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問いが切り拓く自立自走する組織への道 第2回(2回シリーズ)

VUCA時代あるいはAFTER AI時代とも言われる、現代の世界と社会のビジネスにおいて、「問う力」や「問い」の重要性がますます顕在化しています。ビジネスリーダーたちは、急速に変化する市場環境や技術の進展に対応するため、新たな問いを創出し、その答えを求めることが求められています。

今日は、問いにまつわる「WHY」「WHERE」「HOW」にアプローチします。

WHY:「問う力」や「問い」はなぜ重要なのか?
「問う力」は、不確実性が高く、予測が困難な現代において、隠されたリスクや機会を発見し、革新的なソリューションを導くための鍵です。適切な問いを通じて、根本的な問題を明らかにし、それに対する効果的な対応策を練ることができます。

「問う力」の価値を示す過去のビジネス事例は多くありますが、特に影響力が大きかった事例として、トヨタの「5つのなぜ?」(5 Whys)とIBMのチェスの問題解決法が挙げられます。これらの事例は、適切な問いを通じて根本的な問題を明らかにし、効果的な解決策を導くプロセスを体現しています。

1. トヨタの「5つのなぜ?」
トヨタ生産方式(TPS)の一環として有名な「5つのなぜ?」分析手法は、問題発生時に原因を深掘りするために用いられます。この手法では、問題の表面的な原因にとどまらず、問題が発生した真の根底にある原因を明らかにするために、なぜ問題が起きたのかを5回連続で問うことで、より深い理解と対策を導き出します。例えば、トヨタでは機械が停止した際にこの手法を用いて、表面的な故障から最終的には保守プロセスの欠陥を発見し、それを改善することで再発防止につながりました。このアプローチは、多くの企業や業界で問題解決のモデルとして採用されています。

2. IBMのチェスの問題解決法
1997年、IBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」が世界チェスチャンピオンであるガリー・カスパロフ(Garry Kimovich Kasparov)を破る歴史的な勝利を収めました。この勝利の背後には、単に計算力の高さだけでなく、人間のプレイヤーがどのように思考し、問題を解決するかを理解し、その知識をプログラムに組み込むという問いづくりのプロセスがありました。IBMのチームは、「どのようにして人間の直感と戦略的思考を機械に再現させるか?」という問いを追求し、ディープ・ブルーのアルゴリズムを設計しました。この事例は、問いが技術革新をどのように推進するかを示す良い例です。

これらの事例は、「問う力」が企業における根本的な問題の発見と解決にどのように貢献するかを示しており、不確実性が高い現代のビジネス環境においてこの能力がなぜ重要であるかを明確にしています。

WHERE:「問う力」や「問い」とVUCA/AFTER AIの接点はどこにあるのか?
VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)およびAFTER AI時代は、既存の解答やアプローチが通用しない状況が多く見受けられます。このような環境では、「問い」が持つ探索的な性質が、新たな解決策やイノベーションの道を開くカギとなります。

VUCAおよびAFTER AI時代における「問い」の効果的な活用を示す事例として、エアビーアンドビー(Airbnb)とNetflixの戦略転換を取り上げます。これらの事例は、不確実で複雑な市場環境において新たなビジネスモデルを確立し、持続可能な成長を実現した例です。

1. Airbnbの新しい「ホスピタリティ」のあり方を探索する問い
2008年の金融危機の際、Airbnbの創業者たちは、旅行業界が大きく落ち込む中で、「人々は低コストで宿泊施設を提供する新しい方法を求めているのではないか?」という問いを立てました。この問いは、不確実で変動性の高い経済状況の中で、新しい顧客ニーズに応じたサービスモデルを創出するための出発点となりました。結果として、Airbnbは伝統的なホテル業界に代わる選択肢として急成長し、旅行者と物件オーナー双方に新しい価値を提供しました。

2. Netflixの「ストリーミング」への転換を方向づける問い
NetflixはもともとDVDレンタルサービスとしてスタートしましたが、創業者のリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)は「デジタル化の進展により、将来的にはストリーミングが主流になるのではないか?」という問いを提起しました。この洞察は、不確実で複雑なメディア消費の動向と技術進化を踏まえたもので、Netflixが業界の先駆者としてオンラインストリーミングサービスに早期に転換するきっかけとなりました。これにより、Netflixはデジタルエンターテイメントのグローバルリーダーへと成長しました。

これらの事例から明らかなように、「問い」の力は、VUCAおよびAFTER AI時代の不確実性や複雑性の中で新たな機会を発見し、先進的なビジネスモデルを構築するための重要なツールです。適切な時に適切な問いを立てることが、変化の激しいビジネス環境において競争優位を築く鍵となるのです。

HOW:問いや問う力は、どのように「時代の未知」を切り拓くのか?
問いや問う力は、未知の課題や問題に対して継続的な探究を行うことで、その解決策を模索します。問う過程で新しいアイデアが生まれ、それが継続的な学びと成長、そして組織や社会の進化へとつながるのです。

具体的な事例には、インテル社の世界最大のチップメーカーへのシフトや、オンラインプラットフォームのSlackの誕生にまつわるストーリーを挙げることができます。

1. インテルの「問い」による事業転換
1990年代中盤、インテルはその主力商品であるメモリチップ市場で激しい競争に直面していました。この時、当時のCEOであるアンディ・グローブ(Andrew Stephen Grove)は重要な問いを提起しました。「もし私たちが解雇され、後任のCEOが来たら、彼はどうするだろうか?」この自問自答から彼と共同創業者のゴードン・ムーアは、メモリ事業からの撤退とマイクロプロセッサへの完全なシフトという大胆な経営判断を下しました。この決断は、インテルを世界最大のチップメーカーに変える原動力となり、業界でのインテルの地位を確固たるものにしました。

2. Slackの市場ニーズへの問いの適用
Slack(*)の創業者スチュワート・バターフィールド(Daniel Stewart Butterfield)はもともとゲーム開発プロジェクトに取り組んでいましたが、そのプロジェクト自体は成功せず、チームが使用していた内部通信ツールに注目しました。彼の問い「このツールを一般に提供したらどうなるだろうか?」から、Slackとして再構築・発売されたこのプロダクトは、急速に市場を席巻し、新たなコミュニケーションプラットフォームとしての地位を築きました。バターフィールドのこの問いがなければ、Slackは生まれていなかったかもしれません。
* Searchable Log of All Conversation and Knowledge

これらの事例は、問いがビジネスの方向性を根本的に変え、市場での成功をもたらす力を持っていることを示しています。そして、以下の主張に繋がります。

「問いの共創」を掲げている私たち株式会社HackCampの目標は、ただ単に問いを提供するだけでなく、それによってビジネスの成果を最大化することです。問いづくりは、ビジネスリーダーにとって最も重要なスキルの一つです。このスキルをマスターすることで、変化に富んだビジネス環境で常に一歩先を行くことが可能になります。真のリーダーは、適切な問いを立て、それに答える過程でイノベーションを起こし、競争優位を築くことができるのです。

以上、「問いが切り拓く自立自走する組織への道」と題する2回連続のブログ、いかがだったでしょうかさらに興味ご関心を持たれた方には、ぜひ株式会社HackCampが主催するオンラインセミナーへのご参加や、ホームページなどからの情報発信に触れていただく機会を持っていただきたいです。

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