井上昭成@リサーチング・マーケター

「マーケティング」とは市場に合わせることではなく世の中を変えること。即ち「革命」。 …

井上昭成@リサーチング・マーケター

「マーケティング」とは市場に合わせることではなく世の中を変えること。即ち「革命」。 マーケティングリサーチャーとは違うリサーチャーとマーケターの新たな融合形態が「リサーチング・マーケター」です。 日本発の「生活工学」を武器に、新規市場の創造をすることがミッションです。

最近の記事

【緊急告知】ウェビナー開催について

いつもご高覧いただきありがとうございます。 勤務先にてイノベーションに関するウェビナーを実施することになりました。当noteにては現在理論編が進行中ですが、ウェビナーでは私たちがクライアントと一体となってイノベーションを「開発」している現場の様子や実事例を生々しく紹介する場面があるかと思います。 参加は無料ですのでご興味のある方は是非ご視聴ください。 尚、同業者の方は基本お断りしておりますが、個人的に面識などのある方はその限りではありませんのでご相談いただければ幸いです

    • 「イノベーション統一理論」⑧~「ブルー・オーシャン理論」と「NOHL理論」の対比及び統合

      表裏の関係にあるNOHL理論とCAS理論はすでに統合されており、ブルー・オーシャン理論とCAS理論も前回のように統合できることを示しました。故にこの2つの理論も統合できるはずです。 この2つの理論は共に 「商品価値」観点です。すなわち「表裏」の関係ではなく「類似・同類」の関係となります。今回はその類似性と差異性を検討した上で、相互に補い合えるかという観点でこれらの理論の統合にアプローチしてみたいと思います。 まず、前回もお見せした「イエローテイル」の戦略キャンバス・価値曲

      • 「イノベーション統一理論」⑧~「ブルー・オーシャン理論」を「CAS理論」で解き明かす

        前回ご説明したイエローテイルの戦略キャンバス・価値曲線です。原典に掲載されているものにビール・カクテルドリンク業界の価値曲線を追加したものです。 「油谷・梅澤統合理論」でこの戦略キャンバス・価値曲線を説明できるかが今回のテーマですが、つまりは、「CAS理論」(梅澤)と「NOHL理論」(油谷)にこの戦略キャンバスが整合しているのか、それぞれの理論でこのイエローテイルが説明できるのか?どう説明されるのか?ということが課題となります。 イエローテイルをCAS理論で説明する ブ

        • 「イノベーション統一理論」⑦~「ブルー・オーシャン理論」(キム&モボルニュ)とは?

          「ジョブ理論」「ブルー・オーシャン理論」のどちらから入ろうかと迷いましたが、まずはより知名度が高いと思われるブルー・オーシャン理論の紹介から入ることにします。以下は「新版 ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する」(2015、W・チャン・キム/レネ・モボルニュ、ダイヤモンド社)からの引用を主として、私なりの理解・解釈も加えたものです。 ブルー・オーシャン理論は当初にも触れましたように「商品価値観点」の理論です。その核心部分は「戦略キャンパス」と「価値曲線」と呼ばれる

        【緊急告知】ウェビナー開催について

          「イノベーション統一理論」⑥~「イノベーション」とは何か?「ブルー・オーシャン」はどこにある?

          調査目的の「競争力の判断」について前回の記事に多少加筆をしています。 今回は予告通り、この内容で説明をすることにします。 NOHL理論と油谷先生の活動の歴史的経緯を振り返ると、晩年には先生は「生活行動分析」と「生活心理分析」をあざなえる縄のように統合された「内在的生活連関構造分析」(ILRSA)というものに取り組んでおられました。これは簡単に言うと「風が吹けば桶屋が儲かる構造」で何がしかの出来事、環境変化が生活にインプットされた結果、アウトプットとして意識面と行動面で生活者

          「イノベーション統一理論」⑥~「イノベーション」とは何か?「ブルー・オーシャン」はどこにある?

          「イノベーション統一理論」⑤~「NOHL理論」と「ニーズの系統発生理論」は表裏一体であった!

          今から6~7年前のことですが、ある自動車メーカーから「5年先に発売予定の自動車のデザイン評価」が可能か?というお題を頂きました。当時検討されていたあるカテゴリーの自動車のデザイン案が5年先の市場で競争力を持つのかを判断するというのがマーケティング課題です。これはとてつもなく高度な調査です。当然ですがこの5年間に市場も消費者も変化するからです。「5年先に買うとして、最も望ましいと思うデザインをお選びください」というようなナンセンスな調査も横行していますがそれでは役には立たないで

          「イノベーション統一理論」⑤~「NOHL理論」と「ニーズの系統発生理論」は表裏一体であった!

          「イノベーション統一理論」④~潜在ニーズの「創造」と「生活変化」~「CAS理論」と「ニーズの系統発生理論」

          ある生活行動をとるにあたってには必ず何らかの「葛藤」や「問題」が伴います。これはほとんどが意識されていませんが、モノを買うには出費との葛藤があり、カテゴリーやブランド選択の葛藤があります。Doレベルでは「やるかやらないか」の葛藤や、とり得る複数の行動間の選択の葛藤もあります。また、必要となる「手間暇」との葛藤や、「疲れる」といった生理問題との葛藤。あるいは行動に伴って生じる感情的な葛藤や、他者からの見られ方=体裁といった社会的な葛藤もあります。生活行動とは正に葛藤の連続です。

          「イノベーション統一理論」④~潜在ニーズの「創造」と「生活変化」~「CAS理論」と「ニーズの系統発生理論」

          「イノベーション統一理論」③~応えるべきニーズの特徴=「未充足ニーズ理論」(梅澤)

          社内報でNOHL理論に触れてから油谷先生と実際に面識を得るまでの間に、私は梅澤先生と非常に密接な師弟関係になっていました。一言で言うと「私設かばん持ち」で梅澤先生の講演・セミナー、研究会、コンサル先などにほぼ「追っかけ」のようについて回ったのです。今の会社組織では考えられませんが、当時私は上司から「出社に及ばず」、「出張費使い放題」という「特権」を手に入れていました。そのキッカケとなったのは、先生が年に2回、私の勤務先で行われていた「キーニーズ法研修」の事務局担当となったこと

          「イノベーション統一理論」③~応えるべきニーズの特徴=「未充足ニーズ理論」(梅澤)

          「イノベーション統一理論」②~商品価値の方向性=「NOHL理論」(油谷)

          検証プロセスの紹介についてどの理論から入っていこうかと迷いましたが、まずは、私が最初に触れた油谷理論からにしたいと思います。今やこの理論をご存じない方が大半だと思われますのでまずはその説明から始めたいと思います。 油谷先生は大学院で心理学を学ばれた後、外資系の製薬会社などでマーケティング実務に携わられてからインタビュー調査と商品開発の専門家として独立され昭和から平成にかけて活躍された実務家です。思い起こせば私が最初に油谷理論に触れたのは1984年に社会人になる直前の時期でし

          「イノベーション統一理論」②~商品価値の方向性=「NOHL理論」(油谷)

          「イノベーション統一理論」①~初めに

          実務が忙しかったためにちょっと間が空いてしまい何を書いていたのか忘れてしまったところもありますが、要は「企業側には潜在している意識マトリクスの『生活者の生活領域』(C/S領域)にこそイノベーション(S/S領域)のヒント、潜在ニーズ洞察のヒントがある」ということではなかったかと思います。そして『ブルーオーシャン』とはこのS/S領域における『イノベーション』によってうまれる新市場に他ならないということです。これは、企業側、生活者側双方に意識が顕在化しているC/C領域を対象とする『

          「イノベーション統一理論」①~初めに

          当たり前だが、すなわち「イノベーション」のためには「ニーズ」を知ることが不可欠であるということ

          前回の記事に対して「潜在ニーズとは何か」というご質問を頂いたのですが、一言で言うとそれは人の心の奥底に生得的にある、あるいは遺伝情報としてあるであろう本能と言ってもよいものです。一般化すると「幸福な人生を送りたい」という欲求は誰しもが形は違えども持っているものだということです。マズローはそれを5段階プラス「自己超越」という観点で説明し、師匠の梅澤は「幸福追求の10大基本ニーズ」という観点で説明しましたが、それがなぜ存在するのか、なぜ生じるのかについては神のみぞ知るです。しかし

          当たり前だが、すなわち「イノベーション」のためには「ニーズ」を知ることが不可欠であるということ

          イノベーション〜実際の成功率と感じるリスクのパラドクス及びその回避法

          師匠の梅澤先生は新市場創造型商品(MIP)の成立要件として以下を挙げておられます。 ①CPバランスが良い ~買う前に欲しいと思わせる力=C(商品コンセプト=期待感の喚起力)が強く、買った後に買って良かったと思わせる力=P(商品パフォーマンス=満足感の喚起力)も強い。 ②未充足の強い「ディファレントニーズ」に応える ~「ディファレントニーズ」とは消費者の「生活上の問題」を解決し「生活変化」を起こす潜在生活ニーズ、すなわち「新カテゴリー商品」を生むニーズであり「イノベーション

          イノベーション〜実際の成功率と感じるリスクのパラドクス及びその回避法

          イノベーションを阻害する組織を意識マトリクスで明らかにする

          最近、企業人対象の「イノベーションとマーケティング」に関してのアンケート調査を行いました。その中で企業におけるイノベーションの阻害要因として企業人がもっとも意識している課題は技術でも販売でもなく「組織」と「リーダーシップ」にあることが明らかとなりました。 クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」の中で破壊的イノベーション※を生む新事業への取り組み方として、①「買収」②「新組織」③「独立組織のスピンアウト」を挙げていますが、①については買収先の独立性が維持される必要があり

          イノベーションを阻害する組織を意識マトリクスで明らかにする

          「マーケティング」から「イノベーション」を切り出す必要性〜なぜ日本企業でイノベーションが起きなくなったのかを考える

          「マーケティング」と「イノベーション」を分けて考える必要性 「マーケティング自体は成長を生まない」~ドラッカーを根拠に前回このように論じましたが、マーケティングが成長につながった何らかの事例を以て、これに反論のある方は多々おられると思います。 しかしご自分に反問してみてください。 ・「その「成長」とは成長の停滞した市場でのシェアの奪い合いによってもたらされた一企業のみの成長ではなかったのか?」 ・「その市場はそもそも導入期、成長期の市場ではなかったのか?」 ・「そのマー

          「マーケティング」から「イノベーション」を切り出す必要性〜なぜ日本企業でイノベーションが起きなくなったのかを考える

          「イノベーションリサーチ」と 「システマティックイノベーション」の提唱~「意識マトリクス理論」の徹底解説④~「マーケティング」と「イノベーション」→今の日本ではマーケは成長を生まない

          「マーケティング」というものに携わるようになって長年経つのですがこの間ずっとモヤモヤと感じてきたことがありました。それは、「世間で”マーケティング”と呼ばれているものがマーケティングならば、自分のやっていることはマーケティングではなく、自分がやっていることが”マーケティング”ならば世間でマーケティングと呼ばれているものはマーケティングではない」という「違和感」でした。私が「マーケティングリサーチャー」ではなく「リサーチングマーケター」を名乗るようになった一因もこのあたりにあり

          「イノベーションリサーチ」と 「システマティックイノベーション」の提唱~「意識マトリクス理論」の徹底解説④~「マーケティング」と「イノベーション」→今の日本ではマーケは成長を生まない

          「意識マトリクス理論」の徹底解説③~「人間工学的観点」と「生活工学的観点」=イノベーションを生む観点

          「人間工学的観点」と「生活工学的観点」とは 前回説明した企業人と生活者の意識と視点の方向性の違いはそのまま「人間工学的観点」と「生活工学的観点」の違いとして説明できます。この連載ではそれらについて過去何度か説明してきていますが、イノベーションと意識マトリクスの関係で改めて説明したいと思います。尚、以下の説明は基本的には私の師匠の梅澤先生のそのまた師匠であり、日本においてマーケティングに心理学を導入された先駆者で世界に先駆けて数々のユニークな研究を遺された小嶋外弘先生の理論に

          「意識マトリクス理論」の徹底解説③~「人間工学的観点」と「生活工学的観点」=イノベーションを生む観点