井上昭成@リサーチング・マーケター

「マーケティング」とは市場に合わせることではなく世の中を変えること。即ち「革命」。 …

井上昭成@リサーチング・マーケター

「マーケティング」とは市場に合わせることではなく世の中を変えること。即ち「革命」。 マーケティングリサーチャーとは違うリサーチャーとマーケターの新たな融合形態が「リサーチング・マーケター」です。 日本発の「生活工学」を武器に、新規市場の創造をすることがミッションです。

最近の記事

イノベーション〜実際の成功率と感じるリスクのパラドクス及びその回避法

師匠の梅澤先生は新市場創造型商品(MIP)の成立要件として以下を挙げておられます。 ①CPバランスが良い ~買う前に欲しいと思わせる力=C(商品コンセプト=期待感の喚起力)が強く、買った後に買って良かったと思わせる力=P(商品パフォーマンス=満足感の喚起力)も強い。 ②未充足の強い「ディファレントニーズ」に応える ~「ディファレントニーズ」とは消費者の「生活上の問題」を解決し「生活変化」を起こす潜在生活ニーズ、すなわち「新カテゴリー商品」を生むニーズであり「イノベーション

    • イノベーションを阻害する組織を意識マトリクスで明らかにする

      最近、企業人対象の「イノベーションとマーケティング」に関してのアンケート調査を行いました。その中で企業におけるイノベーションの阻害要因として企業人がもっとも意識している課題は技術でも販売でもなく「組織」と「リーダーシップ」にあることが明らかとなりました。 クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」の中で破壊的イノベーション※を生む新事業への取り組み方として、①「買収」②「新組織」③「独立組織のスピンアウト」を挙げていますが、①については買収先の独立性が維持される必要があり

      • 「マーケティング」から「イノベーション」を切り出す必要性〜なぜ日本企業でイノベーションが起きなくなったのかを考える

        「マーケティング」と「イノベーション」を分けて考える必要性 「マーケティング自体は成長を生まない」~ドラッカーを根拠に前回このように論じましたが、マーケティングが成長につながった何らかの事例を以て、これに反論のある方は多々おられると思います。 しかしご自分に反問してみてください。 ・「その「成長」とは成長の停滞した市場でのシェアの奪い合いによってもたらされた一企業のみの成長ではなかったのか?」 ・「その市場はそもそも導入期、成長期の市場ではなかったのか?」 ・「そのマー

        • 「イノベーションリサーチ」と 「システマティックイノベーション」の提唱~「意識マトリクス理論」の徹底解説④~「マーケティング」と「イノベーション」→今の日本ではマーケは成長を生まない

          「マーケティング」というものに携わるようになって長年経つのですがこの間ずっとモヤモヤと感じてきたことがありました。それは、「世間で”マーケティング”と呼ばれているものがマーケティングならば、自分のやっていることはマーケティングではなく、自分がやっていることが”マーケティング”ならば世間でマーケティングと呼ばれているものはマーケティングではない」という「違和感」でした。私が「マーケティングリサーチャー」ではなく「リサーチングマーケター」を名乗るようになった一因もこのあたりにあり

        イノベーション〜実際の成功率と感じるリスクのパラドクス及びその回避法

          「意識マトリクス理論」の徹底解説③~「人間工学的観点」と「生活工学的観点」=イノベーションを生む観点

          「人間工学的観点」と「生活工学的観点」とは 前回説明した企業人と生活者の意識と視点の方向性の違いはそのまま「人間工学的観点」と「生活工学的観点」の違いとして説明できます。この連載ではそれらについて過去何度か説明してきていますが、イノベーションと意識マトリクスの関係で改めて説明したいと思います。尚、以下の説明は基本的には私の師匠の梅澤先生のそのまた師匠であり、日本においてマーケティングに心理学を導入された先駆者で世界に先駆けて数々のユニークな研究を遺された小嶋外弘先生の理論に

          「意識マトリクス理論」の徹底解説③~「人間工学的観点」と「生活工学的観点」=イノベーションを生む観点

          「意識マトリクス理論」の徹底解説②~企業人と生活者の視点の違いとイノベーション

          「意識マトリクスマップ」はコミュニケーションの領域を当事者それぞれの「意識」と「無意識」の観点で分析したものです。これは一見、有名な「ジョハリの窓」に似ていますが分析対象が意識マトリクスではコミュニケーション領域という客体である一方でジョハリの窓は「自己」という主体である点が決定的に異なる点です。 発見者の私自身が当初は「意識マトリクスマップ」を「ジョハリの窓の応用」と説明していたのですが、ある時、その決定的な違いに気づきこの理論の大きな可能性に鳥肌が立ったものです。師匠で

          「意識マトリクス理論」の徹底解説②~企業人と生活者の視点の違いとイノベーション

          「意識マトリクス理論」の徹底解説~「再現性をもって成功するイノベーション」の基礎理論でもある

          はじめに 予告通り、今回より「イノベーション編」に入っていきます。その目的は「再現性をもって成功するイノベーション」に関する理論と手法をそして事例を紹介していくことにあります。その理論、手法は世に知られているもの、例えばクリステンセンらの「ジョブ理論」やキムらの「ブルーオーシャン理論」などをすべて統合、包含するものになることを宣言しておきたいと思います。狂人の戯言ととられかねない壮大な目標ですが、それが可能な確信を持ってこの連載に臨んでおります。それは、すでにこの理論、手法

          「意識マトリクス理論」の徹底解説~「再現性をもって成功するイノベーション」の基礎理論でもある

          そこから革新的イノベーションが生まれるのか~「フレームワーク」や「○○思考」にはもうウンザリだ〈中締め〉

          先だっても申し上げましたが、インタビュー調査のシリーズとしてはこれをもって「中締め」とします。その中締めで一見無関係のような毒を吐いておきます(いつも吐いてますけどw)。 ハッキリ言いますが、本屋に行っても、noteを見ていましても「〇〇思考」だの「××フレームワーク」だのの言葉が毎日躍り、相当にうんざりしております。浅薄です。月並みです。流行り言葉に乗っているだけです。砂糖に群がるアリのごとくです。 いつから日本人はフレームやモデルに頼らないとモノが考えられなくなったの

          そこから革新的イノベーションが生まれるのか~「フレームワーク」や「○○思考」にはもうウンザリだ〈中締め〉

          インタビュー調査が進化できない構造

          インタビューの都市伝説がずっと都市伝説であるのは、既述の通り一言でいうと、「定性調査に対しての認識不足」からなのですが、分析してみるとそこにはさらに複雑な構造があります。特に調査業界とクライアントの関係性がこの問題を拗らせています。企画のところで論じましたが、調査をより良くするためには業界がその認識を高めると共にクライアントの発注態度と業界の受注態度が共に変わる必要があります。今回はその構造について触れておこうと思います。 なお、この分析は発注側と受注側との双方を行き来する

          インタビュー調査が進化できない構造

          「意識マトリクス理論」は革命を起こす!~凡人でも必然的にインタビューからイノベーションを起こせるようになった!

          「都市伝説」をあげつらうだけで相当のエネルギーを費やしました。しかし巷で盲信されている都市伝説はやはり都市伝説でしかなく、それには必ず何らかのカラクリ、ワケがあるということが説明できました。そしてカラクリ、ワケがわかれば対策することが可能です。 今までそのカラクリ・ワケを明らかにする努力というか、探求というかがされてこなかった為に都市伝説は都市伝説となるに至ったのです。 その根本要因はインタビュー調査を科学として考えるという態度が無かったことにあると思います。いわば「人に

          「意識マトリクス理論」は革命を起こす!~凡人でも必然的にインタビューからイノベーションを起こせるようになった!

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「グルインは3~4人がベスト」説への疑問

          もともとアスキングのインタビューでは対象者の集中力が散漫になりやすく、オンライン化による「空間の分断」によりそれはさらに促進されてしまうことはすでに理論的に説明しました。この理論では「グループ人数が少なければ注意力の低下は多少防がれる」ということも説明できます。自らの発言ターンではない「アイドルタイム」が短くなるからです。また、そもそもインタビューの時間を短くすれば「時間疲労」による集中力低下の量も減ることも説明できます。 業界団体はコロナ禍によるインタビューのオンライン化

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「グルインは3~4人がベスト」説への疑問

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「男子高校生」は本当に「しゃべらない」のか?

          これまた都市伝説です。 確かに思春期のこの時期、大人に言えないこと・言いたくないことや、友人に言えないこと・言いたくないこと、色々あります。しかしそもそもインタビュー調査に自ら応諾して調査会場に来るからには話す意志はあるわけです。でなければそもそも応諾しません。この時期だからこそお金をもらっても嫌なことは嫌なのです。また、大人にだって話せないこと、話したくないことはあります。この時期特有の問題ではありません。しかもインタビューでは必ずしも話したくないことを訊き出されるわけで

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「男子高校生」は本当に「しゃべらない」のか?

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~人観点の記述ではなく市場観点の記述であること=「言った・言わない」問題はなぜ起きるのか?

          インタビュー調査の報告書というのは一般的にはこのような体裁、構造になっていることが多いものです。 これはネットのセキュリティサービスの利用実態に関してのデプスインタビューの報告書の例です。これが対象者人数分あり、他に「まとめ」があるわけです。グルインの場合も基本は同じで「対象者別」に記述されている例が多いと思われます。あるいは「グループ別」であったりもします。それが「ペルソナ」的にまとめられていたり「カスタマージャーニー」的にまとめられていたりもしますが、要は「対象者別」に

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~人観点の記述ではなく市場観点の記述であること=「言った・言わない」問題はなぜ起きるのか?

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「数人の話」から何がわかるのか?②~「定量」と「定性」の違い

          私の認識が正しければ、コンピュータの普及から量的調査の世界で「多変量解析」が注目され出したころ「定量か定性か?」という優劣観点の議論があったと思います。定性調査が「エキストラ」によって行われていてクオリティが低い一方で、コンピュータや多変量解析が万能のように思われていたが故だと思います。ちょうど最近の「AI」の議論に似ています。 しかしこれはナンセンスな議論だったと思います。何故ならばその両者はモノの見方が違うものであり、ひいてはその用途が違うものだからです。見方が違うとい

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「数人の話」から何がわかるのか?②~「定量」と「定性」の違い

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「数人の話」から何がわかるのか?①~「代表性」の問題

          インタビュー調査への疑問や批判では「数人の意見で何がわかるのか?」とか「数人の意見で意思決定をして良いのか?」というものが代表的です(まさに”代表”的)。またそれに関連して「リクルートで選ばれた数人に”代表性”はあるのか?」ということも言われます。その疑問や批判を回避するために大人数のインタビュー調査が行われたりもします。それは定量的な処理が目的です。しかし、そうなると、各対象者への設問やそのワーディングを構成する必要が出てくるために定性調査としての意味をなさなくなります。意

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「数人の話」から何がわかるのか?①~「代表性」の問題

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「デプスインタビュー」伝説②~「人前で言いにくい話」に向いているというウソと本当に向いていること

          デプスインタビューの採用理由として良く言われるのは「人前で話しにくいこと」の場合、です。具体的には、病気、性、収入、宗教、政治などの話題などが挙げられます。また私が依頼された仕事の経験として「オタク趣味」といったこともありました。 しかし、これらの話が本当に「人前で話しにくい」ことだったとしたら世の中では「下ネタ」話が盛り上がることがあるわけがありません(笑)。 「オタク趣味」が人前で話しにくいことなら、「コミケ」などのオタクイベントに堂々と参加できるわけがありません。あ

          インタビュー調査の都市伝説・さらにあれこれ~「デプスインタビュー」伝説②~「人前で言いにくい話」に向いているというウソと本当に向いていること