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フランス小説 【赤いモレスキンの女】

ジャケ買いならぬ、「タイトル買い」してしまった運命の1冊であります❤

モレスキンが大好きで、それもモレスキンデビュー当時は赤一択だったので、『赤いモレスキン』と聞いたら、反応せずにはいられません。

歴代の赤いモレスキンは、料理が苦手すぎて、まずレシピを書き写しながら作業手順のイメトレしてから調理に入るという、夕食の準備が半日がかりの大仕事だった専業主婦初期時代に(笑)ヘビーユーズしていました。

以来モレスキンの虜となり、その時々の気分で選んだ色のモレスキンに、心の中のドロドロをしたためる日々であり、それは今も現在進行形であります。笑

こちら、歴代のモレスキンたち。我ながら壮観すぎてうっとりしちゃう♡

(ちなみに今は、右上のシトロンイエローを愛用中♫)

モレスキンコレクション

【モレスキン】

わたしは絶対、ハードカバーのラージの無地!って決めている。このサイズがたまらなく好きっ!気になる方はぜひお試しあれ❤^w^

さて、そんなしびれるほど素敵なタイトルを持つ小説

【赤いモレスキンの女】 (紙の本バージョン↓)

現代のフランス小説なんて、実は初めて読むから、難しかったらどうしようとちょっぴり不安だったのですが、すごく良かった!

雰囲気たっぷりだけど、軽くて、読みやすい。

会話部分を改行カギカッコなしで、文章の流れのなかに溶け込ませている文体というのを初めて体験したのだけれども、これによって独特の雰囲気が生まれてくるのかってくらい不思議なのにいい感じ。

この不思議だけどいい感じが、どんな感じかというと…

ローランは声をかけた…ハンドバッグを持ってきたんですが。待ちくたびれた5人の女性がいっせいに彼の方へ目を向けた。同僚に聞いてみてください、巡査は事務室を指しながらとっさに応えた。すると、彫りの深い顔立ちの体格のいいスキンヘッドの男が、女性をドアの近くまで見送るために席から立ち上がった。男がローランを見ると、ローランは紫色のハンドバッグを見せた。ついさっき道で拾ったんです。市民として模範的な行為をなさいましたね、屈強な男はそう言うと、男らしい声で続けた。

わかります?会話のカギカッコなしでも、誰がしゃべってるのかわかるし、案外混乱せずにストーリーが成立するんだ!という目からウロコの体験です。(大げさ?笑)

で、カギカッコがないから、なんとなく全部がいい感じに融合していてリズムというか流れが途切れない空気感がいいというかなんというか。。。なんていうんだろ。笑(ボキャブラリーがっ!ToT)

そして、バッグを拾った40代の男は、中に入っていたサイン入りの小説と赤いモレスキンの手帳にしたためられた女性の心の内の断片を見て、やがて恋に落ちる。会ったこともないバッグの持ち主に。

こんな恋のしかた、あるか?いやないでしょ!と普通は思うだろうけれど、この小説の流れの中ではすごく自然にあり得るのだ。とても自然に。

具体的になぜ恋に落ちたのかという説明なんて、文中にはもちろんない。でも、男のこれまでの生活、人間関係、今の日常、そういうものの描写から、バッグの持ち主に惹かれることは、ごくごく自然なことである気がしてくるのだ。

それで改めてよくよく考えてみると、40代後半のオトナだからこそ、むしろあり得ることかもしれないと思えてくるのだ。

若い頃は、相手の外見や性的魅力がきっかけで恋に落ちると思う。内面に惹かれたとしても、始まりの入り口はだいたい外見やわかりやすい何かだったりする。

でも、年齢を重ねて自分自身を深く知っていくと、目に見えないものが見えてくる。肉体的に満たされても満たされない何か、深いところで欲している何かが見えてくるというか。

だから、その目に見えない何かに触れた途端、これだ!とピンときてしまうのではないだろうか。

たとえ、自分自身の脳みそ的には理解できていなくても、本能的に反応してしまう感じというか、なんというか。そんな気がするのだ。

自分に合うモノ、自分と同じ匂いがするモノ、そいうものが瞬間的にわかってくる。とでもいうのかな。

だから、この本は「大人のおとぎ話」という紹介のされかたをしているけれど、わたしは、結構リアルにありそうな気がするお話だな、と思ったのだ。偶然ステキな女性のバッグを拾ったっていうところは確かにおとぎ話的ではあるけれど、本質的な部分では、わりとリアルな感じがしたのです。

最後に、この小説の終わり方がとても好き。

とても映画的というか。

同じ時刻の、登場人物たちのそれぞれの「今」が描写されていて、それが映画のラストにありそうなシーンでとてもいい感じなのだ。

ネタバレしちゃうのでごめんなさいなのだけど、最後にこの素敵な終わりを引用して、初の2000文字超え記事を終わりにします。笑

ロールがドアの鍵を開けると、ベルフェゴールが踊り場に飛び出してきた。その時、ウィリアムは最近フェイスブックで繋がった、十年も連絡を取っていなかった元彼のジュリアンをカフェのテラスで待っていた。ウィリアムはジュリアンが近づいてくるのを見ながら、やっぱり彼こそが運命の人だったかもしれないと思っていた。そのカフェから三つ離れた地区では、パトリック・モディアノの万年筆が三十分も前から止まっていた。モディアノは新しい小説の最後の文章の最初の単語の後に、句読点を打つべきかどうかを悩んでいたーーーー
ーーーーそれが同じ音を立てて最初に落ちた靴の上に重なった時、パトリック・モディアノは句読点を使わないことに決めた。

この終わり方、本当に素敵♡

そんなわけで、気分はパリ、脳内トリップ in パリな今日このごろであります。

最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました🌹(^v^)








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