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ハラリ氏の『人類の物語 ヒトはこうして地球の支配者になった』|残酷だが重要な事実を学べる本

なぜか、シリーズ2冊目から読んでしまったユヴァル・ノア・ハラリ氏の『人類の物語』

やっと1冊目の『ヒトはこうして地球の支配者になった』を読めたので、簡易メモを残す。

火を従えた動物、それが人類

この扱うのは、何百万年も昔の「人類」の時代から。

本を開いた部分(表見返し)には600万年前から説明されていたけれど、本文では主に150万年前の火を使うようになった頃から。

火のすごさは、主に消化のしやすさ・食のバリエーション増加の便利さなどについて言及されるケースが多いけれど、確かに
「危険な動物から逃げることができる」
こともできるのか……


ネアンデルタール人への罪の意識

おそらく我々ホモ・サピエンスによって死に絶えたネアンデルタール人たちのことを考えると、私はいつも鬱々とした気分になる。

世界から一向に戦争がなくなることはないようだし、もっと小さい単位の家庭・会社内ですら平和でない場合も多い。

この本はそこにもきちんと向かい合っていて、好感が持てた。

私たちサピエンスは、あまりやさしい動物ではないんだ。私たちは、ただ肌の色がちがうからとか、自分とはちがう言葉を話すからとか、ちがう神さまを信じているからというだけで、別のサピエンスに対してつらくあたることもある。だから、私たちサピエンスの祖先が、たとえばネアンデルタールのようにまったく異なる種類の人類に出会ったときにも、たぶんあまり親切にはしなかったんだろう。

本文より引用


サピエンスの「スーパーパワー」の威力

『サピエンス全史』などのハラリ氏の本を読むのも好きだから、この本で書かれているスーパーパワーは「物語を考え出す力」のことだと予測できた。

でも「それがなぜすごいか」についてまでは、イマイチ深く分かっていなかったのかもしれない。

  • とてもたくさんの人数で力を合わせる

  • 何十万人など、知らない人同士で助け合える

  • 行動を柔軟に変えることができる

確かに、これこそ人類の強さの秘訣なんだよね。
他の動物たちにはできないことであり、ある意味で恐ろしさでもある。


進化?退化? 現代人との比較

ここも印象的だった。

採集民は何から何まで、すっかり知っていた! みんなは、今の人たちは大昔の人たちより、ずっとたくさんのことを知っていると思うかもしれないね。もちろん科学の進歩でわかったことはたくさんある。自動車も、コンピューターも、宇宙船も作れるようになった。でも、ひとりひとりが知っていることは、ほんとうは減ってしまっているんだ。きみは自動車を作れるかな? コンピューターは? 宇宙船は?

本当そうなんだよなぁ……

確かに書物によって「巨人の肩の上に」乗ることもできるし、生体AIによってありとあらゆる知識が得られるようになってきているかもしれない。

だが、ほとんどの人は自分の必要とすることしか知らない。それでも生きられてしまうのだ。

さらに現代は「必要となる」事柄がどんどん少なくなり、年々知識が不要になっている……とも言えよう。

生活に関する基本的習慣ですら、私たち現代人は1人ではほとんど何もできない。無人島に放り出されて1週間ほど生き延びられる人は、そう多くないのかも。


狩猟民族への憧れと現実

私は狩猟採集民への憧れがあった。

なぜって、大好きな世界史の先生が
「農耕革命以前は戦争も貧困もなかった」
と常日頃言っていて、現代の不自由や不幸は主に農耕革命以降のものだと思ってきたからだ。

まぁそれはそうかもしれないけれど、狩猟の時代もすべてが素敵だったとは言えない。

その根拠を、この本では以下のように明確に打ち出してくれている。

石器時代の人たちは、いつも昆虫になやまされていた。
(中略)
もちろん、問題は昆虫だけではない。いつもいつも、トラやヘビやワニの心配をしていなければならなかった。
(中略)
ちょっとした怪我でもとても危険だった。

うーん、まぁ確かにその通り。

虫嫌いで病気・ケガの心配ばかりしている私にとっては、とてもじゃないが快適な世界とは言いがたい。

……ということで単に「昔はよかった」という訳でもなさそうだ。


動物園が嫌いなワケ

私は、動物園がどうしても苦手だ。

もちろん動物の臭いが好きじゃない、という現実的な要因もある。
でもそれだけではない。

1番の理由は「人類が他の動物を従えることが当たり前」とされている事実を常に目の当たりにしなければならないからだ。

檻に入って見世物になっている哀れな動物たちを見学する行為を、レジャーとして楽しく味わうことがなかなかできない。

私の中ではまだ整理がついていないのだ。
……「人類こそ最上だ」と。


そこについてももちろん言及されていて、味わい深かった。

人間は、やっかいなことに、とりわけ危険な生きものには見えない。
(中略)
人間は力をあわせることができて、意外性をもっていた上に、3つ目の大きな強みも備えていた。それは火を操る力だ。
(中略)
こうやって、サピエンスはオーストラリアの巨大動物たちをみな殺しにしてしまった。たった1頭の生き残りさえいなかった。人類はオーストラリアを徹底的に変えてしまい、そんなことをしたのは、それがはじめてだった―—人類ははじめて、世界の一部を自分たちの手ですっかり変えてしまった。

今から絶滅した動物をよみがえらせることは難しいし、それができたとしても意味は薄いだろう。

それより今後にどう生かすか考えたいし、生態系や未来人類の行く末についてのヒントにしていきたい。


以上、簡単に感想を書いてみた。

すごく読みやすいから『サピエンス全史』は大変だった人にもオススメだし、ふりがなが振ってあるので子ども(小学生以上)にも最適。


▼ 他の本の感想(『ホモ・デウス』なども感想を書いた)


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