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小説コレクション

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2019年8月の記事一覧

小説『かみさま』

小説『かみさま』

あの人はまるでかみさまのような存在でしたと例えたなら、あなた方は揃いも揃って私のことを気味が悪いと嗤うでしょうか。

思えば恋というものは、その想いが自身の中で高まり、昂ぶり、到底私の手の届かないお方であると気づかされたとき、宗教のそれとよく似た気持ちに寄っていくものと私は思うのです。

高尚なこの想いを汚されたくない誰にも見せたくない、そのような感情をひとまとめにしたような心持ちになったことはあ

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ショートショート「真夏の夜の匂いがした」

あの日、彼女から花火大会に誘われた夜、最寄駅から自宅まで歩いているとき、はっきりと真夏の夜の匂いを感じた。
懐かしいなにかの匂いに似ているけれどそれがなにか思い出せなかった。

いま、開けた窓からは同じく真夏の夜の匂いがする。そしてさっきまで抱いていた彼女の首筋からは甘酸っぱい汗の匂いがする。同じシャンプーで洗ったから髪の毛は俺と同じ匂いがする。赤の椿。

「二宮さん、ほんとは彼氏いるんでしょ?

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ショートショート「ナイトフィッシング ソー グッド」

ショートショート「ナイトフィッシング ソー グッド」

開始のあのとき、あなたの手がわたしの服にするすると入ってきて片方の指でブラホックとぱちんと瞬時に外されると、あ、やばいハズレ引いてしまったと非常に残念な気持ちになる。

モテなさそうに見える割りに意外とモテてきたんだね。これまでどれだけの女を抱いてきたんだろう、どれだけの体位を知っているんだろうどれだけの人間を泣かせてきたんだろうと頭の中で勝手にかつての恋愛遍歴を妄想して、そしてちょっと萎える。

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