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2021ファジアーノ岡山にフォーカス25 「2021シーズン前半戦総括」

1、 前置き

 降格を心配されていたシーズンであったが、とりあえず、中位という位置づけで、前半戦を終える事ができた。まだまだ上位に食い込んでいくには、足りない物が多いのも事実であるが、的確な補強と、怪我人続出という状況を逆手にとって、若手を抜擢する中で、新たなスタイルを構築できた前半戦。

 各ポジションの状況を整理していく中で、後半戦に向けての課題や、逆に後半戦で期待できる所についてもまとめていきたい。果たして、その内容が、ポジティブなものであるのか、逆にネガティブなものなのか。皆さんの目に、どう映っているのか。その認識が、私のものと離れているのか、近いものなのか。

 各ポジション各選手、チームの完成度・熟成度。様々な視点で、チームを冷静に評価できるように心掛けて、前半戦を総括していき、前半戦の良かった所や悪かった所などを振り返って行く。各選手各ポジションにしっかりフォーカスを当てることが出来るように、いつも通り全身全霊で、書きますので、よろしくお願いいたします。

2、 前半戦総括(成績)

「前半戦の成績」
順位:13位
勝ち点:25
勝敗:7勝4分10敗
得失点:19得点21失点(-2)

順位(13位)
充実度(C)

 怪我人が多く出た中で、真ん中よりは下ではあるが、悪くない順位である。上位を見てみると、首位の磐田は、50遠藤 保仁をはじめとした、元日本代表を多数要する。ネームバリューという点で、上位チームに見劣りする中で、チームとして戦ってきた中で、上位に対してもある程度戦えるものを示せた。エース9李 勇載不在の中で、健闘した順位と考えたい。

勝ち点(25点)
充実度(C)

 1位と2位の座に関しては、射程圏外と言える勝ち点ではあるが、プレーオフがあれば、十分狙える位置という事で悪くない勝ち点。負けないが、勝てないというサッカーではなく、勝てそうだが、負けるといった中で、勝ち点が伸び悩んだ。負けない上に勝てるチームと比べて、勝ち点が大きく差がついたことも確かであるが、先制逃げ切りの形が出来ている点では、上位に行く権利のあるサッカーが出来ている。後は、勝ち点にどう繋げるかどうか。

勝敗(7勝4分9敗)
充実度(D)

 大きく負け越した結果。特にホームで勝てなかった事は大いに不満。やはり、勝利という結果で、サポーターを元気に出来なかった事は痛い。選手や監督もその辺りは、強く感じている筈で、後半戦は、ホームもアウェーでも勝つことで、連勝ができるかどうか。トータルで、最終的に勝利が敗戦を上回る後半戦に出来るように、前半戦の経験を活かして欲しい。

得失点(19得点21失点-2)
充実度(D)

 チームの設定した60得点に到達には、程遠い平均得点。先制逃げ切りの勝利の方程式の3バックを確立した中で、勝利を伸ばせなかったのは、得点力の低さがある。ただ、内容を見ると、昨季よりは大幅に改善しており、昨季以上に、安定した守備に、磨きがかかった。更に、攻守が噛み合って、得点力が上がれば、来季は、上位勢とも十分戦えるチームになれる。

3、 前半戦総括(GK)

「GK出場記録」
1椎名 和馬(0試合0失点)
13金山 隼樹(18試合:16失点)
21馬渡 洋樹(0試合0得点)
31梅田 透吾(3試合:5失点)

GK各選手評

13金山 隼樹(貢献度B:18試合:16失点)

 的確なコーチングと、抜群の反応、強力なキック力。この3つで、岡山の堅守を支えた。もともとシュートセーブには、定評があったが、今季もチームを救ったセーブが、何度かあった。DFラインとも良い関係を構築し、互いに堅守をフォローしあう事で支えた。一方で、足下の弱さは隠しきれず、DFラインの裏のカバー力やハイボール処理も、やや不安定であった。

31梅田 透吾(貢献度C:3試合:5失点)

 岡山デビュー戦の琉球戦では、ファインセーブを連発。琉球の猛攻を防げたからこそ、3-0というスコアを実現することができた。ただ、続く京都戦と甲府戦では、連係ミスやチームとしての粘りを発揮する事ができず、チームフィット具合は、まだまだであると痛感した。ただ、GKとしては、基礎がしっかりしており、潜在能力の高さをプレーで示した。

GK総評(B)

 前半戦のほとんどをGKとして、ゴールマウスを守った13金山 隼樹が、安定したポジショニングとDF陣との連携で、岡山の堅守を支えた。残り3試合では、チームがハイラインを志向が強くなってきた事で、正守護神を31梅田 透吾に譲った。この2選手のみの出場であったが、チーム状況に応じたGK起用で、前半戦21失点という堅守で、1試合平均1失点にまとめた。

 13金山 隼樹は、受ける守備スタイルへの適性の高さを示した。コーチングの声も通り易く、守備の重心が多少低くても、混乱することなく、堅守を築いた。31梅田 透吾は、機動力でハイラインのスペースをケアし、ビルトアップの安定ができる技術があるが、ハイラインをケアする中で、連携を深め、失点を減らしていく必要はある。タイプの違う守護神をチームスタイルの選択に応じて、変更できるのは強みで、両選手を巧く起用していきたい。

4、 前半戦総括(DF)

「DF出場記録」
2廣木 雄磨(左右SB:4試合0得点)
4濱田 水輝(CB:14試合0得点)
5井上 黎生人(CB・右SB:21試合0と得点)
8田中 裕介(CB・右SB:3試合0得点)
16河野 諒祐(左右SB・右SH:21試合0得点)
22安部 崇士(CB:4試合0得点)
24下口 稚葉(左右SB・右SH:5試合1得点)
33阿部 海人(CB・右SB:15試合0得点)
39増谷 幸祐(右SB・CB:0試合0得点)
41徳元 悠平(左SB・左SH:18試合0得点)

DF各選手評

2廣木 雄磨(貢献度C:4試合:0得点)

 怪我で出遅れたが、昨シーズンのチーム事情により主戦場であった左SBではなく、右SBで出場機会を掴んだ事で、持ち味を発揮し、完全復活と言っても良いパフォーマンスを、復帰戦から見せた。DFラインの一角として、ミスが少なく、SBとしての運動量を全面で出せた事で、パフォーマンスが安定していた。パワー系の選手に対して、どこまでやれるかは今後の注目ポイント。

4濱田 水輝(貢献度B:14試合0得点)

 岡山のCB陣の中での唯一のパワー系CB。キャプテンとして、DFリーダーとして、精神的支柱として、堅守を支えた。体勢が崩れる中で、J2でも増えた規格外ストライカーの選手と真っ向勝負で、粘り強く守った。怪我で離脱した事で、チームの守備が崩れた時期があった上に、ハイラインを志向するチームに変貌した事で、スタメンに戻れるかどうか問われている立ち位置にある。

5井上 黎生人(貢献度A:21試合0得点)

 岡山で、フル出場を続ける選手の1人。足元の技術、高い身体能力を活かした空中戦の強さ、プレー予測に優れたシュートブロック。どれもJ2でも高い水準にある。左右のどちらの足でも安定したキックもできる上に、怪我に強く、チームの守備の要として、計算できる。攻撃でもセンスがあるプレーができ、セットプレーで得点できそうで出来ていないので、後半戦では得点でも期待したい。

8田中 裕介(貢献度E:3試合0得点)

 頼れる足元の技術に優れるCB。ただ、今季は、5井上 黎生人にスタメンの座を奪われてしまった。序盤戦では、3バックシステムのために短いながら出場機会を掴んでいたが、怪我で離脱。持ち味の攻撃的なCBや、経験を活かした守備など、持っているものは、大きいが、ここまでは、その力を発揮する場は、限られている。後半戦では、コンディションが回復して、出場機会を掴みたい。

16河野 諒祐(貢献度B:21試合0得点)

 切れ味鋭いSBの攻撃のスペシャリスト。右SBが主戦場だが、守備をある程度免除した上で、どんどん攻撃参加する事を許されていた。クロスやドリブル、パスで、深い所まで侵入し、アシストを狙う。時には、ゴール前に顔を出し、シュートを狙う事もあったが、得点までは至らず。2廣木 雄磨の復帰で、ポジションを追われたが、その攻撃センスは、後半戦でも必要となってくる。

22安部 崇士(貢献度C:4試合0得点)

 怪我人が続出した事で、緊急補強での加入した左利きのCB。貴重な左利きのCBとして、驚くべきスピードでチームにフィット。利き足に適した左CBとして、ビルトアップと持ち上がりの攻撃面での良さが光っている。守備でもパワーを活かした安定した守備をみせている一方で、京都戦での連携不足によるミス。そういったプレーを減らして行くことで、攻守で岡山での活躍に期待したい選手。

24下口 稚葉(貢献度D:5試合1得点)

 豊富な運動量と物怖じしない堂々たるプレーが特徴のSB。少ない出場機会ながら、そのメンタルの強さを活かした思い切りの良いクロスやシュートで、得点に繋げてきた。ただ、一方で、気が強すぎるあまり、危機察知能力が甘く、DFラインとしての守備への予測が足りず、簡単にラインを割られて、失点繋がるシーンも少なくなかった。その辺りをクリアする事で、後半戦は出場機会を増やして欲しい。

33阿部 海人(貢献度C:15試合0得点)

 3バックの逃げ切り、もしくは攻撃態勢を整えるために主に右CBでの起用がメインであった。スピードを活かした守備の対応力は、3バックに適しており、出場機会を掴んで行く中で、プレーを安定してきた。4濱田 水輝の怪我で、CBを任された際は、スピードを活かすためにハイラインに挑戦して行く中で、失点が増えた時期もあったが、チームの戦い方の幅を作る事に、貢献できた。後半戦は、他の選手との激しい競争が待っている。

41徳元 悠平(貢献度B:18試合0得点)

 シーズン開幕当初は、左SBが、主戦場であったが、途中加入した11宮崎 智彦が、左SBで出場機会を掴むと、左SHが、主戦場となった。左SB・SHとして、機を見た攻撃参加や、14上門 知樹のとのプレーの連携は良かったが、27木村 太哉との完成性、もっと詰めて行く必要がある。ただ、フル出場が多かった時期と違い、コンディション調整がし易いという点で、後半戦は、もう一段回上のパフォーマンスに期待したい。

DF総評(B)

 CBは、4選手のみという開幕前の不安は、4濱田 水輝と8田中 裕介が、怪我で離脱するという時期に、守備が安定しない状況を生み出し、難しい時期があった。そこに対して、22安部 崇士を補強する事で、守備の安定と、安定したビルトアップを可能とした。また、その間、CBを担った33阿部 海人も試合を重ねる中で、成長していき、安定感が出た事は大きかった。

 失点を重ねる試合2,3試合続いたが、33阿部 海人のスピードとキックの精度を活かすという視点から、4濱田 水輝の時より更に高いハイラインに挑戦。もともと、ラインを高くして、コンパクトに保つというチームコンセプトで合った事もあり、スムーズにチーム戦術に落とし込むことができた。

 結果的に前半戦は、1試合平均1失点という安定な堅守を構築することができた。中でも5井上 黎生人の貢献度は大きく、DFで唯一のフル出場。様々な選手とコンビを組む中でも高いパフォーマンスを発揮した。後半戦も4-4-2の相方のCBの組み合わせは変化していくと思うが、誰と組んでも安定したプレーが、期待できる。

 そして、先制逃げ切りの作戦としての3バックは、効果的で、33阿部 海人や8田中 裕介、4濱田 水輝、6喜山 康平といった選手が、DFラインに加わる事で、安定した堅守で、3バックの状態で、リードしていれば、100%の勝率を誇っている。これは、上位に通ずる部分で、DF陣には、この部分の安定感を後半戦に期待したい。

5、 前半戦総括(MF)

「MF出場記録」
6喜山 康平(DH・CH・CB:20試合2得点)
7白井 永地(DH・CH・右SH:21試合1得点)
10宮崎 幾笑(CH・右SH・OH:19試合1得点)
11宮崎 智彦(左SB:8試合0得点)
14上門 知樹(左右SH・OH・ST・CF:21試合6得点)
17関戸 健二(CH・右SH:5試合0得点)
26パウリーニョ(DH・CH:10試合0得点)
27木村 太哉(左右SH・WG・ST:21試合2得点)
28疋田 優人(CH:10試合2得点)
29劉 龍賢(DH:0試合0得点)
35山田 恭也(SH・CF:2試合0得点)

MF各選手評

6喜山 康平(貢献度A:20試合2得点)

 怪我で、シーズンを棒に振った昨シーズンとは一変して、今季は、コンディションの回復し、フル出場できる試合も増えて来た。28疋田 優人にスタメンを譲った時期もあったが、プレーで、信頼を回復し、スタメンに復帰した。守備時の危機察知能力だけではなく、効果的な楔形パスや、ゴール前での高い得点力。チームに欠かせない頼れる副キャプテン。後半戦も攻守の要として期待がかかる。

7白井 永地(貢献度A:21試合1得点)

 チームでフル出場を続けている2選手の内の1人。試合を通してハードワークする中で、試合終盤となっても運動量もプレーの質も落ちない。攻守でハードワークする事で、攻守での人数の武器として、攻撃時には、厚みのある攻撃を可能とし、ゴール前にも顔を出す。守備では、味方選手をフォローする事で、相手チームの攻撃の自由を制限してきた。攻守で欠かせない選手で、後半戦も攻守での活躍に期待したい。

10宮崎 幾笑(貢献度C:19試合1得点)

 開幕戦で、PKでの得点を決めて、得点を重ねていく事が期待されたが、なかなかチームの攻撃の流れに絡めない試合が続いた。守備での献身性が光る一方で、一時期は、フィジカルの弱さが目立ち、攻撃のボールロストが目立ったが、連携を深めて行く中で、チームとして良さを引き出せるようになってきたことで、ゴール前でのプレーするシーンが増えて来た。後半戦は、より攻撃に絡む事で、得点に絡むシーンが増えてくることに期待したい。

11宮崎 智彦(貢献度B:8試合0得点)

 シーズン途中での加入となった11宮崎 智彦。最初は、短い時間での出場機会に限られたが、コンディションが向上して行く中で、徐々に出場時間を伸ばして来た。今では、左SBとしてスタメンを掴み、基礎技術の高さとインテリジェンス溢れるプレーで、チームを落ち着かせる役割を担っている。後半戦も左SBとして、DFラインの落ち着きどころとして、頼りにしたい選手。

14上門 知樹(貢献度A:21試合6得点)

 チーム事情により、左右SH、OH、ST、CFといった様々な攻撃的ポジションを任された。右SHは、持ち味のドリブルやミドルシュートといった武器を発揮し辛い、難しいプレーが要求されたが、そのポジションを経て、STを任されると、再び高い得点力を発揮できるようになった。20川本 梨誉や10宮崎 幾笑とも良い関係を構築できつつあり、後半戦も得点量産が期待できる。

17関戸 健二(貢献度D:5試合0得点)

 岡山で高いバランス感覚が求められる右SHや、中盤のバックアップとして期待されていたが、怪我により長期離脱となってしまった。離脱するまでの期間でも出場機会こそ限られたが、独特のプレー感覚や間合いの良さといった部分は見せてくれた。チームとしてバランスをとりたい時に重宝していた選手だけに、序盤での離脱は、痛かった。

26パウリーニョ(貢献度C:10試合0得点)

 6喜山 康平の後に、出場する事で、攻守にアグレッシブに行くというメッセージを持って、試合途中での投入される事が多かった。しかし、怪我で離脱している中で、6喜山 康平のコンディションが良くなった事で、中盤の運動量を高める役割での投入がメインとなり、出場機会は、復帰後は減ったが、その奪取力や、右足のキック力は、魅力的で、後半戦は、守備のジョーカー的な交代カードとして期待がかかる。

27木村 太哉(貢献度B:21試合2得点)

 新人ながらここまで、全試合出場。そのドリブル突破する力やキープする力は、チームでナンバー1。右SHでは、ドリブルというプレーを選択しがちであったが、左SHでは、中に入っていくプレーや、パスでの連携でゴールに迫っていくプレーを見せるなど、選手としては、幅が広がりつつある。ここまで2得点と、得点力も徐々に上がってきている事から、後半戦は、更なる成長と活躍が期待される。

28疋田 優人(貢献度C:10試合2得点)

 プロデビュー戦となる愛媛戦での鮮烈な同点ゴールで、一気に信頼を掴み出場機会を掴んだ。持ち味である前から行く守備センスの良さを活かすべく、チームに受けて、呼び込む守備から前から行く守備へと転換させ、チームに新たなスタイルを浸透させた。その後も2得点目を奪ったが、6喜山 康平が状態をあげて行く中で、出場機会から遠のいた。後半戦では、来るべき時に備えて、前から行く守備と右足に磨き掛けて、結果を残す事で、再び出場機会を掴んで欲しい。

35山田 恭也(貢献度E:2試合0得点)

 怪我人が続出した危機的なチームの中で、プロデビューの機会を掴んだ岡山ユース出身の生え抜き選手。他の選手と比べて、差があるのではないかと、正直思っていたが、良い意味で予想反して、基礎がしっかりしており、プロとして堂々たるプレーぶりであった。経験を積んで行く中で、岡山の選手として、出場機会を増やしていって欲しい。後半戦を含め今後の出場機会を掴んだ時には、プロ初ゴールや初アシストに期待したい。

MF総評(B)

 MFは、7白井 永地を中心に豊富な運動量で、攻守共にアグレッシブなチームを支えた。シーズン途中からは、6喜山 康平のパフォーマンスが向上して行く中で、ボランチの心臓は、2選手となり、攻守で、圧倒的な存在感を魅せる様になった。特に、6喜山 康平の唯一無二の感覚の良さは、際立っており、時折みせるプレーは、一見の価値がある。

 また、2列目の選手も、チームとしての戦い方や、様々な組み合わせを試す中で、アップグレートを繰り返してきた。攻撃だけではなく、守備においても様々な形を試した。細かい基本ポジションを設定する中で、チームとして形作りをする中で、ボランチの2選手が巧くバランスを取り、連動した形を作ってきた。

 ただ、ゴール前の迫力という部分で、物足りなかった。チームとしての組み立てのミスや、仕掛ける所での連携ミス。プレーの難易度が上がると、チームとしての質が落ちてしまう事は、課題であった。選手同士が、近くプレーする事で、改善も見ることができたが、セカンドボールを回収する集中した守備を見せる一方で、攻撃の質という部分で、ミドルシュートが良かったのに対し、パスでの崩しの形やクロスでの崩しの部分では、物足りなかった。

 後半戦では、良かった守備の安定感に加えて、攻撃の安定感をどこまで高めることが出来るか問われる事となる。27木村 太哉、14上門 知樹、10宮崎 幾笑といった違いを出せる選手の起用の仕方や、28疋田 優人、26パウリーニョといった武器を持った選手をどう試合に組み込んでいくかなど、後半戦の起用法には注目したい。

6、 前半戦総括(FW)

「FW出場記録」
9李 勇載(CF:1試合0得点)
15山本 大貴(CF・ST:17試合2得点)
18齊藤 和樹(CF・WG・ST・右SH:9試合0得点)
20川本 梨誉(CF・ST:20試合2得点)
23松木 駿之介(右SH・右SB:2試合0得点)
25野口 竜彦(左SH・ST:6試合0得点)
32福元 友哉(CF・右SH:4試合0得点)

FW各選手評

9李 勇載(貢献度E:1試合0得点)

 自分がやるしかない。そういった言葉に反して、なかなか復帰できない現状の9李 勇載。エースとして、チームの得点が伸びていない中で、責任を強く感じているのは間違いない。前線で、足りない圧倒的なパワーを持っている選手なので、後半戦に復帰できる事を信じて、チームの誰もが、復帰を待ち望んでいるのは間違いない。ただ、無理をせず、岡山のエースとして、完全復活できる日に向けて、しっかり治して欲しい。

15山本 大貴(貢献度B:17試合2得点)

 ストライカーというよりは、ファーストディフェンダーとも言える選手で、その献身性は、今季も際立っている。CBだけではなく、SBにも対してもしっかり寄せて行くなど、センターでもサイドでも献身的にハードワークする。裏への抜け出しも多く、フル出場はなかなか難しいが、チームとしても中で勝負するシーンを増やし、FWとして、得点機会を増やしていきたい。

18齊藤 和樹(貢献度C:9試合0得点)

 ライン際でのキープ力はチームナンバー1。囲まれていても一瞬のスピードで、相手選手を置き去りにする。今季は、中央でのチャンスメークに磨きがかかり、サイドだけではなく、中央での、攻撃に絡めるようになった。ただ、やはりゴール前に入っていくというシーンは少なくなりがちで、適性はどちらかと言えば、ウイングでのチャンスメークの方が得意であるように感じる。怪我で離脱している期間が長かったが、チームスタイルが変化した後半の岡山で、どういった輝きを放てるかは、要注目で、どういった化学変化を起こしてくれるか楽しみ。

20川本 梨誉(貢献度A:20試合2得点)

 怪我人が多発した事もあるが、前半戦が進んでいく中で、徐々に出場時間を増やしていった。基礎技術に裏打ちされたミドルシュート、局面を打開するドリブル、パスの受け手の欲しい所にしっかり付ける正確なパス。様々なプレーで、違いを魅せる事ができる選手として、岡山の中で、存在感を増した。運動量や役割が増えて行く中で、停滞気味ではあるが、後半戦は、よりたくましくなった20川本 梨誉の姿が魅せてくれる筈である。目標の二桁得点も十分達成できる可能性を秘めた選手で、後半戦での爆発に期待したい。

23松木 駿之介(貢献度E:2試合0得点)

 特徴のある両サイドの選手が多く、出場機会は、僅か2試合に留まった。豊富な運動量と、積極的な仕掛けやクロスが武器。右サイドが主戦場だが左サイドも可能。ただ、違いを出せる選手が多くいる中で、どうアピールしていくか。運度量を活かすプレーの安定や連携を深める中で、出場機会を勝ち取りたい。FW経験を活かした得点力も発揮して行く中で、後半戦の台頭に期待したい。

25野口 竜彦(貢献度D:6試合0得点)

 基礎技術に優れるストライカーが増える中で、運動量の少なさや、スピード面という弱点を補えるだけの違いを示せるかどうか。ただ、狭い局面でもしっかり仕事ができるアイデアと、それを実行に移せるテクニックを持っている選手。何かきっかけを掴むことができれば、後半戦に、出場機会を増やしていく事も可能。チームとしても若手を押し上げは、チームに勢いと、戦力の底上げに繋がるので、そういったアピールに期待したい選手の1人。

32福元 友哉(貢献度E:4試合0得点)

 出場機会が増えるという状況で、これからという時に怪我で離脱するという事を繰り返して、チャンスを逃す事が多かった。今季も同じように離脱してしまった。怪我の少なさも立派な武器と言えるので、FWという激しいプレーが多いポジションで、冷静にプレーして、怪我を未然に防ぐ事は、プレーの質の向上や安定に繋がる。自然体でのプレーを意識して行く中で、プロとして、自分の武器を見つけて欲しい。そのために、焦らずその日に向けて、まずは、コンディションを整えて、出場機会を掴んで欲しい。

FW総評(D)

 エースが離脱という状況と、度重なる主軸の怪我という状況が続き、FW以外の選手が、FWとして、出場するという難しい状況が続いた。その結果、多くのシュートを放つもなかなか得点を奪えないという試合が続き、ストライカーの不在により、内容で圧倒するもスコアレスドロー、もしくは、一瞬の隙を突かれて、失点して敗れるという事を繰り返した。

 チームとして、誰が得点を奪うのか。そこが定まらない中で、献身的な守備をFWが実行し、ハードワークする事で、得点を重ねて勝利を奪う事より、いつしか失点しない事で、チャンスを待つ我慢のサッカーへとシフトしてきた。ただ、そういったサッカーにシフトして行く中で、やはり勝利が遠かった事や、怪我で離脱する選手が出てきたことで、試行錯誤を続けた。

 その中で、20川本 梨誉の台頭と、14上門 知樹のSTでの起用という現状の最適格とも言える組み合わせに、辿り着いた事で、上位にも勝利出来るサッカーへと到達した。ただ、それでもその上位には、エースと言える存在がおり、チームでの組織的健闘を無にする圧倒的な個の前に敗れた所で、前半戦が終了した。

 チームとして、勝利を目指す岡山が、補強や離脱者の復帰により、選択肢が増えてくる中で、得点源となる攻撃の形の整備や、改善といったアップグレードをどこまで出来るか。後半戦では、攻守で完成度が高まったチームに対して、チーム熟成度と個人技の融合したサッカーでの勝負となるので、ストライカーで勝負できるかどうか問われる後半戦となる。

7、 前半戦総括(総合編)

2021ファジアーノ岡山「後半戦の基本布陣」

60得点という高い目標を掲げて臨んだ2021シーズンであったが、前半戦を終えた段階で、1試合平均1得点以下という事で、目標達成は厳しい得点力不足に陥った。一方で、守備は、1試合平均1失点と、3失点という試合があった中で、この数字をクリアしているので、守備に関しては、合格点であり、チームの強みと言え、後半戦でもそこを前面に出して、勝ち点を積み重ねて行きたい。

前半戦の序盤に、力を入れていたポイントは、後からしっかり繋ぐ攻撃に速い展開(楔形パス)で、前線につけて、人数をかけてゴールに殺到するという数の攻めを目指した。この作戦で、シュート数こそ増えたが、ボックス内で仕事できるストライカーの不在(9李 勇載が合流できない)により、シュートを打っているが、得点が奪えないという課題に直面した。

 さて、どうしようかという所で、怪我人が出た事で、ルーキーの28疋田 優人を起用する中で、サッカーの方向転換に出た。スペースを消して、攻撃を呼び込み守備の毀れ球のセカンドボールを奪取して、前線に素早く展開していく受動的なサッカーから、前からボールを奪いに行き、ショートカウンターで、守備が整わない所を探して、そこから得点を奪って行くサッカーに挑戦した。

 一時的に、守備が不安定なサッカーが続き、ボールの落ち着き所がなく、攻守共に不安定なサッカーであったが、前から奪うシーンや、全体的にコンパクトに保つ事で、セカンドボールへの意識の高さが活きた事で、徐々に守備は安定した。ただ、依然として、ゴール前にFWの選手が不在で、得点率の低いミドルシュートが主な得点源であることは変わらず、得点が遠かった。

 今度は、4濱田 水輝が離脱し、33阿部 海人が代役を務めたが、安定していたエースキラーである主将の不在で、守備の崩壊を招いた。そこで、チームとして33阿部 海人と5井上 黎生人の特性を生かし、ハイラインとしっかり繋ぐスタイルをより、前面に出す事で、チームとして、前から行く守備の完成度を高めて、チームとして一体感が増した。

 また、この辺りから20川本 梨誉が台頭し、前線の中央で、体を張りチャンスメーク、そして、一発のある左右のシュートで、課題であった得点力に光が差した。この間27木村 太哉と14上門 知樹のサイドを逆にし、チームとして、選手の成長や組み合わせを試す事で、チームとしての幅を持たせることにトライしていた。

 チームのウィークポイントへの補強の動きもあった。手薄であった左SBに11宮崎 智彦。CBが2選手のみという危機的状況で、22安部 崇士が加入し、守備の安定と、ビルトアップの更なるバージョンアップに成功。11宮崎 智彦の加入で、41徳元 悠平を左SHの起用する形を採用し、左利きのサイドを左サイドに集める事で、チームとして安定感が生まれた。

 そして、6喜山 康平のコンディションが上がってくる中で、徐々に出場時間を伸ばし、岡山の鉄人7白井 永地とのダブルボランチは、攻守で貢献度が高く、シーズン途中から採用した前から行く守備、ハイラインの路線をもスタイルに吸収した上で、完成された中盤へと変貌した。2列目の得点への関与こそ、まだまだ課題が多いが、守備に関しては、簡単に崩れない堅守を構築できた。

 更にGKの31梅田 透吾を絶妙なタイミングで、スタメン起用する事で、最高のファジアーノのデビュー戦を実現した。ハイラインの裏をケアする機動力と、後方のビルトアップの安定感を高める組み立てへの関与や、パス・フィードの判断と精度の正確さ。GKとしての基礎技術の高さを存分に発揮し、鮮烈な印象を残した前半戦のベストゲームに繋げた

 最終的に20川本 梨誉と14上門 知樹の2トップを採用する事で、得点から遠ざかっていた14上門 知樹が輝きを取り戻し、ゴール量産体勢に入った。新潟と琉球の上位陣を撃破し、後半戦に弾みを付けたかった所だったが、京都の9ピーター・ウタカ。甲府の10ウィリアン・リラというタイプの違うスペシャルなFWの存在の前に、自慢の堅守を破られて、前半戦2連敗でフィニッシュ。

 チームとして、ある程度戦えた中で、今シーズンの前半戦で、僅か1試合の出場に終わっているエースストライカーである9李 勇載の不在の影響の大きさを、上位の2チームのエースストライカーによって、内容と結果で、突き付けられてしまった。ある意味、騙し騙し戦って来た岡山であるが、J2トップのチームとの差を感じた上位との連戦であった。

 ただ、今季の岡山の補強も的確である。9李 勇載の代役として、ブラジル1部で、通算57試合11得点2アシスト、タイ1部で10試合3得点1アシストという実績十分ストライカーである38ブレネー・マルロスを獲得。コロナ下の厳しい制限下ではあったが、用意周到な準備により、早い段階での、リーグ戦での出場も可能で、チームの得点力不足に解消の起爆剤として期待がかかる。

 それにしても11宮崎 智彦は、無所属の所を増嶋 竜也氏主催のトライアウトで、練習参加を経て獲得。22安部 崇士を育成期限付き移籍で獲得。そして、コロナの影響で、無所属であった38ブレネー・マルロスを、しっかり調査と準備を進めていた中で、早い段階での出場を可能とするなど、手堅い補強姿勢が光った。

 開幕時点で、チームとして編成をあえて完成させず、補強の準備期間及び、選手の状態や所属元のクラブの状況を見極める期間を設けた事で、リーグ戦と同時並行で、補強に動く事で、他チームもより速く、効果的に、実力のある選手の獲得に成功した事が分かる。また、その補強を効果的とするチーム作りも着実に進めた。

 こうした選手・指導陣・強化部・フロントが密に連絡を取る中で、チームとして的確なタイミングで、弱い所にピンポイントに、補強に動いた前半戦は、アクシデントさえ成長に繋げ、降格圏が目の前という危機的状況から上位との4連戦を2勝2敗で切り抜けるなど、チーム状況のV字回復に成功した前半戦と言える。

 本日の後半戦では、右肩上がりしたい後半戦の開幕戦という認識で差支えなく、五輪での中断期間が有る事も、チームの熟成の期間にできるかどうか、そこが問われる事となる。38ブレネー・マルロスは、恐らく出場が難しいと考えられるが、今後の離脱者の復帰や、補強の可能性を含め、更なるチームの成長と進化は可能で、希望と勇気を与えられるサッカーで、あまり勝てなかったホームでの勝利に繋げる後半戦の開幕戦にして欲しい。

 余談ながら、リードした状況で、4バックから3バックに、フォルムチェンジした際の勝率100%の勝利の方程式の3バックをスタートから採用する可能性や、試合状況に応じて、3バックと4バックを切り替える可変システムの採用の可能性。まだまだ打てる手はある中で、リードされた状況で、同点から逆転に持っていけるかどうかも後半戦の注目ポイントで、そういった劇的な試合を増やせるかどうかも注目したい。どういった後半戦になるか、今から楽しみである。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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