旅日記 秩父にて 捌 終演
数回の乗り換え。僕らの旅の終わりが近づく。二人はこれからのことを話した。
進路のこと。次はどこへ行くか。大学生のうちにしたいこと。なんて、自宅の最寄り駅に突くまで一度も途切れずに話し続けた。
駅に着いた二人は、また一緒に旅に行こうと約束して別れた。
さあ、バスで帰ろう。
バス停に向かうが、もうバスは走っていなかった。人の姿もほとんどない。金が無い僕は、仕方なく家まで歩いて帰ることにした。
耳にイヤホンをする。
流すのは、ベン・E・キングでスタンド・バイ・ミー
ボン・ボン・ボ・ボ・ボン・ボン イギナイ!パスコー!
なんてテキトウな歌詞を口付さみながら歩く。車の居ない道路の縁石の上を両手を広げながらゆく。
僕がゴーディでアイツがクリス。僕らは死体を見つけることは出来なかったが、もっと大切なものをたくさん見つけた。
家まで徒歩一時間。まだまだ、遠い場所にあるけれど僕はそれが苦ではなかった。
だって、この旅で僕は少し大人になったから。
青年の姿は夜の闇に消えていった。
(ジ・エンド)