井上昭成@リサーチング・マーケター

「マーケティング」とは市場に合わせることではなく世の中を変えること。即ち「革命」。 マーケティングリサーチャーとは違うリサーチャーとマーケターの新たな融合形態が「リサーチング・マーケター」です。 日本発の「生活工学」を武器に、新規市場の創造をすることがミッションです。

井上昭成@リサーチング・マーケター

「マーケティング」とは市場に合わせることではなく世の中を変えること。即ち「革命」。 マーケティングリサーチャーとは違うリサーチャーとマーケターの新たな融合形態が「リサーチング・マーケター」です。 日本発の「生活工学」を武器に、新規市場の創造をすることがミッションです。

    最近の記事

    インタビュー調査の「適宜確認」②~より深いインサイトを得るための理論・技法編4:「感情分析」

    3つの曼荼羅の話の中に何度か「感情」について触れる機会がありましたが「感情」の観点にも分析を深め潜在ニーズをあぶり出す切り口があります。 喜怒哀楽と言いますが、感情には様々なものがあるでしょう。しかし私は基本的に「Happy」(以下“H”)なのか?「Not Happy」(以下“NH”)なのか?という単純化した見方をしています。 「Not Happy」には当然「Unhappy」は含まれますが、その他に「Not very Happy」も含めて考えています。「幸せではあるが満た

      • インタビュー調査の「適宜確認」②~より深いインサイトを得るための理論・技法編3:「六感曼荼羅」

        3、受動的感覚の中にある潜在ニーズを見出す「六感曼荼羅」 「視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚」の五感に加え「空気」や「雰囲気」などの「気」を感じる感覚(気覚=第六感)を含めて六感とします。 感覚というものは刹那に発生するものであり、しかも受動的であるが故に意識に残りづらいものですし、ましてやそこから「ニーズ」を読み取ろうとするのはなかなかに困難です。しかし、だからこそ、ここは潜在ニーズの宝庫であるとも言えます。 まず、感覚とは本当に「受動的」なのか?を考えてみたいと思います

        • インタビュー調査の「適宜確認」②~より深いインサイトを得るための理論・技法編2:「オケージョン曼荼羅」

          2、オケージョンの違いの中にある潜在ニーズを見出す「オケージョン曼荼羅」 第二の曼荼羅は「オケージョン曼荼羅」です。このモデルは当初、商品開発のためのアイデア発想ツールとして発案しました。しかし、そのままインタビュー中の適宜確認の観点とすることができます。この適宜確認は「状況の具体化」です。 対象者に与える話題が「健康を意識した食生活」だったとします。すると多くの場合、「中性脂肪が気になるので糖質や脂質を控えている」とか、「血圧が高いので塩分を控えるようにしている」とか、

          • インタビュー調査の「適宜確認」②~より深いインサイトを得るための理論・技法編1:「ナラティブ曼荼羅」

            分析編においては「具体化」と「構造化」の重要性について述べました。その時に説明しました分析の観点はインタビュアーの適宜確認の観点でもあります。「具体化」と「構造化」がされていないインタビューは、発言の「分類」はできても「分析」には堪えません。その「具体化」と「構造化」が不十分であるときに適宜確認が必要になるわけです。 しかし、マーケティング課題解決に必要な情報を対象者のナラティブ(経験談)に投影させて把握しようとするアクティブリスニングにおいては、具体化も構造化も自然に成さ

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「適宜確認」①~基本

            「適宜確認」とは、第一に自発的な発話の中では曖昧なままに終わっている部分を具体化したり構造化したりするために行われます。「適宜」ですから必要と判断される場合にのみ行います。自発的な発話がされ、「光景が思い浮かぶ」ような内容であるのならば特に必要はありません。 前回も同様のことを述べましたが、ゆったりとしたリズムだと対象者は相手にわかるように話そうとしますし、リズムが速いと自然と内容を端折り抽象的な物言いになりがちになります。だからまずはゆったりとしたリズムを心掛けていると適

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「発言促進」⑤=「繰り返し・オウム返し」

            調査対象者の発言中の単語やフレーズをインタビュアーがそのまま繰り返すこと、すなわちオウム返しは、その単語やフレーズについての発言をさらに引き出す効果があります。これは、対象者が抽象的な言葉を使ったり、調査している側が明確に定義できない若者言葉のような言葉を使ったりした場合に用いることが多いものです。 例えば若い人が最近使う言葉に「エモい」というのがあります。このような言葉については辞書的な意味合いというものを彼ら自身も明確に認識して使っているわけではないのですが、彼らにとっ

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「発言促進」④=「振り分け」

            「振り分け」とは発言内容や発言者が偏ることで取れる情報量が少なくなることを防ぎ情報量を増やす為に行うものです。「振り分け」には「コトの振り分け」と「人の振り分け」があります。 1、コトの振り分け ALIの基本的な考え方は「調査対象の生活領域に関する自由で自発的な発言」を傾聴することにあります。従って、発言の内容が垣根の中のある部分に偏ったとしてもそれ自体は問題と捉えるべきではないと考えます。なぜならばその現象は対象者の興味関心や意識ウエイト、あるいは経験値や葛藤レベルが高

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「発言促進」③=「傾聴態度」

            師匠の梅澤先生はこの「傾聴態度」というものを非常に重視されていました。例えば、インタビュアーのトレーニング方法の一つとして、インタビュアーの真ん前にビデオカメラを設置しインタビューのトレーニングセッション中の表情や身振り手振りを記録するといったことがありました。後から記録映像を詳細に検討しながら批評されるので弟子にとっては大変に厳しいものでした。しかし、それくらいのトレーニングを行わないと、自らの表情や動作は容易には意識化されないのです。それはあたかも俳優が映画やドラマのカメ

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「発言促進」②=「リズム」

            潜在しがちな事ですが長年インタビューを観察していて気付かされることがあります。 それは、インタビュアーの持っているリズムと対象者のリズムは同調するということです。例えば、インタビュー冒頭の趣旨説明をインタビュアーが早口で行った場合、対象者も早口になりがちです。ゆったりと説明をした場合は、対象者もゆったりと話します。 インタビューの場での主導権はインタビュアーが握っていると考えると、これは重大なことです。対象者に対して早口で接すると対象者も早口で返します。そうすると情報が増

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「発言促進」①=「沈黙責め」

            概論にて述べましたが、ALIにおけるインタビュアーの役割・機能とは何かと一言でいうと「C/S領域におけるナラティブ発言を促進して情報量を増やし、具体化、構造化すること」です。 そもそもナラティブというのは「時系列を含む物語」です。それを聴取することが重要なのは、生活の物語の中にはその体験の経緯や関係する状況が自然に含まれるからです。経緯にはその間の因果関係や葛藤関係、目的手段関係などが自然に現れます。状況とはその背景であり、意識や行動が発生したオケージョンであり、それがどう

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「場」づくり

            前回は垣根の維持について説明しましたが、その前提となる条件についても触れておきます。 これは以前にも説明していますが、そもそもALIとは生活体験に関する「自発的な話し合い」もしくは「独白」を求めるものです。それが「垣根の維持」が必要になる理由です。しかし前回も申しましたが、一般通念では「インタビュー」や「調査」というものは「質疑応答」であるので、「この場は質疑応答の場ではなく自発的な話し合い・独白の場」であるということを説明し、理解してもらう必要があるわけです。そしてインタ

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~垣根の維持

            「自発的な話し合い・独白」をしてもらわないとC/S領域には侵入できないわけですが、C/S領域なら何でも良いわけではなく、調査課題に応える情報を得る必要があるわけです。ここが単なるリスニングとアクティブリスニングの違いです。アクティブリスニングとはC/S領域の中で調査課題を解決するために必要な部分にフォーカスをしてそれを積極的に話してもらおうとするものです。その為には、調査対象者に話して欲しい領域、範囲を明確に伝え、理解してもらわなければならないのは当然のことです。また、インタ

            インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~概論

            いよいよ今回よりPIA三位一体の内のI(インタビュー司会・実査)についての内容に触れていきます。 「インタビュアーの役割」と言いますと、ほとんどの人は「質問」だと思われるでしょう。プラスがあるとしたらせいぜい「対象者をリラックスさせる」ことが挙げられる程度ではないでしょうか。グループインタビューのモデレーターの場合には、各対象者の発言を平準化するといったこともイメージされるかもしれません。 ところが、ALI(アクティブリスニングインタビュー)において主要な役割は実はそうで

            インタビュー調査の科学的分析法追補~「解釈は分析者によって違う」に騙されてはいけない=「具体化→要素化→構造化→統合化」はインタビュー調査の解釈・分析に客観性・再現性を生む

            インタビューの司会編に入ろうと思っているのですが、昨日チラッと目に入って読んだ記事が気になって、インタビューの分析についてもう一つ述べておきたいと思いました。これは言っておかなければならないという強烈な思いによるものです。ある意味ケンカを売っているといっても過言ではありません。 それは、その記事に述べられている内容が現在の定性調査を取り巻く諸問題の根源にある一般的な認識・考え方に基づくものだからです。 その記事ですが、一言で言うと「インタビュー結果の解釈、分析は人によって

            インタビュー技法の普及やご指導についてなど~ウェビナーアーカイブのご紹介

            前回、普及やご指導について申し述べました。 しかしながら、実態はこのところ平日も週末も業務に忙殺されている状態で勤務先での案件対応だけで手いっぱいの状況ではあります。 現在も週末でありながら営業稼働中の息抜きタイムですw。 まあ、それだけ新規事業開発に本腰を入れるクライアントが増えている情況ではあるということで、大変ありがたいというか、希望が持てるというかの状況ではあります・・・。 また、インタビューの方法論などお話ししだせばとてもではないですが、一日や二日では語りつくせ

            インタビュー技法の普及やご指導についてなど~読者の皆様へのお願い

            ある読者の方からインタビューの方法論についてのレクチャーを頼みたいとのメールをいただきました。残念ですが、その方のご要望にはお応えできないと思われました。それは、まず、メールアドレス以外にその方は一切の個人情報をお書きではなく、すなわち失礼ながらどこのどなただかわからないということがあります。このネットセキュリティが問題になっている世の中でうかつにメールでお返事などできません。ビジネスの世界においでであるのならば、そのお立場などを明らかにされた上でコンタクトされるのは最低のビ