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2021ファジアーノ岡山にフォーカス9 J2:第6節:岡山vs磐田(HOME) 「重視したボール保持A&B・磁力の様な攻防・パワー不足に陥った理由」

1、 前置き

Jリーグの古豪の名門クラブと名を馳せたジュビロ磐田をホームに迎えた第6節。磐田と言えば、多くの得点記録を残しているストライカーのゴン中山こと中山 雅史氏と伝家の宝刀の左足を持つ名波 浩氏などの有名な選手が、多く在籍したクラブ。N・ボックスという黄金の中盤は、流動性が高く、攻守のバランスに優れ、圧倒的な強さを誇った。

その磐田が、岡山と同じ2番目のカテゴリーであるJ2に属して、一緒にリーグ戦を戦っているのだから、Jリーグの全体のレベルも高くなったことを感じるものである。J2というカテゴリーに属してはいるものの故障により今回の遠征メンバーからは外れたが、G大阪の代名詞と言われていた50遠藤 保仁や元日本代表の選手を多数要する。

その磐田に、何処まで戦えるかというのは、岡山の現在地を測れる貴重な対戦チームの1つとなる。第5節までの対戦チームは、自分達のサッカーというよりは、相手の良さを消す戦い方や、組織的に数的有利を強く意識した戦い方での試合となる事が多い。磐田クラスのチームであれば、自分達のサッカーをベースに、ある程度自由に戦い方を選択する事が多い。

また、この試合では、雨というピッチコンディションではあるが、水はけも良い部類に入るイメージがあるシティライトスタジアムでの試合。ボールが止まるほどではなく、逆にパススピードはでるぐらいで、パスのズレが多かったのは、その辺り少なからず影響があったが、ある程度、自分達の目指すサッカー同士のぶつけあうことができるピッチコンディションであったのは良かった。

基本的には、岡山でのホームの試合は、晴天の中での試合も多く、年々サッカー観戦の文化の浸透してきたこともあるが、雨が降った時に傘をさそうとして、注意される方は減った様に思う。JFL時代には、バックスタンドで、観戦する事が多かったので、特にそういった方が多かった。

サッカーも変化があるが、こういった昔を知るサポーターもサポーターの変化も感じる方が多いのではないだろうか。私は、皆勤ではないもののJFL時代から、ある程度、応援してきたので、その頃とは、大きく変わった様に思う。もっと下のカテゴリーから応援している方だとより、その変化を感じる方は多いのではないだろうか。

変わらない点としては、ファジアーノ岡山のサポーターは、やはり温かいかなとは思います。良くブーイングの是非についての議論が出るのですが、是非以上に、ブーイングを実行するのが、難しいというのが、個人的な感想です。拍手は、簡単で出来て、効果が大きく、ホームでこそまだ、勝ててはいないものの、声を出せない中では、選手の大きな力になっていると思います。

例えば、この試合の様に、磐田のバイタルエリア付近での守備が良かったにせよ、もっとシュートに行って欲しい時とかに、野次(平常時と仮定:現状は声を出しての応援などは禁止)だと雰囲気が悪くなる部分があるので、気分を害する可能性もありますが、そういった時、良いプレーの拍手みたいに悪い(消極的な)プレーの様な時に、ブーイングが、もっと気軽にできれば、シュートまで行こうという強気なプレーを促せる効果も期待できる。

こういった意志表示が、SNSに限られているのは、サッカー文化というか、日本文化の良い所であり、悪い所かなと思います。笛の様な楽器に類似したもので、もっと気軽にサポーターが意志表示できる様な応援スタイルがあっても良いかなと思います。ただ、やはり、ブーイングが、不満の捌け口として利用されてしまえば、雰囲気も悪くなるという指摘も事実で、拍手とは違いデリケートである応援スタイルと言える。

岡山の独自のサッカー文化で、選手もサポーターも気分を害さない様な、すがすがしいブーイングに類似した意思表示の文化ができれば、岡山のサッカー文化もより醸成していくのかなと感じます。今後、岡山が、Jリーグで戦って行く中で、チームとしての1つでも上を目指す中で、サポーターも良いプレーには拍手の様な意思表示、悪いプレーには、ブーイングに類似した意志表示できる様なサッカー文化が出来たらなと、個人的には思っています。

これからも選手もサポーターも同じサッカーファミリーとして、サッカーの勝敗・プレーの1つ1つに一喜一憂しつつ、サッカーを一緒に楽しめたらなと思います。こういった議論も結論ありきで語りたくなりますが、建設的かつ冷静に語る事で、サッカーの楽しみの1つと成り得るので、そういった部分も、サッカーを、ファジアーノ岡山というチームを通じて、楽しんでいきたいですね。

それでは、いつも以上に、前置きが長くなってしまいましたが、多くの方が、楽しみにしていたジュビロ磐田戦について、詳細な戦術分析というよりは、いつも通り、大局的な視点で、観戦記の様に試合を振り返っていきたいと思いますので、最後までお付き合いして頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。

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2-a、重視したボール保持A

まず、磐田が元日本代表の選手や強力な助っ人外国籍の選手を擁するチームという事もあり、個の力では、岡山では対抗する事ができない。もし、いつもの様に縦パスを付ける戦い方を選択してしまうと、自分達がボールを持つ時間というのが、短くなる可能性が高く、守勢に回る時間が長くなることが考えられる。そこで、ボールを大事にすることで、一方的な展開になる事を避ける戦い方を選択した岡山。

加えて、磐田が3バック、かつボランチ2枚で、2今野 泰幸という6喜山の様に守備の隙を消すポジショニングに加えて、代表のCBも任された事のある対人守備に優れたDHが構えている。よって、縦パスからのアクションで、簡単に崩れるような隙が生まれる事と、局面局面でアドバンテージを得るのも期待できない。

そこで、ST(WG)タイプの18斎藤と15山本の2人の組み合わせにする事で、前線とトップ下、前線の左右の深いスペースを流動的に動き、隙を探る戦い方を選択し、2列目やその後方の選手の絡んだ攻撃を機会があれば狙って行く。ある程度、今までの様に自分達のサッカーをするというよりは、磐田の良さを消し、我慢して、1点差勝負に持って行こうという意図が感じられた。

1トップでは厳しいという考えがあったのと、26パウリーニョの故障もあり、17関戸をDH(CH)の双方の交代選手として、控えておく必要があったので、17関戸が右OHのスタメンではなく、10宮崎のスタメンになったのだと思います。また、6喜山の負担が増えるので、6喜山が休めるような展開に持っていく試合を増やしていかなと、シーズン終盤につけが回って来る可能性があるのは、心配な点である。

9李の故障という事と2列目の選手が少し足りない部分があるので、32福元のリザーブ入りを果たしたが、出場機会はなかった。勝ちたいという気持ちが強かったので、多少疲れが見えた18斎藤に代えて、32福元という選択肢もあったが、磐田の守備が堅く、32福元を投入してしまえば、攻撃の糸口を見つけるのも難しくなってしまう。この辺り、難しい判断であった。

ここまでで、対戦チームである磐田への対抗するための有馬監督のスタメンとリザーブのメンバーの選択理由、起用法について、部分的に整理してきましたが、実際の試合では、その辺りがどうなったのかという部分に触れて行きたいと思います。また、後半に、起用法などについて、改めてまとめていますので、読み進めて行く中で、確認して頂ければと思います。

2-b、重視したボール保持B

やはり、試合が始まってみると、縦へのパスはいつもよりも少なく、後ろからピッチを広く使って、ボールを回して、少しずつ前に運んで行く組み立てであった。隙があれば、縦パスも入れていく事もあったが、1トップではなく2トップであったので、磐田の中央に人数が多い事もあり、縦パスを付けてからの発展性に乏しかった。ある程度、サイドで深くまで運んでも、仕掛けるプレーには慎重で、バックパスを選択する事も少なくなかった。6節までの試合の中で、一番バックパス比率は多くなった試合となった。

かなり磐田をリスペクトして、試合を進めていました。ボールを大事にすることで、磐田が主導権を握る時間を減らし、岡山がボールをある程度繋ぐ事で、攻守での1点差勝負に持ち込むことで、勝ち点1以上狙うという戦い方はしっかり出来ていたと思います。前半には、得点こそ決める事ができなかったですが、磐田のやりたいサッカーというのを許さなかった。

磐田は、前からしっかりプレスをかけてくるというよりは、ある程度受け止めて、守備ブロックで防ぎ、ボール奪取した位置から運んで行く守備スタイル。岡山もこの試合では、縦に縦にというよりは、しっかり繋いで攻め手いて、人数も過剰にかけず、SBの攻撃参加もいつもよりは少なかった。基本的には、守備の隙を空けずに両チーム戦った事で、両チーム攻め手を欠いた内容となった。

3、磁力の様な攻防

例えば、岡山が自陣深くにおいてのボール保持では、磁石の同極の様に、スペースを消す守備が主体で、一定の距離を保つ様に磐田がプレスをかけるために近づいて来ない。これは、岡山も同様で、磐田が磐田陣地深くで、ボールを持っても隙を見せないと、岡山の方から前より激しくプレスをかける回数というのは、少ない試合であった。

この結果、両チームとも隙を探す時間が長くなった事で、組み立てる時間も長くなり、ゴール前でのプレー数が、極端に少なくなった。これは、攻めあぐねていたというよりは、戦い方の方針の嚙み合わせが悪く、攻(積極)vs守(消極)or攻(消極)vs守(積極)ではなく、攻(消極)vs守(消極)の様な構図で、動きが少なかった。

攻(積極)vs守(積極)であれば、積極的にプレスをかけても積極的にパスに回す事で、接触プレーが少なくなる。ただ、厳密に言うと攻(消極)vs守(消極)よりは、動きがあるかもしれない。対極であれば、オープンな展開になりがちであるが、同極であれば、この試合の様にクローズな展開となる。両チームとも攻撃的に行けば、シュート数が多くなるチーム同士であるが、サッカーの目指す方向性では、こういったシュート数に終わるのだから、サッカーとは、奥が深い。

また、面白いのが、相手ゴール付近に近づいた時やボールを長く持った時の攻防である。攻(積極)vs守(積極)の攻防となり、非常に接触プレーが多かった。磐田は、ボールを積極的に持ちたがるので、そこに対して岡山も積極的にボールを持たせないとボールを奪いに、デュエルが行われる。今までのチームであれば、テクニックやフィジカルに不安がある部分が大きく、ボール離れが早いチームが多かったので、こういった構図になる事が少なかった。

これは、所謂引き付けるプレーで、そこを打開する事で、多少のオープンなスペースが出来て、同極の様に離れてしまう。圧力という名の磐田の磁力によってできたスペースを11ルキアンに使われて、残念ながら失点してしまった。同極でも、力を込めれば近づくが、反発も大きくなる。岡山が、こういった試合で、そういった隙を作るためには、攻撃のインテンシティを高める必要性を磐田のボール保持する力から感じる事ができた。

勝負を分けたのは、地力(磁力)の差であったが、本当に少しの差であった。同じ磁力であっても磁石を持つ土台がしっかりしていれば、そちらは動かないが、残念ながら岡山の土台の部分で、磐田に僅かに届かず、動いてしまった。ただ、磐田に対して、押される事で動きが激しくなる様な乱打戦や一方的な展開にならなかった事を考えると、岡山も着実に前進していると感じる事ができた試合であった。

もし、磐田に50遠藤 保仁が、出場していれば、この差は、もしかすると、大きなものになったかもしれないが、こちらもエースの9李を欠いており、ゴール前での力強さが足りない部分があった。15山本が裏へ抜け出そうとして倒された部分や、18斎藤がシュート打ったシーンを含め、そういったシーンでパワーを持って突き破っていたかもしれない。

何れにせよ、攻撃的な磐田に対して、最後まで分からない試合を出来たという事で、ある程度狙い通りのサッカーであったと言える。こういった堅い試合で、押しきれる武器というのが、6試合で3得点という結果を考えても、今岡山に一番足りない点と言える。ある程度攻めているのに2失点という堅守を出来ていることを考えても、本当に少しの差であるので、下を向かず、次節に向けてしっかり準備して欲しい。

4、パワー不足に陥った理由

現状、主な離脱者は、9李と26パウリーニョ、39増谷辺りである。39増谷に関しては、16河野が、右サイドの攻撃において唯一無二の存在感を放っており、岡山の武器になっている事に加えて、8田中や33阿部をそこで途中から3バック気味に起用する事で、巧く試合を運ぶことができているので、ある程度補えている。

しかし、9李の肉離れによる故障の離脱は、この試合であれば攻撃的なカードを18齊藤に代えて、投入したかったが、32福元というカードを切れなかった通り、編成において、戦力・戦術的にマイナスの部分が大きかった。他の試合で見ることができた20川本に続いて15山本を投入する様な勢いを付けるような手が、少なくともこの試合では打てなかった。

同様に、26パウリーニョの怪我により、17関戸を4-4-2においての右OHでのスタメンでの起用が出来なかったのは大きかった。10宮崎がもちろんベストであるが、27木村では、連携の部分でまだ課題が大きく、この試合では、5バックになる時間もあった事で、サイドで仕掛ける場面を作れず、組み立てるところでのパスの成功率は、安定しているとは言い難く、不安定である。

逆に27木村が、左サイドに回った時には、中への視野が開けるので、中への仕掛けや、中の選手と連携して崩していく事や、41徳元の気の利いたサポートもあり、攻撃の形を作るまでは至らないものの攻撃の姿勢は作る事はできた。そういった内容を考えても、攻撃の質を維持する交代カードをもっと岡山がきるという選択肢を選び難い試合展開と内容であったと言える。

14上門→27木村で、27木村を左SH。17関戸→10宮崎で、10宮崎を右OH。9李→20川本で、20川本をCF。18齊藤→15山本で、15山本をWG(ウィング)からST(セカンドトップ)。といったカードを切る事が出来ていれば、一定の質の維持を、今までは可能としていた。現状、こういった得点が欲しい展開で、こういったカードを切っても勝ち切れていないのも事実だが、得点までは至らなくても、試合を重ねる事で、完成度の上積みは出来た筈である。

とはいえ、どこのチームにおいても故障は避ける事は難しいアクシデントで、プラン通り行かないのがスポーツ(サッカー)であり、それがスポーツ(サッカー)の難しさで、そこを乗り越えるために試行錯誤していくのが、スポーツ(サッカー)の醍醐味でもある。この試合では、出場機会こそありませんでしたが、32福元や31下口といった若い選手達が、27木村の様に信頼を掴み、出場機会を重ねていく事ができれば、チームとして総合力が上がるのは、間違いないので、勝ち切れる様にチームには、その辺りに期待したい。

5、総評(後書き)

今までの磐田戦と言えば、両チームに得点の匂いがする試合が多かった。この試合では、手堅い試合となり、今までの磐田戦とは一線を画す。スペースを与えない守備を両チームが強く意識し、そのスペースを与えてしまった(スペースを作られた)岡山が、磐田にやられてしまった。

試合後の監督や選手のコメントを読んだ限りだと、自分達が僅かながら主導権を握っている手応えこそ感じていたが、ゴールに前での攻め手に欠けたという趣旨だった。それだけ、ゴール前の中央に磐田が、守備の重点を置いていたのは間違いなく、逆に岡山は、今までの試合で、中央の高い位置にパスを集めての組み立てを行っていた通り、そこ中心に攻めていた。そこが機能しなかった事で、難しいゲームになった試合であった。

14上門が、この試合でも存在感を放っていたが、そこに続く選手が出てこなかった。1点差ではあるもののスコア以上の差を感じたのも事実で、そういった差をカバーしつつ、ある程度戦えていた。ある程度だったので、得点は遠かったが、チームとして、互角以上に戦えている試合も増えており、磐田の様な、J1経験のある強豪チームにどれだけ戦えるかというのは今後の楽しみ。

中でも特に期待したいのが、10宮崎。ボールのタッチ数こそ多いが、持ち味であるゴールの裏に抜けての形が少ない。どちらかと言えば、その前のシュートの形を構築に関与する所で止まっている。開幕戦で見せた裏抜けからのシュートの様な形をチームとして増やしていきたい。

現状の1トップの時では、10宮崎は、トップ下の位置からさらに降りてきて、組み立てに関与している回数が多く、そういったプレーが特徴の選手の様に感じるかもしれないが、ゴール動画などを見ると、奇麗に裏に抜け出して、正確で細かいタッチのトラップからのドリブルでの得点の形も多い。MF登録の出場ではあるが、監督がFW登録で、スターティングメンバーとして出したくなるような活躍が出来れば、チームの得点力不足は、大きく改善される。

そして、何よりホームでの勝利。2敗は、何れもホームで、未だ無得点。ここから上を目指すためにもまずはホーム初得点を決めて欲しい。次節は、苦手とする愛媛ではあるが、愛媛も苦しんでいるので、岡山としては、自分達のサッカーを取り戻すためにも堅守を武器に、得点を決めて、勝利し、ホームへと良い流れを作って欲しい。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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