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読書日記~「Chart vol.2 1987 JAN-MAR」編


 音楽雑誌で割と古本市場に出やすい号と出にくい号がはっきり別れる雑誌があるんですよね。
まあ、それは表紙のアーティストや特集のアーティストで、売上がよかったんだなと思えるものは比較的出やすくなりますよね。
反面、メチャクチャ売れたはずなのに、取り上げたアーティストが熱心なファンが多くてなかなか手放さない号なんてのもあります。
そういう号をお店が入荷するには買取価格をいい値段にするわけですね。
この「Chart」は「IND's」の別冊で「POP IND'S」の前身なわけですが、創刊号はムーンライダーズのFM東京ホールでの写真が表紙で、後にその日の模様がライヴ盤化された時ジャケットになったことでお馴染みかと思います。
それに比べると、この2号を古本で見かけることは少ないのでした。
じゃ、行ってみよー。

・「Chart vol.2 1987 JAN-MAR」(SWITCH)

 この号の表紙は鈴木慶一さん、鈴木さえ子さんにアルバム『WINTER LOUNGE』のPops All Starsの方々ですね。

 鈴木慶一さんはアルバム『DON'T TRUST OVER THIRTY』とそのツアーについて深く掘り下げています。
「ミュージック・ステディ」消滅後、初めてムーンライダーズのオリジナル・アルバムが出たわけですから、掘り下げ方の継承は「Chart」にされたというわけでしょう。
もうひとつ付け加えますと、ディスコグラフィーの中にクラウン・レコード時代のアナログ再発が1984年9月10日されたことが書いてあるのがありがたいですね(緑の横の箱帯仕様)。

 鈴木さえ子さんのインタビューは創刊号に引き続き「ロック印象派」の具体的なサンプルを挙げた上での定義付けという赴きが強いです。
「ロック印象派」とは?さえ子さんの音楽を紐解こうとする努力というか意欲が伝わってくるのに当時の私は好印象を持っていました。

 続くは伊藤銀次さん、山本達彦さん、NOBODYのインタビューが続いて掲載されています。
3アーティストとも(当時)東芝EMIの所属で、ブリティッシュ・ビートをルーツに持ち、その部分を発展させていったという共通点がありますね。

 この記事に続くアルバム『WINTER LOUNGE』のインタビュー、特に杉真理さんとの繋がりも念頭にあったはずです。
PSY・Sやピチカート・ファイヴは「Chart」創刊号に引き続いての登場でして、日本のロック・ポップスの流れを繋げようとの意図があるのかな?と思った記憶があります。
ミュージシャン側では杉真理さんが近いことを考えていて、その後松尾清憲さんと活動を共にすることになったわけですから。

 パール兄弟とメトロファルスの記事、特にメトロファルスのものはかなり資料性が高いものになっています。
メトロファルスはミニコミの世界では特集されることはありましたが、書店で入手できる本で特集されたのはかなりショックでした。
パンクが中心だったインディーズで彼の作品が高円寺のBOYに並んでいたのを見た時は胸熱になりました。

 ポータブル・ロックは中原信雄さんと野宮真貴さんは鈴木慶一さんと同じスタジオでの撮影なのかな?
鈴木智文さんは創刊号時の写真を使用してます。
セカンド・アルバム『ダンス・ボランティア』に関する取材は本当に少ないので、この号のインタビューはかなり貴重なのでした。

 松尾清憲さんはサード・アルバムの制作に関するインタビューですね。
それにふたつの流れをひとつにというのはここに書いてありました。すみません。
自分の発見ではなかったのでした。。そりゃそうか。

 JAPANESE METRO SOUNDを探る動きが活発化するのもこの号からの話でして、杉山達さんのペンは絶好調。
CDの発掘音源や再発によって、幻の音源を検証することも可能になっていったわけですから。

 他にもスクリーンやヴァンリエテ、ローザ・ルクセンブルグ、キリング・タイムやフラット・フェイスなどのインタビューも掲載。

 コアな読書向けにはトッド・ラングレンの研究記事やあがた森魚さんのヒストリーなど、こうして振り返ると濃すぎる内容ですね。
そりゃ、創刊号ほどは売れないですよー。リアルタイムで夢中になっていた私はかなり変な奴だったな、とも。

 明日もまた音楽雑誌袋の中にある本からにするかもしれません。お楽しみに。

 ではまたー。

 

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