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短編:【そのまんま、ねこまんま】

たとえそれがそうだとしても、まあ仕方ないと思うことがある。

人も猫も歳を重ね、流石に今年のこの暑さは耐え難い毎日。耐え難きを耐え忍び難きを忍んで来た近年、贅沢は敵と頑張って来たもののいよいよ猫様の食欲も減って来た。

いつものご飯に少しだけ変化を加える。いわゆる味変。「花カツオ」と言う、犬猫専用の鰹節(減塩)を買ってみた。少しだけお水に浸した生食の餌を混ぜて、花カツオの削節をサッとかける。すぐに分かるカツオ節の柔らかい香。するとどうだろう。猫まっしぐらで喰らい付き離れない。ここ最近は少し口をつけては、部屋を一周して、もう一回口をつけ、半分くらいは後で食べるという謎行動が多く、暑さで餌が腐ってしまわないかと心配していたのだが、一気に解消された。

思い起こせば最初の猫さんを迎えた実家では、若干贅沢な食事をあげていたように思う。その子は祖母が飼っていた猫が子供を産んだということで連れてきた。私の両親は飼うことを反対した。さらに黒ネコだったため縁起が悪いと言われていたが、結局いつの間にかに家族となった。連れてこられた小さな子猫は震えながらも実家の家を逃げ回っていた。はじめての夜。行方不明となったものの、お腹が空けば出てくるだろうと放っておいたら、小さな泣き声が。小さな机の引き出しの裏にある狭い所で鳴いていた。早速ご飯を用意した。まだ猫用の食事を用意していなかったから「ねこまんま」だった。白米に鰹節をかけて、その横にミルク。考えてみたら贅沢な食事である。その猫さんはしっかり食べた。実家では白米ごはんと猫缶を混ぜた食事をあげていた。そこには鰹節がかかっていた。

猫は、特に我が家に来る猫さん達は、カツオが好きなようだ。以前、上司に高知土産で頂いた酒のアテである棒状カツオを開けたらば、それはもう大騒ぎ。塩分が多く味が濃いこともあり、猫さんにはよろしくない。少し水で洗ってさらに水に浸してあげたらば、食べる食べる。ああ、この子はカツオ好きなんだ。そこで猫さん用の花カツオ節をあげることにした。夏の暑さで食欲が落ちていたのに、やっぱり食べる食べる。昔の人は知っていた。「ねこまんま」は、そのまんま猫が大好きなことを。

人も猫も同じで、栄養補給、水分補給、塩分摂取とたっぷりの睡眠。暑さ対策で乗り切るために。贅沢は素敵な生活の変化。私の食事が質素になろうとも、せっかく巡り合った命である。可能な限り元気で長生きして欲しい。


蛇足。昔からトマソンが好きだ。写真のように、ある角度で見たらクスッと笑えるユーモア。いやたとえ本当にトイレがそこだとしても、ここで尿意を感じて、急いでそこまで行くのは不可能ですやん!と言いたくなる一枚でした。

     「つづく」 作:スエナガ

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