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我思ふ Pt.138 過去の古傷21

↑の続き

静かな田舎町の中をボボボと排気音を響かせてリョウ君のマークⅡはひた走る。
その後部座席で美結が私に擦り寄ってきた。

「たける様…見て?」

美結は自分の唇に人差し指を当てた。

あの…美結はまだ15歳。
恋愛経験は中学校二年生の時におままごと恋愛をしただけらしいのだが…?
一々仕草やセリフに毒婦とも取れる部分が垣間見える。
後々色々考えたが、もし美結の一連の言動が天然のものなのであれば、美結はどれほどの男を魅了してきたのだろうと思う。

ジェンダーにやかましい世の中ではあるがあえて言わせてもらおう。

「女はこの世に誕生した時から女である」

まぁ待て、女性至上主義者達よ。
何も貶しているわけではない。
逆だ逆。
落ち着いて余の話を聞くがよい。

よく言うではないか。
男はいつまでも子どもであると。
その子どもが「男」になる時、それは何かを覚悟した瞬間、命を捨ててでも守るものを見つけた瞬間、そして命をかけて何かを守る瞬間だ。
その瞬間以外は本当に子どもだと思う。
性別・男である私が言うのだ。
間違いないと思っていいだろう。
だが、我思ふ。
女は産まれ出た瞬間から周囲を魅了し、周囲を和ませ、調和の中心となる生き物だ。
つまり、産声を放った瞬間女は女だ。

よろこびの清酒・松竹梅のCMでも言っておろう。

女とは…?
宝よ。

男とは…?
子どもよ。

私が言いたいのはこういう事よ。
宝の自覚と誇りを持って生きれば、慈しみの心と謙虚な言動が自然と生まれるというもの。

あ、この松竹梅のCMがリアルタイムで放送されている時、あたしゃまだ産まれてません。

よろこびとは…?
飲むことよ。

↑これテレビで言っちゃってるからね。
時代を感じるわ。

えぇと何の話してたっけ?
あぁ美結の毒婦っぽい言動の話でしたっけ?

美結の大人仕草に、私はすっかり魅了されて言われるがまま美結の唇を見た。

「今日ね?初めてグロス塗ったの。たける様に見てほしくて…。」

「そ、そうなんだ…綺麗だね…。」

ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!みたいな反応をしてしまった。
大人であるこの私が15歳の小娘にだ。
だが美結の進撃は止まらない。
きっと本当に私に会いたかったのだろう。

…そ、そうだよね?信じていいのよね?

「たける様にキスしてほしくて…塗ってきたの…。うぅん、もうしちゃう…もう…だめ…あたしからしちゃう!た、たける様ぁ!」

美結は私の両頬に小さな手を添えると、私の唇にむしゃぶりついてきた。

「…!?」

ど、ど、童貞ちゃうわ!

嘘だろ…?
この美結という女…。
姉妹みたいなもんだと言っていた友人と、その彼氏がいるのだぞ?
そしてその接吻の上手さ。
私の口内を縦横無尽に動き回る美結の舌は、容赦なくその唾液を私に送り込んでくる。

反応できない。
美結の情熱に応える事ができない。

「美結、チュー終わりだよ。フフッ、着いた着いた。たけるさんを案内しないと。ホラ、美結!」

しばらくの間、一心不乱に私の唇にむしゃぶりついていたが、目的地着いたようで結美が助手席から後ろを向いて美結に声をかけてきた。

「む、ムハァ…だめ…結美…もう少し…も少しだけ、たける様とチューしてたい、ね?もう少しだけ…」

美結はそう言うと、再び私の唇を吸い始めた。
私はもうすっかりされるがままだ。
脳が痺れて何も反応できない。

「はい、終わり!美結!ホラ!」

「美結ちゃん、後でもまたできんじゃん?とりあえず降りようよ。な?」

リョウ君と結美の二人に引き剥がされるようにしてようやく美結は、不満気な顔をしながら唇を離した。

「ハァハァ…ご、ごめん、たける様…。っついその…もう我慢できなくて…結美もリョウ君もごめんなさい。」

息を乱したまま美結は言った。

「いいんだよ、俺は嬉しかったよ。ありがとう。美結とキスできてよかった。」

私は冷静なふりをして美結に言ったが、度肝を抜かれたのは間違いない。

「ハハハ!美結ちゃん盛り上がってたね!なぁ、結美!うちらもしちゃう!?」

「コラコラ、そんな事言ってる場合じゃないでしょ?時間は限られてんのよ?今日は全てたけしさんと美結優先だよ。さ、皆んな降りよう?」

リョウ君と結美ちゃん二人とも人間できてるなぁ…。
人を見た目で判断しちゃいけねぇっていう典型例だな。
ま、私は見た目で判断するけどね。

全員がプチ族車マークⅡから降りるとそこには大きな川が目の前に現れた。

「たける様、ここ。分かる?」

美結の問いかけにすぐに答えた。

「うん、五月雨をあつめて早し最上川。」

嗚呼、ここが…ここがあの…。

そう、あの最上川だった。

そうか、あの最上川が私の目の前に…。

「あぁ、見れたな…実物の美結と、最上川…を…見れたな。見たかったんだよ…。」

不思議なことにその光景は全く今は覚えていないのだ。
ただ、想像以上に大きな川だった事、そして、美結が隣にいる事、そして最上川を目の前にしているという事実しか覚えていない。

もっと自分の目に焼き付けておけばよかったと思う。

でもそうさせない何かがあったのかもしれない。

最上川に見とれている私の視界を塞ぐように美結が私の前に来た。

「もう…たける様ぁ…最上川もいいけど…あたしも見てよ…ね、今度はさ、たける様からして?たける様からチューしてよ…。チューして抱き締めて…もぅ壊してもいいから…あたしの事…。」

私の楔は抜け落ちた。
私は美結の希望通り、小さな美結の体をへし折らんばかりに抱き締め、小さな唇に吸い付いた。

最上川を携えしこの町よ。
美結という人間を育んでくれてありがとう。

抱き締めた際の美結の力のない吐息に私は股間を膨らませてしまっていた。


続く

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