できませんと言った日~3.11東日本大震災から13年
今年も3月11日がやってきました。あの日からもう13年。
毎年同じことを言っている、そのこと自体ありがたいと思う日です。同じ明日が来るとは限らないという事を改めて自分に言い聞かせる日です。
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今年は元日から北陸で大変な震災がありました。石川県能登を始め周辺の地域にお住いの、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。一日も早く故郷での日常生活が取り戻せますように、どうか希望を捨てずに前を向いて歩きだせるようお祈りしています。
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今日は、『できないこと』と『やらないこと』についてお話したいと思います。
震災の1週間後に予定している結婚式ができるかできないか。
私たちは刻々と変わる状況を注視しながら、新郎新婦のおふたりと一緒に考えていました。
発災直後は『もしかしたら頑張ればできるのでは?』と思いました。幸い両家のご家族も、スタッフも皆無事でした。レストランの中はぐちゃぐちゃでしたが建物自体は被害がなく、停電も一晩で解消され、1週間で急いで片づければ…
TVの映像やニュースを見ながらも、可能性を探ろうとしました。しかし状況は日ごとに悪くなり、物流も交通も滞ってしまいました。食材も、花も、引出物も、衣裳も、届かない。電車も道路も寸断され、車を動かすガソリンも無く、ゲストの移動手段がない。水道が止まったのは地震ではなく原発の影響でした。
「ごめんなさい、結婚式できません」
結婚式ができないなんて言ったのは初めてです。『何が何でもやる』ことよりも辛いことがあると知りました。
しかし『何が何でも』できる確率は5%くらいはあったと思います。実際、震災の次の日に市内のホテルでは結婚式が挙行されたという話を聞いていました。避難所で結婚式をしてもらったカップルがいるというニュースも見ました。
結婚式の本質を考えれば、豪華な食事や衣裳はおまけでしかありません。
震災を経験した私たちは、もっと大切なことのために結婚式はあると知っているはずです。
それでも5%の可能性を捨て、辛く悔しい決断をしたのは、『不可能』なのではなく『やらない』ということなのでした。やろうと思えばできるのに『できません』という理由は、それでもやらないほうが良いからです。
当時のブログから
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コロナ禍で私は、その時のことを思い出していました。
「結婚式できません」と言った日のこと。そんなことはもう二度と言いたくないと思った時のことを。
コロナとは何ぞや?またもや初めての非常事態に揺れた4年前、結婚式の1週間前。できる確率100%にもかかわらずこう言いました。
「中止した方が良いのではないでしょうか」
それが正しかったのか、間違っていたのかわかりませんが少なくともプランナーの立場で言う台詞ではなかったのかもしれません。
何故やらないほうが良いのか、理由はその時それぞれです。地震や台風水害などの天災、コロナ禍の自粛、身近な方のご不幸など、
やろうと思えばできるのに「今はやらないほうがよい」と苦渋の決断をしたすべてのカップルと、「できなかった」「やらなかった」すべてのプランナー。その勇気に最大限の敬意を表します。
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結婚式は、人生の一部。あなたにとっても、私にとっても。
3月11日に想いを馳せれば、約束通りの明日は来ないかもしれないけれど、それでも私たちは明日の話をします。
ほんとの空の下で、また明日お会いしましょう。
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