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その数字は本当?思い込みを防ぐ3つの視点

ビジネスシーン、特にマーケティングの世界では数字で語ることが求められますよね。

「とても伸びた」「大きな割合を占めている」などの数字を伴わない報告をしようものなら、すぐに回りから「具体的な数字を教えてください」とツッコミが入るでしょう。

「新規有効リード数は前四半期比156%でした」
「そのうち大企業が34%を占めています」

FY22Q3の弊社マーケティング部の活動実績

上記のように数字を使って語ると説得力が高まるはずです。

しかしここにも盲点があるのではないでしょうか。

定性的な言葉に対しては上記のようなツッコミが浴びせられるのに対して、商談化率、喫煙率、GDPなどといった数字になると、人は無条件に受け入れてしまう傾向があるからです。

そこで本記事では数字を見た場合に気をつけたい3のポイントについて述べてみたいと思います。


裏にある前提の見極め


マーケティングの世界で数字を扱うシチュエーションとして、アンケート調査やログデータ分析があります。

これらのデータの集計結果を分析すると、様々な傾向を定量的に把握できるので、課題の見極めと対策が格段に取りやすくなります。

しかし調査の前提に下記のような歪みが生じているケースが多々あります。

1️⃣ サンプルサイズが不十分で、データの信頼性が低い
2️⃣ サンプルの選び方に偏りがあり、市場全体を網羅していない
3️⃣ 調査の設問の表現が回答を誘導している
4️⃣ 回答を拒否した人や想定外のデバイスからのアクセスが考慮されていない

マーケティングや心理学でもたびたび引用されることも多いマズローの欲求5段階説も、上記①サンプルサイズの少なさ②サンプルの偏りの問題度々指摘されています。

弊社では、各種セミナーで事後アンケートを行っているのですが、評価の低いセミナーのカテゴリーがあるという報告を聞いて詳細を調べたところ、サンプルサイズが一桁の数字だったということがありました。

こういった場合、一定数のサンプルサイズが集まるまでは評価を保留する必要がありますね。

原因と結果の見極め


ビジネスとは言ってしまえばひたすら結果(SaaSビジネスだとARRやNRRなど)を出すための要因(ドライバー)を見極めていく活動ですよね。

結果が伴っていない場合も同様にその原因を探っていきます。

要因分析にあたっては様々な立場から意見が出ますが、説得力をもたせるには数字の裏付けが必要になります。

しかしこの要因分析にあたって登場する数字には以下のようなバイアスが混じりやすいので、多面的に見極めることが非常に重要です。

1️⃣ 自分の主張を裏付けるデータばかり集めてしまう(確証バイアス)
2️⃣ 他人・他部署や外部環境のせいにしてしまう(自己防衛本能)
3️⃣ 論理的に相関関係のない変数同士の係数から予算や目標数字を組み立ててしまう
4️⃣ 相関関係を因果関係と取り違えてしまう

④に関して、有名な研究でも数年前に誤りが指摘されました。

目の前にあるマシュマロを食べることを15分間我慢できた子供たちは、十数年後の調査結果で我慢できなかった子供たちより学力や社会的成功度が高かったという有名なマシュマロ・テストという研究があります。

数年前までは以下の因果関係で捉えられ、多くの記事などで広く紹介されていました。

しかし数年前に発表された別の研究で、子供の将来の成功は自制心ではなく、金持ちで学歴がある家庭環境で育ったことが要因という検証結果が出てきました。

上記の因果関係となったわけです。

スタンフォード大学の心理学者が行ったマシュマロ・テストですらこのように見誤っていたわけですから、普段のビジネスの現場での見誤りは枚挙にいとまがないと言わざるを得ません。

先の弊社セミナーアンケートの場合でも、アンケート結果の満足度が高いと商談に結びつきやすいはずだと当初は考えていました。

ところが網羅的にデータを集計し、このアンケート満足度と商談化率の相関度を分析してみたところ、相関係数は低いことがわかりました。

別の複数の要因が商談化につながっているということになります。

もしこうした数量的データ分析なしに商談獲得を目指してセミナーの満足度を高めることに必要以上の工数をかけ過ぎていたとしたら、ビジネスとしては賢い選択とはならないですね。

グラフなど見せ方の見極め


データの取り扱いでもう一つ特に注意したいのが見せ方ですね。

人の認識は視覚の影響を受けやすくできているので、数字の羅列で説明するよりもグラフ化してビジュアルに訴えた方が圧倒的にわかりやすくなります。

週次・日次で目まぐるしく変化するマーケティングの世界では、四半期や半年ごとに長期的な変化を察知するには、データを時系列でグラフ化することが有効ですよね。

ただし、このグラフ化にも以下のようにミスリードする落とし穴があります。

1️⃣ Y軸の基準線をゼロ以外にして、X軸の複数項目の値の差分を誇張してしまう
2️⃣ 3Dのグラフの遠近感で差分を歪曲してしまう
3️⃣ グラフのデータソースが明記されていない(信頼性が疑わしい)
4️⃣ 前提条件が異なる複数項目の結果データをグラフ化してしまう

①に関して以下のようなグラフをマスコミ報道やプレゼンなどでよく見かけませんかね?

サンプルデータに基づく棒グラフ

ついつい自分の主張を強調したいがためにこうした見せ方をしてしまいがちですが、グラフは傾きに意味があるので、誇張どころか誤りとして認識しないといけないですね。

本来の正しいグラフの姿は下記のようななるはずです。

サンプルデータに基づく棒グラフ

弊社ではデザイン本部にて、ブランドポジショニングステートメントに基づいたCarely(ケアリィ)のUIデザインとコミュニケーションデザインの拠り所となるデザインガイドラインを改めて整備し、先日全社でのお披露目会を開催しました。

この資料冒頭で、考えのデザインとカタチのデザインに基づくデザイン思考にふれているのですが、上記のような歪んだグラフ表現(カタチのデザイン)は、考えのデザインがきちんとなされていないともいえますね。

いくら洒落たグラフ表現(カタチのデザイン)をしようとも、考えのデザインがなければユーザーの共感を得ることは難しくなります。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。少しでも気づきがあったら「スキ」や「フォロー」をください!僕もそら丸(うちの猫)も跳んで喜びます!





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