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映画『サウナのあるところ』 フィンランドの平和な時間

最近サウナにハマっている夫と一緒に、『サウナのあるところ』というドキュメンタリー映画を見た。
私自身は、サウナに苦手意識があるものの、最近よく「ととのう」という言葉を聞くので、どんな効果があるのか気になっていた。

これといったストーリーがあるわけではない。
夫婦で、家族で、友人で、ひとりで、ふたりで、または複数人で、サウナに入りながら話をする人たちを描いた映画。

ビールを飲みつつ、ひしゃくで水をすくってはサウナストーンにかけて、立ち登る蒸気を浴びる(サウナとビールって、なんだか心臓に悪そうだけど)。

サウナに入りながら、自分の抱えている悩みや、つらい過去、付き合っている女性の自慢話などをとつとつと話しながら涙を流すおじさんたち。
それに耳を傾ける相手は、黙ってうなづき、時に相手の肩を優しく叩く。

素っ裸ゆえに、包み隠さず自分のことを打ち明けてしまうのか、サウナ空間には心を緩ませる力があるようだ

「そんな高温の中でのんびり話なんてできるの?」と疑問に思ったが、調べてみるとフィンランドのサウナは日本のサウナより低温なので、長く過ごせるらしい。

見ているうちに、ふと、平和ってこういうことなんだ、と思った。
裸になって家族や友人と語らう時間は、「何事も起こらない」という深い安心感に支えられてこそ持つことができる。
日本人にとっては湯船に浸かる時間がそれに相当するだろう。
安心感に裏打ちされた何気ない時間を過ごせることは、本当に平和で幸せなことなのだ。
ロシアのウクライナ侵攻が引き金となり、フィンランドがNATO加盟申請に踏み切った今、余計にそう思う。

少しだけ映画の感想を書くと、電話ボックスやキャンピングカーを改造したサウナのほか、街中の安サウナなど、多種多様なサウナが出てきて興味深い。
フィンランドには約550万人の人口に対して約300万個のサウナがあるという。

私が「サウナ」からイメージする光景は、「真っ赤になって汗を流す暑苦しいおじさんたちの姿」だったのだが、この映画からは、そうした暑苦しさを不思議と感じなかった(登場するおじさんたちの打ち明け話がしめっぽかったからという理由もあるが)。

それに、合間に挟まれるフィンランドの自然が寒々と美しくて、サウナの熱と同時に、ひんやりとした心地も味わえる。
この、熱→冷気の繰り返しが、「ととのう」という感覚を生むらしい、ですね。

個人的には、焼けた石に手酌で水をかけたときの蒸気と、「ジュッ」という音が心地よいなと思ったけど、日本でこれができるサウナは少なそうで残念だ。

「心をオープンにする深いリラックス状態」をもたらすサウナは、「平和の象徴」と言ってもいいのでは。
そんな場所が街中にあるっ国ってすてきだな。



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