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いかにして自分がアダルトチルドレンだと気づいたか。部屋が広くなるほど窮屈な彼との生活。

(前回の記事で6月下旬に部屋を探したと書いてしまいましたが、正しくは5月下旬です。6月には現場に配属されていました。)

6月。水を張った大きな桶のなかに一抹の不安を残したまま、それぞれの現場に配属になり、家にはただ眠るためだけに帰るようなものだった。
下っ端なので誰よりも早く出勤し、掃除し、勉強し、練習しなければならない。
休憩時間中も買い出しや勉強や練習に追われ、本当の意味で休憩できるのは15分ほどだった。
休日は月7~9日。
この休日のほとんどは家事か勉強会かボランティアに追われ、家事は2人ぶんこなさなければいけなかったので、この頃はあまりゆったりと休日を過ごした記憶が無い。
彼は休日を合わせて(シフト制なので希望休が出せた)遊びに行こうと言うが、私には次の休みまでに持つような量の、2人ぶんのごはんの作り置き、そのための買い出し、たんまり溜まった洗濯、家計簿をつけて徴収する、休みの日程が合えば勉強会、の日々で仕事と併せてくたくただった。
勉強会やボランティアは希望者のみの参加だったが、彼が来たことはない。
彼は休みを謳歌していた。

彼が積極的に家事を手伝ったのは、1Kのマンスリーマンションに居た時だけだった。
今でこそ「手伝う」はおかしいとすぐ反応されるだろうが、彼はなんでもかんでもお母さんにやってもらってきたおぼっちゃまだったので、家事は女性がやるもの、「手伝う」という考えすらなかった。
おまえも棲んでるんだから生活に必要なことはやるのが当たり前やろと今なら責められるだろう。

私だって実家にいた頃はなんでもかんでもやってもらう人間だったが、他人と暮らすとなると話はちがう。
一緒に住む相手がいかに心地よく生活できるかを考えなければならない。

「おれ綺麗好きだから」
そう言って買ったガス台は「手入れがしやすい」と家電量販店のお兄さんに勧められたもので、掃除がしやすいのがいいと彼が言うのでそれに決めたが、同棲中けっきょく1度も彼がガス台を拭くことはなかった。
なぜならガス台なんてものは料理した直後の熱い状態のまま布巾で拭けば、汚れなどほとんど残らないのである。

私がママチャリを買う時に、荷物がたくさん乗せられるようにと後ろにもカゴをつけてもらった。
彼はそれを見て「ダサいからこんなんで買い出し言ってきてとか頼まれてもおれ行かないよ!」と言う。
しかし安心してほしい。彼が買い出しに行くことは1度もなかった。
こちらはどこのお店は何が安いか把握し、お肉がグラム何円か、野菜はどれが安くて調理しやすいか見て買うので、到底彼には任せられなかった。

彼に任せられない仕事は増えるばかりだった。

茶碗を洗わせれば米粒がついたままだし、風呂掃除もトイレ掃除も洗面台の掃除も彼がやることはなかった。
洗濯させればすべての衣類を洗濯機に入れるだけで、種類分けしてネットを使うなどということもなかった。

しまいにはトイレットペーパーが切れても交換せず、シャンプーが空になっても詰め替えなかった。
私は当時湯シャン派で、トリートメントさえあればよかったのだが、毎朝ワックスをつける彼の髪の毛は一体何で洗っていたのだろうか。
何日経ってもシャンプーは空のままだった。
指摘すると面倒くさそうにボトルに補充していた。
ちなみに予備のシャンプーはもちろん私が買ってきたものである。

せっかくの休日を4、5時間近く台所に立ち、1週間分のおかずを作っていく。
彼は憩室炎という持病を抱えていたので、栄養にも気を配った。

しかし彼は配る気など持ち合わせてはいなかった。
夜は大体いつも彼の方が帰宅が早かったのだが、彼は私が帰宅し、私がごはんを温めるのを待っている。
作り置きしてあるのでチンするだけなのだが、なぜそれが自らできないのだろう。
帰りが遅い私を労う気持ちはないのだろうか。

これに関しては堪忍袋の緒が切れ、最初に帰った方がごはんを温めておく、というルールを制定した。
しかしこれまた驚きなのが、どれくらい温めていいか分からないというのである。
そんなもん勘だろ!!

彼にできることと言えばゴミ出しと、遊びに行くならその前に必ず床に掃除機をかけていくこと、くらいだった。

私はたびたび同期との飲み会でことの悲惨さを愚痴ったが、男は男につくもんである。
男性の同期が「それならなんで付き合ったの?」と聞くので「好きだって言われたから」と返すと、はぁ?なにそれ?とまるで私がおかしい人のような目つきで見られた。

人を愛するのに、面倒を見るのに能動的な理由がいるのだろうか?
その頃から私はすでに人と違った視点で愛を捉えていたのかもしれない。

しかしそれは、その私の感覚は間違いではなかったのだと後々知らされることになる。

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