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トレーラーハウスの企画開発 No.07【商品企画戦略と販売企画戦略】

本記事ではトレーラーハウスの企画開発について解説をしています。第7回目のテーマは【商品企画戦略と販売企画戦略】です。

 

規格商品か自由設計か?【商品企画戦略と販売企画戦略】

前項までトレーラーハウスのハードとしての作り方を解説してきました。しかしトレーラーハウスを製造できるようになったとしても、商品企画戦略と販売企画戦略がないと、肝心の商品仕様は決まりません。

商品企画戦略と販売企画戦略はそれぞれ多様な要素を含んでいるので、一般論として解説をすることは難しいですが、どちらの戦略にも共通する一つの重要なポイントに対しては解説が可能かと思います。

そのポイントとは、規格商品としての販売か、自由設計としての販売か、です。

この2つはどちらかに特化するということもあれば、両方をバランスよく販売してゆくということもありますので、自社のインフラと事業計画に合わせた選択と集中が必要です。

本項では、初めに商品企画戦略としての規格商品と自由設計の比較を解説し、次に販売企画戦略としてトレーラーハウスの一般的なマーケットへの考察を、商品企画戦略と連携しながら解説をしてゆきたいと思います。

 

商品企画戦略

まずはトレーラーハウスにおける規格商品と自由設計のメリットデメリットを比較考察してみます。

規格商品の場合

メリット
・対象の顧客層が決まっていれば営業が売りやすくなる
・商品のブランディングをわかりやすく打ち立てられる
・物件毎の営業設計経費の軽減と商談期間の短縮が期待できる
・製造工数の削減によるコストダウンが期待できる
・繰り返し生産による品質向上と不具合発生率の抑制が期待できる

デメリット
・多様な顧客ニーズへの対応力が低下する恐れがある
・高額な顧客層への取り込みが難しくなる恐れがある
・先行して規格商品プランの設計が必要となり設計経費がかかる
・仕様変更をした場合に設計図面や営業ツールのメンテナンスが必要になる

自由設計の場合

メリット
・顧客ニーズへの対応力が向上し営業機会損失を少なくできる
・対象の顧客層が拡大し高額物件への対応力向上も期待できる
・規格商品のように先行した設計経費が掛からない

デメリット
・なんでもできることは逆にブランディングが難しくなる
・物件あたりの営業、設計、生産の負担と経費が大きくなる
・営業と設計の両方に高いスキルをもった人材が必要となる
・繁忙期でのリードタイムへの影響が懸念される

以上のようなメリットデメリットがあります。

規格商品と自由設計、いずれか一方ではなく両方を組み合わせることも可能ですが、両方のメリットデメリットは把握しておいた方が良いでしょう。

そのうえで、規格商品であればどのようなマーケットに対して商品特徴を出してブランド化してゆくかを検討してゆくことになります。自由設計においてはどのようなマーケットまでを対応してゆくかにより、社内で必要な営業体制や設計体制が変わってきます。同時に自由設計という個性が打ち出しにくいプロダクトにおいて、どのようにブランドを打ち出してゆくかも検討する必要があります。

 

販売企画戦略

規格商品か自由設計かを決めてゆくことと連携して、どのマーケットに対して販売をしてゆくかを決めてゆきます。

トレーラーハウスは様々な分野で利用されています。今後、より多様な分野でのニーズが高まってくることでしょう。

ここでは販売企画戦略の立案のために、代表的なマーケットに対しての顧客価値を、規格商品と自由設計の視点を交えながら考察をしてゆきたいと思います。

ホテル事業

ホテル事業者が保有する土地を利用した宿泊ビジネスとして、トレーラーハウスを選択することがあるかと思います。ホテルの客室とトレーラーハウスの大きな違いとして、

・完全独立した静かなプライベート空間
・ホテルの室内では体験できない自然の中で過ごす時間

などが期待できます。又、ホテルの多くは鉄筋コンクリート製なので、物件によっては間取り変更などのリノベーションが難しい場合もあるでしょう。トレーラーハウスはリノベーションに変わる有効な事業戦略になりうるかもしれません。

このような特別な空間を演出するには自由設計の商品が向いていると思います。高額にはなりますが、妥協しない上質な空間づくりで高い付加価値を提供すべきではないかと思います。

キャンプ場事業

キャンプ場へのトレーラーハウスの提案は、ホテルよりカジュアルな仕様が求められる傾向にあると思います。テント以上コテージ未満のポジショニングの中で、どの機能を付加するかがポイントになるかと思います。例えば、

・テントとは違う遮音性能と断熱性能
・キッチンでの自炊にも対応できる独立した設備仕様
・可変ベッドなどを利用した2~4人でも宿泊できる寝室仕様

などが求められるかもしれません。このようなニーズに対しては規格商品が向いていると思います。水回り設備仕様はあらかじめ決めておき、リビングと寝室は置き家具を利用して空間をカスタマイズできるようにすることで、宿泊人数の増減にも対応できる仕様としておくことが良いでしょう。

オフィス事業

ビジネススタイルの多様化に伴い、トレーラーハウスを使ったオフィス事業という選択肢も考えられます。オフィスといってもその形態は様々だと思いますが、トレーラーハウスのサイズ感で提案できるスタイルとしては、

・3~5人の個室を有したシェアオフィス
・大きなテーブルを共有しながらのシェアオフィス
・1人もしくは2人でのパーソナルオフィス

などの提案が可能かと思います。対象の顧客としては、企業の敷地内でのサブオフィス、リゾート地でのワーケーションオフィス、個人事業主へのパーソナルオフィスなど、様々な用途への提案ができると思います。

オフィス事業には規格商品をベースに、変更できる箇所を広く設定した商品が良いかもしれません。機能的なところはあらかじめ規格として決めておき、使用用途に応じてカスタマイズできる要素があると、より広い顧客層を取り込めるかと思います。

災害対策事業

災害対策。特に応急住宅としての期待は大いにあると思います。しかし単体のトレーラーハウスだけでは家族4人での居住は難しい場合もあります。その場合、2台以上をデッキで行き来できるようにしつつ、居住性とコミュニティー性を兼ね備えた、ランドスケープデザインが必要かもしれません。

同時に、平時と緊急時での使い分けもできるようにしておく必要があります。例えば、

・平時は倉庫として使用し、緊急時は応急住宅として利用
・平時は地域医療の出張所として使用し、緊急時は避難場所での移動往診

などの使い分けが考えられます。この場合は規格商品と自由設計、両方の可能性があると思います。行政関係として、まとまった台数が考えられる場合は専用の規格商品をつくるという方法もあるかと思います。

 

まとめ

いままで数回にわたりトレーラーハウスの作り方を解説してきました。この他にも必要な手続きや設計要素などがありますが、開発としての全体の流れに沿って解説をすることを優先させていただきましたので、割愛をしております。

実際に物件を受注する際には本記事では解説していない内容も含めて、様々な法律技術要件への対応が必要です。設置場所を管轄する行政機関への確認、消防や保健所への確認、車庫証明、特殊車両申請の有無、等の確認も必要です。

まだまだ解説しきれない内容もありますが・・・。この産業がもっと発展するためには、より多くの方々が参入することが重要かと思っています。多くの視点が入ることで様々な課題への、多様で多彩なアプローチが生まれてくる可能性があります。

そうなることで市場がさらに発展すれば、法律の基準もよりわかりやすく整えられてゆくかもしれません。そうなればより分かりやすいプロセスで開発を進めることができるようになることでしょう。

そのためにこの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

さて、次回からは具体的なトレーラーハウスの提案モデルやトレーラーハウスに関連するレポートなどを発信してゆきたいと思います。

 

本記事はトレーラーハウスの企画開発に向けたアウトラインをテーマにしておりトレーラーハウスに係る全ての法律技術要件を解説しているものではありません。トレーラーハウスには多くの法律技術要件が関連しています。開発を行う際はご自身で十分ご確認のうえ開発をお願いします。

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