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2021ファジアーノ岡山にフォーカス44 J2:第40節:ファジアーノ岡山 vs 京都サンガF.C.(Home) 「有馬ファジ総集戦」

1、 前置き

 なんとしても4連勝して、京都の目の前でのJ1昇格決定を阻止する。サポーターも選手も、監督も岡山の誰もが、その思いで、この試合を迎えた。結果は、0-0のスコアレスドローに終わり辛うじて、昇格こそ阻止したが、これがプレーオフと仮定した場合には、残念ながら、敗退という事となる。試合後の選手の表情を見た限りだと、それぐらいの気持ちで、試合に入っていたようだ。

 ファジアーノ史上最高に面白かったスコアレスドローでありながら、ファジアーノ史上最高に悔しい消化試合にもなった。そして、この数日後に有馬 賢二監督の退任が発表された。まさに、寝耳に水で、選手やサポーターにも衝撃的な発表であった。そして、この発表により、2試合残っているが、チーム状態と、順位を考えると、この試合が、有馬ファジの全てを出しての試合と位置付けられる試合となった。

 こう呟いたものの、まさか本当に、総集編の試合になってしまった。長崎と千葉も京都に負けないぐらい強いチームであるが、昇格の可能性がある2位の京都との試合は、終盤戦で、一番厳しいカードであった。そう考えると、残り試合は、退任の発表されたこともあり、有終の美を飾る試合であり、総集編とはまた違って来る。

 今回のレビューでは、有馬 賢二監督への感謝をこめて、Twitterのアンケートを交えつつ、今まで違った感じのレビューに挑戦していきたい。まずは、メンバーから入っていき、この試合での岡山の戦いについて、様々な視点というか、皆さんの視点を交えつつ、まるで、総括とも言える内容になるようにフォーカスを当てていきますので、よろしくお願いいたします。

「ファジアーノ岡山」
19ミッチェルがリザーブで、9李がスタメンは、今回が初の形。90分間で切れ目のない攻撃の形と14上門のフル出場意識したメンバー。最終ライン以降は、不動のメンバー。中盤も6喜山離脱後での理想系。リザーブには、攻撃的な選手で流れを引き込みつつ、勝利の方程式(3バック)のを意識した、リードした上で、逃げ切りを狙えるメンバーを揃えて臨んだ。
「京都サンガF.C.」
名将チョウ・キジェ監督が指揮し、J2屈指のストライカーの9ピーター。DFラインには、対人守備に優れる23ヨルディ、中盤には、元岡山の16武田。中盤の底では、24川崎が、バランスをとる。随所にしっかりと、ユースの選手が、ポジションを任せられている。メンバーを見ただけでも強さを感じられる。それだけの陣容をと言える。

2、京都に通用した部分

 試合後にアンケートを実施した中で、岡山が、京都に対して、通用した部分は、どこであったのか。また、逆に通用したという部分から見える通用しなかったのは、どの部分なのか。多くの方を感じた理由を考えつつ、私見ではありますが、私なりにまとめていきたいと思います。

 
 アンケート結果は、こうりました。やはり、リーグ屈指の堅守を誇る岡山の組織的な守備が、京都に通用した最大の武器と感じた方が多いようでした。9李 勇載を中心とした速攻とサイド攻撃を見せて、19ミッチェル・デュークを入れて、高さも発揮しましたが、最後まで、ゴールを破ることはできなかった。故に個の力で通用したという意見は僅かであった。

 上記以外という意見もあったが、コメントはなかったので、それがどの部分であったかは不明であるが、組織的守備をベースに攻撃こそ出来ていたが、この部分では京都に負けていたと感じた方も多かったかもしれないというアンケート結果と言えそうです。そちらのアンケートもありますが、後で触れさせて下さい。

 さて、ここからは、その組織的守備が、どういったものであったのかを私の私見を述べさせて頂きます。まず、京都が戦術9ピーター・ウタカで入って来た序盤戦。ここは、複数人で対応することで、危なげなくクリアし、岡山が対応で、もたつく間にゴールや、攻撃参加で押し込むということを許しませんでした。

 この時間帯は、岡山優位でしたが、流石の京都も修正してきました。中盤と両SBを押し上げる形を採用してきました。岡山として、奪取後にサイドから崩すという攻撃ができなくなり、攻撃の押し上げをすることが難しくなりました。この結果、48石毛 秀樹が、攻撃に関与するという事が非常に限定的になりました。

 ただ、それでも14上門 知樹と9李 勇載が、裏を狙うカウンターをボール奪取後に手ってして狙う形を採用。長澤 徹監督時代を彷彿させるほどでしたが、グラウンダーのパスも多く、ワンクッションを入れる事で、マークを剥がす、コースを作るという工夫が行われた中で、迷いなく徹底して入れていました。

 それでも、京都の個の対応力が高く、ゴールを割るに至らず、前半戦はスコアレスで、終える。後半に入ると、19ミッチェル・デュークが入ると、浮き球のパスを交えて、攻撃で、ゴールに迫る。27木村 太哉を投入するもいつものような存在感を示せず、それでもカウンターを主体として攻撃で、京都の質の高い攻撃の前に、集中して守る。

 最終的には、スコアレスドローに終わったが、一定の手応え、特に組織的守備が印象的に残った。京都としては、崩せそうで崩せない内容で、岡山として、ピッチに出た11人の1人1人で、集中してやりきったことで、こういった内容が出来たという試合でした。

3、京都に通用しなかった部分

 こちらもアンケートを実施しています。逆に、こちらは、通用しなかった部分がから見えてくる岡山の課題を見て行きたいと思います。また、通用した部分でも、触れることができなかった部分にも、ここで、触れていきたいと思います。それでは、この項もよろしくお願いします。


 私が、足りないと感じた選択肢3つ+上記以外というアンケートでしたが、上記以外はなし。圧倒的な得票数で、「試合を決める個の力」が、一番に勝利のために足りなかったという結果でした。一方で、京都にあった「組織に依存しない個の奪取力」に関しては、岡山は、守備が良いので、そこまで課題に感じなかった方が多かったようです。

 一方で、京都にもそこまで、主導権を握られていたと感じるまで圧倒されなかったこともあり、カウンター主体の攻撃でも戦える。もしくは、カウンター主体の攻撃が、岡山のスタイルである。といった感じに、岡山の現有戦力やチーム状態を冷静に見極めた上で、「主体的な攻めの構築力」の伸び悩みが、有馬監督の堅守速攻をベースとした攻守のサッカーへの支持の高さを感じる結果となった。

 この結果で、面白いのは、9李 勇載と、14上門 知樹、19ミッチェル・デュークといったJ1でも戦えるFWの3人でも「試合を決める個の力」が不足していたという票が最多得票であったという事。これは、FWの個の力ではなく、チームとしての個の力を解釈するのが、正しいアンケート結果への解釈ではないか。

 具体的には、ここまで大活躍していた48石毛 秀樹や27木村 太哉の2人の攻撃のスペシャルな選手が、この試合では、消える時間が長く、チームとして活かし切れなかったという点である。どちらかと言えば、守備に回る時間帯が長く、カウンターしかできなかった。この辺りを、「主体的な攻めの構築力」が足りなかったと考えた方も、一定数出た理由である。

 個人的には、このアンケートでも①の選択肢の意図であるが、やはり、京都のように組織的ではなくても、個で対応できる個の奪取力があれば、それだけ人数をかけることができ、27木村 太哉や48石毛 秀樹が、攻撃に絡むシーンを増やせることが出来たと感じる。組織的に守れていることで、伸び悩んだが、岡山の得点力を上げるために必要な点であり、可能であれば強化していきたい部分である。

4、 両チームの選手評

 こちらでは、各ポジションでの良かった選手のアンケートを振り返っていく。尚、MOMの決選投票は、実施しなかった。各ポジションの良かった選手を観て行く事で、この試合が、どういった試合であったか分析できるだけではなく、チームとして、どれだけ戦えたかというのを示すデータの1つと言えるアンケート結果となっている。


 GKのアンケートでは、監督とサポーター、社長といった選択肢も交えた激しい投票戦でしたが、なんとか31梅田 透吾が、1位を死守したが、いつもよりは、伸び悩んだ。ただ、この試合では、それだけチームとしての守備意識が高く、フリーで打たせるということをさせなかった。その結果、31梅田 透吾の目立つプレーは、少なかった。それでもGKとして、ポジショニングやビルトアップで、安定感を生みプレーとメンタルで、チームを落ち着かせた。

 一方で、サポーター自身も良い雰囲気の中で、チームとして一体となって戦えた事で、その雰囲気を楽しめたと感じた方が多かったデータとなった。有馬 賢二監督の采配も評価する方も一定数いた。北川 信也社長に得票がなかったが、このチームの縁の下力持ちであることは、共通理解としてある。それ混みで、チームとして戦えたことが分かる結果であった。

 DF編は、5井上 黎生人が、圧倒的な1位でした。16河野 諒祐、22安部 崇士、11宮崎 智彦も良さを出した中で、この得票率は、選手同士とサポーター内での全試合フル出場を続けている5井上 黎生人への信頼の厚さを示すデータとなった。確かに、5井上 黎生人は、気が付けばDFリーダーとして、ラインコントロールや、攻撃のスイッチを入れる縦パス、ビルトアップや対人守備と、CBとして質の高いプレーができていた。

 16河野 諒祐は、いつもほど攻撃参加できなかったが、その分守備でもマイボールにする技術として、当ててマイボールのスローインにする巧さが、印象できであった。22安部 崇士も京都の強さと速さを持つ前からのDFに怯むことなく、ドリブルでかわして運ぶプレーをみせた。11宮崎 智彦もいつも以上の攻撃参加や、テクニックを活かした駆け引きでのギリギリのプレーで、違いを魅せた。

 MF編も26パウリーニョに集中した。6喜山 康平の不在の影響を感じさせない獅子奮迅の運動量と球際に厳しい守備からの縦パスで、攻守で王様として降臨。岡山が、主導権を握る時間を作る事ができた。一方で、48石毛 秀樹や41徳元 悠平といった選手も守備に追われる時間が長く、伸び悩んだ。7白井 永地も守備に回る事が多く、効果的な攻撃参加が出来なかった事で、CHでは対称的な結果となった。

 48石毛 秀樹は、少ない攻撃機会で、違いを示せなかったが、守備も出来る事を証明した試合となった。41徳元 悠平は、SBの経験で、11宮崎 智彦での安定した左サイドにすることができた。7白井 永地は、プレー機会自体は、多かったと思うが、局面を打開するという部分では、物足りなく感じてしまった試合となった。


 そして、FW編では、唯一票が分散した。京都サポの方の1票があっても不思議ではなく、僅差で、一位となったが、横一線と考えて差し支えない。唯一27木村 太哉が、いつものドリブルで、存在感を出せなかったことで、伸び悩んだ。今後は、押し込まれる中で、質の高い攻撃で、ゴール迫れるかが課題となった。

 9李 勇載は、開始早々での惜しいヘッディングシュートを含め、この試合最もゴールに迫った選手であった。あのシュートが決まっていればと思うが、今季一番の切れ味鋭いカウンターの原動力となった。14上門 知樹もハードな守備とゴール前に侵入していく部分で、怖さを見せたが、後一押しの部分でゴールに届かなかった。19ミッチェル・デュークは、空中戦の強さや、一番ゴールの可能性のあったミドルシュートがクロスバーを叩くというシーンを作るなど、力を見せたが、同じくゴールを決めきれなかった。


5、 総括(京都と岡山の差)

 最後に、京都と岡山で、特に差を感じた部分が、どこかのアンケート結果を見ていく事で、J1までの岡山の現在地を見て行く。これにより、見えてくる岡山に足りない物とは?もしくは、10位と2位の差は、どこにあったのか。または、どこを埋めて行けば、J1に近づく事ができるのか。そういった部分のアンケート結果を見て、この項では、総括していく。


 やはりというか、結局は、個の力でした。しかし、面白いことに個の力を感じやすい筈の「岡山の堅守を崩す攻撃の迫力」の得票率が少なかった。そして、岡山の良かった守備と同様に、「岡山の猛攻を防いだ堅守」に、一定の票が集まった。更に、有馬 賢二監督が、解任されて話題となっているが、「監督を中心とした結束力」にも差を感じている方が、3番目ながら、投票されていることにも驚いた。

 この中で、監督について触れて行くが、チョウ・キジェ監督の湘南での実績を見ても、やはり、良いチームを作っているなと感じた方もいて、勝利に持っていけなかった要因の1つとしても考えている方がいる。ただ、圧倒的な差ではなく、3番手という事を考えると、逆に有馬 賢二監督を評価している方が多いと考えても良いと思います。

 チームとして負けているという結論になった方が、一番でない事を考えてもチームで、京都にある程度戦えていた。ただ、チーム作りの部分で、攻守での最高値への持って行き方。中盤のサイドのスペースの使い方により、攻撃の迫力や守備の安定を生む戦い方を、スムーズに使い分けることができるのは、流石であった。岡山としても、攻撃の最高値をどう高めて行くのか、同時に改題であることも分かった。

 次に、京都の堅守に部分で触れて行くが、やはり23ヨルディ・デバイスと21清水 圭介の勝ち点を呼び込むCBとGKとしての個の力というのを特に強く感じた。岡山が攻めていて、乱しているが、「崩している・破っている」という表現は、使い辛い。どちらかと言えば、岡山の個の力で、シュートまで運んだという部分もある。

 そして、個の力に差を感じたというのは、チームとしての総合力と解釈するというのが、一番考えたい理由である。あぁ、このチームは、攻撃(守備or組織or監督or選手)が、凄いチームであったではなく、1人1人の個の力は、やはり差があったと感じたという結論に至った。例えば、京都に堅守を崩されなくて、その部分に投票がなくても、1つ1つプレーを見て行くと、やっぱり9ピーター・ウタカは、怖かった。

 そう考えると人は、攻撃ではなく、個の力に投票する。こういった感じにここまでの、アンケート結果を見て行くと、通用した部分と通用しなかった部分を、特定するのは難しく、各選択肢も解釈1つで、投票結果が変わって来る。だからこそスコアレスドローという結果であったが、ファジアーノ岡山史上最高にエキサイティングな試合と感じたと投稿した、私のツイートにも共感をして下さった方が多かったのだと思う。


 有馬 賢二監督を来季見る事ができないのは、本当に残念であるが、この京都戦を魅せてくれた事に感謝しかないし、京都という終盤戦で最強の相手に当たれた事で、ファジアーノのスコアレスドローの中で、語り継がれる伝説の試合となったことは間違いないだろう。この気持ちを、岡山サポだけではなく、京都のサポの方にも感じて頂けていれば、嬉しく思う。

 最後に、両チームの監督&選手&サポーター&関係者のみなさま。最高のコーチング&プレー&雰囲気&環境のスコアレスドローに作って下さり有難うございました。岡山サポとして、この試合を記憶に留め、いつかJ1にという気持ちを強く持ち、引き分けに終わった悔しさを、次節から繋がる来季以降に繋げていってくれると信じたくなる試合となり、感謝しかありません。本当に有難うございました。そして、アンケートにご協力下さり有難うございあました。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

ファジ造語


「有馬曲線」
 チームとしての状態は、上下動することがあるが、チームとしての限界を決めない事で、つねに挑戦と失敗を繰り返す。円周率のように、チームとしての進化にそこはなく、カメレオンのように対戦相手によって、戦い方も変える。また、チームの中で、選手を巧く組み入れていく事で、選手の良さを引き出し、少しずつチームを上向かせていくことができることを、岡山における「藤井曲線」である「有馬曲線」と、表現した。
「ファンタジスタシステム」
 2トップに技術のある選手を据えて、中央にポジションをとる。中央を通そうとするパスコースを制限し、サイドへ出した所を狙う。そこを突破された後も、粘り強く守り、ボールを奪ったら2トップにボールを集め、技術のある選手が攻撃に移った時に、2トップの傍にいき、技術と創造性を活かして、ゴールに迫るやや攻撃よりの作戦。
「ミッチェルプレス」
 速さ・高さ・強さ・巧さ・持続力によって、19ミッチェル・デュークがプレスを繰り返して行く中で、攻撃的なMFが追随する中で、相手のパス回しの自由を大きく制限する。また、後方の選手もハイライン、中盤もコンパクトに保つ事で、高い奪取力を発揮する。ただ、チームとしての消耗も大きく、19ミッチェル・デュークの1トップ時しかできない作戦。
「勝利の方程式」
 リードした場面で、4バックから3バックにシステム変更し、重心を完全に後ろに置く分けではなく、中間に位置をとり、遊撃に専念しつつ、カウンターにより追加点を狙う。スペースを空けずに、岡山の守備時の集中力や献身性を活かし、守備にハードワークし、攻め手側のミスを誘発させて、時間を稼ぐことで、同点や逆転のリスクを小さくし、逃げ切る作戦。
「高低縦横の攻防」
 得点を狙う攻撃スタイルの属性の指標。9李 勇載と19ミッチェル・デュークが揃う事で、縦の攻撃と横の攻撃。どちらでも高い質の攻撃が可能となる。また、低い(グラウンダーの)クロスやパス、高い(浮き球)のクロスやパスの多彩な出し手も揃った事で、多彩な攻撃と柔軟性のあるチームスタイルが可能となった有馬ファジが目指す理想系の1つの形を感じさせる要素。
「守備は最大の攻撃」
 良い守備からの攻撃が主な攻撃パターンの岡山のチームスタイルを表現する言葉。岡山が意図した展開の時は、自陣でのプレー時間が短く、シュート数が多くなる。ただ、現状は得点まではなかなか繋げられず、攻撃は最大の防御と言えるぐらい質の高い攻撃ができない現状のチームが行き着いた勝負に徹する岡山の献身性が反映されたプレースタイルと言える。
「+1を作る3の原則」
 攻守のあらゆるプレーで、数的有利を効果的に作る事で、守備時にはスペースを空けない。攻撃時には、対応が難しい攻撃パターンを多彩化することで、守り辛くする。また、守備では危険なシーン自体を少なくするリスク管理、攻撃では、良い形を作るための迅速さ。こういった部分を最低でも3人で、そして第3の動きを強く意識したチームで戦う。

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