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「再婚ゲーム」 - 絡み合う復讐ドミノ!魑魅魍魎の婚活バトルドラマ

★★★★+


邦題は「再婚ゲーム」ですが、原題は「ブラックの新婦」でしょうか。個人的には「ゲーム」感はあまりなかつたです。ゲームと言うと登場人物たちに計略がありそうに聞こえますが、もっとむき出しの欲望と復讐心でぶつかり合う泥試合ぶりが印象的。そして各人物の多様な復讐が複雑に絡まって最終的に誰が誰を裏切るのか分からない展開が面白かったです。

夫と娘と、江南の中流階級の主婦として生活していたヘスン(キム・ヒソン)は、ある日突然夫に離婚を告げられます。愛人ができたという夫に絶望するヘスンですが、そんな夫も実は愛人に利用されていただけであり、愛人の横領の罪を着せられ追い込まれた末に自殺してしまうのです。すべてを失ったヘスンをヘスンの母親は韓国一の高スペック会員を誇る結婚相談所「レックス」に勝手に登録します。退会しようとレックスに行ったヘスンがそこで偶然に目撃したのはなんと、夫を死に追いやった愛人のユヒ(チョン・ユジン)。韓国の上位0.001%に属しているレックスの「ブラック」会員と結婚しようとしているユヒにヘスンは復讐しようと決心します。そしてユヒが狙いを定めたのが若きIT社長のヒョンジュ(イ・ヒョヌク)。ヒョンジュは過去に離婚しており、当時のトラウマで女性不信になっていましたが、ヒョンジュの母親がヒョンジュをレックスに登録してしまい、仕方なくパーティーに顔を出すことに。抜群の高条件を揃えたヒョンジュンの争奪戦が始まり…。

全8話、完徹で一気観コースでした。ヘスンを演じるキム・ヒソンが「明日」で見せた唯一無二の美しさがとても好きだったので観てみたのですが、富裕層の登場人物たちの中で終始「普通」を貫くヘスン(とはいえ、ことさらに庶民感を出すわけでもないのが自然)はすごく素敵な女性であり母親でした。一方でユヒに対しては一ミリも揺るがない意志で復讐を目指していきます。周りの手を借りることもありますが、不要な弱さを見せることもなければ復讐以外の欲に駆られることもなく、安心して見ていられる主人公。

ユヒはユヒで徹底していてすごいというか、ここまで腹が立つ女もなかなかいないと感じさせてくれます(笑)。何より生命力が尋常じゃない。男たちを食い物にし、自分はひとつも悪くないと信じて疑わず、悪事を晒されても這い上がって誰を踏み落とそうと完璧な人生の高みを手に入れようとする。普通に怖いわ!という感じです。演じるチョン・ユジンは楽しかったんじゃないかなという気さえする振り切った悪女でした。

最初あっさりユヒに引っかかった様子を見せるヒョンジュですが、ヒョンジュはヒョンジュで曲者というか、女性に夢を抱いていないタイプです。ユヒにもすぐそっけなくなるあたり、男としてどうなの?と思いつつ、物語的には痛快でした。そんなヒョンジュがいつしか気になってしまうようになるのがヘスン。この展開自体はベタですが、ヘスン的には別に自分がヒョンジュとどうこうなることでユヒに復讐したいわけではありません。そこがはっきりしているのがまた面白さでした。また、もうひとりの重要人物として登場するのがチャ・ソクジン(パク・フン)。ヘスンの学生時代の元カレであり大金持ちの息子な大学教授です。レックスで偶然再会したヘスンの状況を知り、過去の別れへの悔いもあって彼女を助けるように。心根の優しいイケメンです。

ヘスンとヒョンジュとソクジンの三角関係はシンプルにときめきがあって良かったです。こういう場合ってわりとどちらかの男性に肩入れしがちなのですが、ヒョンジュとソクジンについては「どっちもアリだな〜!」と思いながら行く末を見守ってました。それだけヘスンが二人に対してめちゃめちゃフラットだったというのもあるかもですが。

そして欠かせないのは、実は彼女がすべての展開をデザインしているのではというレックスの女社長チェ・ユソン(チャ・ジヨン)。見るからに豪華な女という出で立ち、なんだか見覚えあるなと思ったら「模範タクシー」で裏社会の大物を演じている女優さんでした。ゴッドマザー感が半端ない。ラスボスのようでもあり、すべてを眺めている神のようでもあり、独特な立ち位置のキャラクターです。

基本的には大物権力者ばっかり出てくるのでほんともう魑魅魍魎のどんちゃん騒ぎという感じですが、個人個人が毛色の違う復讐心を抱えているのもあって、誰と誰が手を組んでもおかしくない状況がスリリング。それらを「婚活」という特殊な枠組みに落とし込んでいるのがまた面白かったです。

あと個人的にはヘスンの娘のミンジ(キム・アソン)とヒョンジュの息子のジュノ(パク・サンフン)という子役ふたりがお気に入りでした。殺伐とした世界の中で癒しというか、ふたりとも親思いで賢い良い子です(ジュノ役のパク・サンフンは「明日」ではキム・ヒソンの夫ジュンギルの少年時代を演じていた子だった)。

没入感高めのよくまとまったエンタメ作品だと思います。休日に引きこもって観たりするのにぴったり◎


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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