の迫力や勢いというのは、J2屈指であるだろう。

 対して、岡山は、その琉球の意識の隙をついて、前に運ぼうとするところでボールを奪って、ショートカウンターというシーンを何度か作る事が出来たが、そこで、先制するということは出来なかったのは、もったいなかった。

 1失点目は、見事なFKを決められてのものであったが、その質を感じたが、2失点目は、岡山のミスと言えるシーンで、集中力の欠けるプレーと言われても致し方ないお粗末と言える守備対応ではあったが、そこを確実に決める琉球の得点の質の高さを感じる部分はある。やはり、琉球の1点目と2点目を見ても、琉球の選手の質は、今季のJ2でも高いレベルにあることは間違いない。

 なんとか、前半終了間際に、再三形を作っていたショートカウンターが奇麗に決まり、スタメン出場後に存在感を発揮している39白井 陽斗が、岡山加入後初ゴール。このまま行くと、今季も10宮崎 幾笑は、シーズンを重ねる内に出場機会が少なくなっていくというパターンに陥りつつある。確かに、チャンスメークと得点の双方に期待できるだけではなく、球離れも良いと思えば、仕掛けるところは仕掛ける。更に10宮崎 幾笑にはないスピードもある39白井 陽斗が、出場機会が増えてくるのも納得できるが、技術レベルは、10宮崎 幾笑の方が高いと感じる部分があるだけに、10宮崎 幾笑にもこの良さを活かしていくことで、得点に絡む活躍することで、相乗効果の生まれる競争にも期待したい。

2、価値のある勝ち点1


 2-1で、後半を迎える事となった岡山。最終的には、終了間際の失点で、勝ち点3こそ逃したが、得点の内容が良く、次に繋がるポジティブな後半であった。良かった点を中心に後半を整理していく。

 後半から4-2-3-1の形に変更した岡山。チームがチームになっていくと感じるのは、順を応じして、チームをバージョンアップしているからである。開幕の頃から、WGが中盤に降りてくる4-1-4-1(4-2-3-1)の守備の形や4-4-2へのシステムチェンジなど、様々な選手を試すということを自然とやっている。現状、対戦チームの対策の方が、結果的に上回って、勝ち点3から遠ざかっているが、着実に良くなっている。

 ここ数試合で、良い点はいくつかある。15ミッチェル・デュークと8ステファン・ムークの連携の良さの相乗効果で15ミッチェル・デュークが流れに絡めるようになってきたこと。8ステファン・ムークは、中央で仕事ができるので、今の岡山にとって欠かせない選手になりつつある。得点パターンが多彩で、岡山の新機軸となりつつある。9ハン・イグオォンも見てみたいが、23ヨルディ・バイス、7チアゴ・アウベス、15ミッチェル・デューク、8ステファン・ムークの実力者揃いで、難しい決断を迫られている。その辺り、5人まで出場可能なJ1に上がりたいと強く感じる。この試合でも8ステファン・ムークが、得点を決めており、その形も岡山の武器が出た攻撃の形であった。クロスに対して、セットプレーの流れで残っていた23ヨルディ・バイス、5柳 育崇、15ミッチェル・デュークが、囮という驚異の高さと迫力で、流れてきたボールを押し込むという形であった。岡山サポーターの誰もが、この形を見たかった。そういったゴールであった。

 19木村 太哉も目覚ましい成長をみせている。バーに何度阻まれてこそいるが、シュート意識がより高くなり、シュートまで行ける形が増えてきているのも収穫である。徐々に、自信を深めて、感覚を掴めていると感じる堂々たるプレーぶりである。ここからゴールを量産しても不思議ではないという段階で、後は決めるだけと言える。新戦力の選手との連携も向上し、より輝きが増してきている印象。岡山の攻撃における形が多彩化していることを目に見えて感じるのが、この19木村 太哉の活躍である。

 そして、待ちに待った15ミッチェル・デュークの今季初ゴール。PKを失敗した徳島戦から、チャンスで決めきれなかったシーンが、何度もあった。この試合でも後は決めるだけというシーンで、戻って来るDFが見えていなかったのか、ループシュートのため球足が遅く、追いつかれてクリアされてしまった。そして、CKのキッカーは、27河井 陽介。精度は非常に安定していて、今まで蹴らなかったのが不思議なぐらいであった。ただ、開幕戦のように高いトラップ技術を活かして、2次攻撃を仕掛けようにもセットプレーの回数自体が少なく、そういった狙いを活かしきれなかったのは、残念であったが、ここに辿り着くのは、現状のメンバーを見た時には、妥当な判断と言える。

 24成瀬 竣平の安定感は、間違いなく岡山を一段回上へと押し上げてくれるのではないかというパフォーマンスであった。同じポジションである16河野 諒祐もポジションのレギュラーから外れる可能性も出てきた事で、成長やプレーへの好影響を期待したい。水曜の試合が増えた中で、SBの層が厚くなることはチームとして、間違いなくプラスである。そして、期限付き移籍前まで24番を背負っていた下口 稚葉にとっても刺激を受けていることは間違いないだろう。勝負の世界なので、実力と結果が全てではあるが、チームワークや組織力といった言葉あるように、1人ではできないスポーツ。監督、スタメン11人、リザーブ7人といった選手だけではなく、練習を高いレベルで実施するために、メンバー外の全ての選手のレベルも高い必要がある。その中で、チームとして、どう1つになっていくのか、勝ち点の取りこぼしや粗さこそ目立っているが、間違いなく前進している。


この試合でも後少しという所で、勝ち点3が逃げて行った。ただ、有馬ファジのように試合をクローズするという形を採用せず、追加点を狙って行くというような意識も高く、そういった意味では、得点への期待値は、必然的に高くなっている。琉球もスタイルが近く、選手の相性やかみ合わせの部分で、岡山の方が順位は上ではあるが、同じ方向性であることを考えると、守備が安定しなければ、琉球の立ち位置に引き込まれる可能性も出てくる混戦のリーグの中で戦っているという現実を、琉球の攻撃の練度の高さから突き付けられた。ただ、木山 隆之監督や選手に焦りはなく、足りない点に対して、多くの解答を出し、成果をあげている点もあることからもチームとして、前を向けている。盲信までいくと良くないが、客観的に見ても、まだチームを信じて応援していきたいと思える内容を木山ファジは、得点で証明してくれている。


3、雑感


 采配に、そうすべきではないかと感じる部分。例えば、5柳 育崇と23ヨルディ・バイスのCBコンビの相性とか気になる所ではあるが、デメリットが大きくなりつつあるという声もあって、実際にそうだから、勝ち点3を取れていないという厳しい現実がある。ただ、先ほど指摘した通り、攻撃における内容を見ていると、今までの岡山にない魅力を持っている。

 守備が、守備がとかなり気になるのも事実ではあるが、もっと攻めて欲しい。という声に関しては、かなりカバー出来ているのではないかと思う。15ミッチェル・デュークも8ステファン・ムークの加入で、良くなってきていて、4-3-3以外のシステム的な戦術の幅が広がり、様々な選手の成長や連係の改善は着実にある。

 出場機会の限られたベテラン選手にチャンスを与えない訳では無く、チームの伸び代を優先して、我慢して貰っている側面が強いと思う、シーズン終盤に差し掛かって行けば、一部怪我の選手もいるが、4濱田 水輝、6喜山 康平、11宮崎 智彦、17関戸 健二、18齊藤 和樹といった選手達に頼る時期も来るのではないかと思う。序盤戦からベテラン選手に頼り切ると、チームの伸び代は小さくなってしまう。そう思うことで、そういった選手達の出場機会を待ちたいと思っている。

 一方で、22佐野 航大は、今季初の出場樹機会が無かった試合となった。この辺り、木山 隆之監督が、チームをどう成長させていくのか。様々な点で、チームとしてトライしている印象を受ける。3バックを初めて導入した時の大変さは、当時を思い出すと大変だったと思うが、今季は、4-1という最高のスタートであったことで、腰を据えたチーム作りを進める事が出来ていて、結果こそここに来てついてきていないが、中盤~終盤にかけて上昇気流に乗れる可能性は、十分あるのではないかと思う。今は、不安より期待が大きい。

文章・図=杉野 雅昭
text・picture=Masaaki Sugino

ファジ造語

チアゴタイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」

2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。