「恋慕」 - 華やかなスピード感で王となる少女の人生を描くフュージョン時代劇
★★★★★
「先輩、その口紅塗らないで」からのロウンの流れで完走しました。勢いも大事。時代劇は「赤い袖先」の余韻が強すぎて避けていたのですが、これは時代劇でありつつ架空の要素が大きいので(いわゆる「フュージョン時代劇」)、ファンタジー的に楽しめてまた違う面白さがありました。男装の世子を圧倒的存在感で演じるパク・ウンビンはそれこそ「赤い袖先」のイ・セヨンと同い年(92年生まれ)でふたりとも子役出身とのことで、実力があり代表作も得ている彼女たちがこれからさらに生み出していく作品がすごく楽しみです。パク・ウンビンは愛してやまない「ストーブリーグ」の印象が強く、潑剌と情緒豊かに動き回るチーム長!という感じだったのですが、本作では激しい過去を経て身につけた世子としての威厳と隙のなさが際立つ美しい人として存在していてグッと引き込まれました。「赤い袖先」と男女が逆になったような主人公たちなので、ある意味2作品を間を置かずに観たことで違う視点でも楽しめた気がします。
物語の舞台は李氏朝鮮時代。主人公のタミ(子役:チェ・ミョンビン)は王の孫として誕生しますが、双子だったために生まれたとたん命を狙われることに。当時双子は王族として認められず、彼女を殺して王位継承者である兄だけが生まれたことにしようとなったのです。しかし母の助けにより何とか生き延び、山寺で育つことに。
そんな彼女は少女に成長し身寄りを喪って、ひょんなことから王宮に宮女として入ることになります。そして王宮で偶然に出会う双子の兄・フィ。何も知らないふたりですが、瓜ふたつであることに驚きます。世孫として育ったフィは、自分が王宮から抜け出すときにタミと入れ替わることを提案し、宮女であるタミは従うしかありません。
しかしそんな中、タミの生存に気づいた王宮の人間がタミの命を狙います。そしてタミと入れ替わっていると気づかずフィの命を奪ってしまい、そのことを知ったタミとフィの母である世子嬪(ハン・チェア)は息子を喪った悲劇に打ちひしがれながらも自分たちとタミを守るため、タミにフィとして生きるように言うのです。
子供ながらに自分の人生を捨てざるをえなくなったタミ。彼女はタミとして出会ったチョン・ジウン(子役:コ・ウリム)と心を通わせていましたが、そんな恋も封印せざるをえなくなり、ジウンもまた突然いなくなったタミを想いながらタミから話を聞いた世孫に将来支えるために勉学に励むこととし、明への留学に旅立ちます。
10年後、フィとして生きるタミは世子となり、すっかり男装も板について近寄りがたい威厳を放っています(パク・ウンビン)。しかし相変わらず陰謀渦巻く泥沼のような王宮にあって実は女性であるという秘密を抱えているフィは気の抜けない日々を送っています。
ある日、狩場で不仲の叔父チャンウン君(キム・テハ)に矢で帽子を落とされるフィ。そのまま人のいない場所まで逃れてきたフィは医院として薬草を取りに来たジウン(ロウン)と再会することになります。運命が引き寄せるように出会いを繰り返すふたり。
フィを幼いころから見守っており、ジウンの友人でもあるイ・ヒョン(ナム・ユンス)など、恋を巡る登場人物はさらに登場して複雑に広がっていきます。避けて通れない後継問題はもちろんフィの護衛につく謎の武人キム・ガオン(チェ・ビョンチャン)が物語に復讐のスパイスを加えて、王宮の外での場面も多いので全体にとても華やかな展開を見せるドラマ。
タイトルが示すとおり軸はロマンスで少女漫画的なときめきが山盛り。重くなりすぎないテンポのいい演出ですがクオリティの高い映像で映画のように夢中になれる世界観です。パク・ウンビンが、生まれながらに家族がなく幼くして恋を諦めることを知り、ただ生きるために自分の人生を捨ててきたフィをとてもフラットに表現していて、それが妙に安心しました。ジウンといても浮き足立たず、常に今を冷静に見据えている大人です。
彼女を愛するジウンとヒョンというふたりがまたそれぞれに異なる愛情表現でかっこいい。むしろジウンがいっそ恋する乙女のようで、そういうキャラクターはロウンに似合っているのかもしれません。ただ、華のある男性陣の中にあってもやっぱりフィが最強な感じがこの作品の醍醐味。賢くて武にも秀でて何より権力があって、愛する人の危機には兵を引き連れて登場しちゃう感じ、フィが一番のイケメンな気がします。逆にフィの女性としての姿をもっと見たかった気持ちがあるくらいです(女性の姿になると一転して美女)。
20話構成でいろいろなことが起こりますが、男女逆転、幼い頃の出会い、王の宿命、親子の因縁、逃亡、盛り上がりに盛り上がりを重ねて眩しいほどのスピード感で駆け抜けていきます。次が気になって仕方なくなる盤石のつくりの一気見ドラマでした。
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