【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5 「今から数年後・・・」第11章 まとめ記事
新しい政府が出来上がるよりもはるか昔から、過去の政府達と結託していた世界中の悪人たちが準備していた愚かな計画が数年前に実行されました。
しかしそれ故に、彼らに騙され続けてきた人たちも悪人たちの正体と本性と計画に気づき、大勢が立ち上がりました。
それによってこの新しい政府が生まれ、今もなおより良く正しい世界にするために人々が日夜活発に活動を続けている状況なのです。
そんななか、ある地方都市で講演が行われました。
約1,000人ほどの人々が集まりました。
講演のタイトルは
「悪の正体:その手法と対策」
白地に黒で書かれた看板が公民館の前に立てられ、開始より一時間早い午前9時の今でもすでに満員となっています。
勿論営利目的の講演ではありませんので完全無料ですし、そもそもそんなことを微塵も考えていません。
来られない人のためにもネットでリアルタイムに流れますし、アーカイブ化もされいつでも誰でもタダで無限に確認できるように計画されています。
時間になり、壇上には講演者である初老の男が現れました。
「悪がこの世界に存在することは当然ここにおられる、またこれを見ておられる人々は既にご承知だと思います。アタリマエのことです。
私が持っているアイスティーがよく冷えている事と同じくらいに当り前なのです。先程まで冷蔵庫に入れさせてもらっていましたからね。」
穏やかな笑いが生まれる。
「ですが、数年前まで世界中でこの当り前の事実を知っているものは極一部の人だけでした。
何故か? それは簡単です。
悪が世界を支配していたからです。
悪が支配をしているのだからその存在を教えるわけがありません。
教えたら滅ぼされてしまいますからね。
ゴキブリやハエが自分の場所を教える訳ありませんね。」
挨拶もなく、いきなり講演を始めるのは彼の、ミドリミチのいつものやり方でした。
彼はもともと教師だったが、過去の政府の時代の教師であったために正しい教育が出来ませんでした。それどころか逆に子どもたちを苦しめ続ける学校のやり方を強いられ、それに我慢出来ず教育委員会や校長たちと徹底的に戦い続け、結局学校を追い出され私塾で講師を行っていた男でした。
彼は学校のように黙っていても生徒がやってくる環境ではなく、自分で生徒を見つけ更に結果も出していかないといけない苦しい立場になったことで、その結果どうしたら良い教育が、そして子供を、人を成長させられるかを独学で学び経験として自分自身も鍛え上げた人物でした。
数年前に新しい政府になり世界が大きく変わったことで、このような男たちが強力に立ち上がり、そして未来永劫かつてのように悪が栄えることが無いように全身全霊を持って人々の為に働いているのです。
もちろん新しい政府は徹底的に彼のような人物をバックアップしているので、この講演が無料であっても彼は何も困りません。
また、彼のことをみんなが愛しているので、彼に食べ物を持ってきてくれる人もいますし、車や宿を与える人もたくさんいるので、彼自身は何一つ困ることは無かったのです。
それに彼自身、欲望や利益のためになんて動いていません。ただただ一心に子どもたちを、そして正しき未来を、正義を守り浸透させたいだけなのでした。
「今現在は素晴らしい世界になりましたが、まだまだ悪はいます。
そしてそれがまたいつ何処でかつてのように暴れ回り世界の価値観をひっくり返されるかわかりません。あなた達はご存じないかもしれませんが、私の若い時代はそうだったのです。
私の時代は正しいことが間違っていて、間違っているものが正しいと教わり、世界はその基準で動かされていたのです。
信じられないほど愚かでしょう? ですが本当のことなのです。
ですから人々は大人になっても遊んでいたのです。
テレビを見ていたのですよ! スポーツをしていたのですよ!
食べ物ばかりに夢中になっていたのです!
もっと恐ろしいことにお酒を飲んでいたのですよ!
恐ろしいことに毎晩飲んでいる人さえもいたのです!」
ミドリミチはひときわ大きな声で話しました。
思わず力が入ってしまうほど彼はこの過去の歴史を強調したかったのです。
この愚かな現実は、確かに存在したのです。
ですが、愚かなことは風化しやすい。
何故なら恥なので記憶から消そうとしてしまうのです。
ですからより強く若い人たちへ伝えたかったのです。
その熱量に感化され、会場からもどよめきが起きました。
「悪は嘘を伝播し真実を隠蔽します。
時には真実に嘘を、嘘に真実を混ぜ込みます。
こうして真に正しいものを破壊するのです。
真実を知ったものは強くなります。ですから悪にとっては脅威です。
なので徹底的に人々に嘘を教えこむのです。
そのために悪はマスコミと芸能と政治と教育を乗っ取ったのです。
そして広く深く嘘を教え込み続けました。特に強力なのは教育現場です。
つまりは学校ですね。
ここで徹底的に狂った悪の思想を教え込み続けたのです。
幼いものが狂ったら、そのあとの世界は全てが狂うのです。
狂った芽は狂った果実を作ります。そして実際に世界が狂わされました。
恐ろしいことです。
幼い子どもたちを守り教えるものこそが一番の気違いだったのです。
最も悪に染まったものこそが学校だったのです。」
彼はカバンから丸めた紙を取り出しホワイトボードに貼り出しました。
「人々は悪に染められました。悪を行いました。
しかし、真の悪とは違います。
真の悪とは悪を成すものではなく、他人に悪をやらせる者です。
唆す者です。
何故なら当然のごとく真の悪は数が少ないからです。
ですから彼らは数を多く見せるという嘘を第一につきます。
そのときに役に立つのがマスコミなのです。
そしてそのマスコミが使う駒が芸能です。
また芸能は政治と裏表にありますのでこの辺は密接につながっています。」
彼の貼った紙にはこのような文字が書いてあった。
・悪人は必ず人を支配しようとする。その具体的な手法について
a:ショック・ドクトリン
b:クライシスアクター
c:捏造報道、スピン報道
d:影武者
e:暗殺
f:集団ストーカー
g:情報工作
h:芸能
i:土地、財産の強奪
j:戸籍の乗っ取り
k:カルト宗教
l:カルト宗教その2;実行部隊
「誰一人としてお客が居なくても映画では『大ヒット上映中』と宣伝しても許されるように、芸能においては全ての噓が何故か認められているのです。
これが芸能の強みです。
つまり芸能というのは初めから全てが嘘で出来ている、ということが人々に認知されているのです。
もちろん芸能の枠で留まっていればまだ許せるのですが、この嘘の塊が真実であるべき場所にも顔を出すのです。
彼らが政治を語ったり政治に参入したりするのです。
どう考えても狂ったことですが、そういう時は彼らは自分たちを人間として扱うことを強制してきます。
少し前までテレビでバカをやって生計を立て、話す言葉は嘘ばかりだったのに、突然真っ当な人間になってしまうのです。おかしなことです。
それが簡単に現実になってしまいました。
芸能で食えなくなったヤクザたちが次々と政治に参入したのです。」
彼は言葉を止めアイスティーを飲みました。3月半ばでしたがこの日は午前中から良い日差しがあり、公民館の中も熱を持ち始めました。
ミドリミチはスタッフに風を入れるように依頼し、窓やドアが開けられました。涼しい風が場内に抜け、聴衆も心地よさを味わいました。
「不思議なことにも見えます。
芸人やタレントや女優や、中にはスポーツ選手やプロレスラーまで政治家になるのです。しかしこれは全て共通する人物たちなので、解ってみれば違和感はありません。
これらは全て『演者』です。
演者とは何かといいますと、『人の言うことを聞く』存在のことです。
政治とはごく一部の者たちで回しています。
数が多く見えるのは先ほどお話しした通りで嘘のテクニックです。
全部ごく一部に連結されています。そのごく一部の少数によって書かれた本の通りに動く存在が演者です。
俳優は勿論脚本があります。
タレントや芸人も全て台本のとおりに動き、話します。
私の友人が昔、クイズ番組のセットの解体の仕事をしましたが、回答者の席には全ての答えが書かれていたそうです。
スポーツも勿論脚本があります。
プロスポーツもです。プロレスだけではありません。
これらは全て『誰かの指示通りに動くプロ』達なのです。
ですから政治とはとっても相性が良く、嘘を使って人々を支配したいものたちには大事な駒なのです。
つまり政治と芸能は裏表なのです。」
ミドリミチはホワイトボードに貼られた紙を見て、『h』の部分に赤の丸いマグネットを貼り付けました。
「本日はこのホワイトボードにあるものを全て語りたいところですが、それは時間的にも難しいでしょう。
これらはネットで検索すればすぐに確認できる事が多いので省くことになりますが、しかし根本はお伝えします。
特に悪人の使う『嘘』と闘う方法については必ずお伝えする必要があります。これは全ての人が知り扱えるようになるべきです。
いわば防具であり、剣なのです。
敵と闘うときに素手のものはいません。
必ず武器が必要ですからそれを皆さんには持って帰っていただきますし、扱えるようになっていただきます。
お教えするものには時間のかかるものもあります。
私の方で現在、新しい政府と話し合い学校で学生が行うプログラムに組み込んでもらうように調整している内容もあります。
社会人の方のためのプログラムも検討中です。
個人ではしづらいもの、学びづらいものもありますが、理解することが大切なものもあります。必ずしも複雑ではないのです。
究めてシンプルであったりもするのですが、しかし隠蔽され教わることが出来ずにいれば一生そのことに気づくことも学ぶことも出来ないという事実もあるのです。」
ガタガタとなる窓の音にミドリミチは視線を向ける。
春の風は会場へと吹き抜けるがこの場内の熱気を冷ますことはなかった。
「数を増やすために使うのがマスコミです。出版もそうです。
たったひとつ作ってしまえば後は無限に増やすことが出来ます。
映像でもそうですし、音楽でもそうですね。演劇も同様です。
演者が変わるだけでいくらでも増やすことが出来ます。たった一度作ったポスターも1万枚刷ってしまえば100万人に見られるのです。
本も一度書いてしまえば100万冊だって読まれるのです。
悪にとってはこれほど相性の良い物はないのです。
しかしこのマスコミというのは一種の技術であって、これは悪だけでなく善にも使えるものです。
だから悪がより強く支配を固めるのです。
善に使われないようにしてきたのです。
そしてマスコミの技術に乗せて拡散させるものが芸能なのです。
自分たちの指示通りに確実に動くものを大量にコピーして世界に垂れ流して人々を都合よく騙し続けてきたのです。」
聴衆は講演者が経験を元に語るその内容の悲惨さに呆気にとられ反応が薄くなっていました。聴衆たちは自分よりも年上のこの講演者が一体どんな時代を生きてきたのだろうか、とその悍ましい世界の想像をぼんやりと膨らませながら耳を傾けていました。
「しかし、皆さんは疑問に思うかもしれません。
いくら何でもそんなに人は嘘に騙されないのではないかと。
ある程度の年齢になれば誰でも自然に真実に気づくのではないかと思われているかもしれません。
そういう疑問を持つことは当然かもしれません。
今ここにおいでの方たちは皆お若いです。ですから過去の政府の時代がどれほどだったかは経験されていません。
悪が人類の初めから現在までに為してきたことに比べれば、私の経験した事なんて本当に僅かなものですが、でも比較的新しい経験のなかでも、人が年齢に関係なくあっさりと騙され続けてしまうものだという事実は証明されてしまったのです。
存在しないウィルスをテレビによって信じ込まされた人々が真夏でもマスクをして不潔な状態で過ごしたのです。
子供にも強制したのです!
それも学校が行ったのですよ!
子供に知識を教えるものたちが、何一つ自分の頭で考えること無く、ただただ言われたことを黙って疑いもせずに無抵抗な子どもたちに強制していたのです。
そんな紙っ切れの雑巾が、存在の証明すらされてもいないもののために強制されていたのです。
これが悪であり愚かであり、そしてカルト宗教というものなのです。
化学も医学も法も全部を無視したオカルトが世界で押し付けられたのです。もちろんこれを煽りに煽ったのもカルト宗教団体であり、政治家であり、芸能であり、マスコミなのです。
医薬品メーカーも病院も医者も乗っかりました。
彼らは金になれば何でもするのですから皆同じ存在です。
マスクの目のサイズを調べればウイルスを止められず通過してしまうなんて、あの時代でもネットで一瞬で検索出来ました。
5分あったら全てが嘘の騒動であることがわかりました。
でも、誰も調べなかったのです。
誰一人として5分も調べなかったのです。
それほど人々の頭が狂ってしまっていたのです。
ゲームをしていたのです。
動画を見たりしてたのですよ!」
若い聴衆たちも、その騒動については知っていました。
だが経験者にこれほど生々しく聞かされたことは無かったのでしょう。
本日で一番のどよめきが起こりました。
ミドリミチは話を止め、アイスティーを飲みながらしばし場内が落ち着くのを待ちました。
気づくと結構時間が経っていたようで、アイスティーもすっかりぬるくなってました。
彼は壇上の脇に控えるスタッフにお代わりをお願いしました。
「もちろんそれも大人たちが、です。
もう20歳を過ぎているのにです。
ゲームをしてたのです。
5分も調べず。
猫の動画を見てたのです。
5分も考えず。
マスクをしながら走ったりしてたのですよ。
これはあの時代を知らないものには受け入れがたいでしょうね。
しかし、事実です。
そして油断すれば今の時代であっても起きうる気違い沙汰なのです。
ですから私は必死になって皆さんに伝えているのです。
風化させてはいけません。
この恥ずべき、本当に情けない惨めな歴史を忘れてはいけないのです。
これを永久に記憶にとどめ、そして乗り越えるのです。」
ミドリミチはどよめきに被せるように話しました。
「人々が騙される嘘にも種類があります。
それが大きい嘘と小さい嘘です。
これは意外にも小さい嘘のほうがバレやすいのです。
大きい小さいというのは規模のことです。
規模が小さい方が管理も捜索も検証もしやすいです。
だが大きい嘘はバレにくいです。
何故なら規模が大きい分だけ検証すべき要素が多くノイズも増えるからです。嘘をつく側からしたら規模が大きい方が安全で、しかもその嘘による収穫も大きい。
だから彼らは必死になって巨大な嘘をつき続けました。
騙される人々も規模が大きくなることで理解や認識がぼやけてくるのです。
食べ物で言えば一口程度ならわかるものも、大量に食べさせられると感覚が鈍り判断が出来なくなるのに近いです。
そしてその嘘に嘘を連日に渡って重ね続けます。
それも子飼いにしている芸人やタレント、女優やスポーツマンなど『庶民の味方』だと思い込ませている連中にやらせるのですから、人々はどんどん嘘を見破れずに飲み込まれていくのです。」
ミドリミチは舞台袖を確認しましたが、アイスティーのお代わりはまだやってきませんでした。
「ここで今一度、ものを読むことの大切さを強調します。
それは単に文字を読むだけではなく、
文字になっていないことを読む力のことです。
そしてそのまだ文字になっていない事を文字にする力のことです。
人を支配したいと望むものは、文字しか読めないようにしたがります。
人には文字も、文字になっていないものも両方読む力があります。
難しいことではありません。当たり前のことです。
誰でもやっていることです。
ちょっと外を見回すだけでもいくらでもあります。
何しろ世界には文字になっているものの方が少ないのですから。
あなたが自転車に乗っている時に、曲がり角から人や自動車がやってくるかどうか、それはどこにも文字になっていませんね。
それはその時にそれぞれが考えて「読む」のです。
ご飯を食べていてもどの順番で食べるかなんてどこにも書いていません。
でも自然と出来ています。大体バランスよく片付けていくものです。
歩いている時にもそうです。
どこにだって細やかな凸凹などがあるものです。
それを微妙に避けたり越えたりしているものです。
それはどこにも書いていません。しかしみんなやっています。
でもそれはあまりに些細な事なので誰も指摘しません。
つまり一見すると『無い』のです。
しかし存在します。
こういうすぐには見えないもの、指摘しづらいものを読めないように、
見えないように『調教育』するのです。
人間は文字しか読めないのだと嘘をつき、
文字以外を読む力の存在を隠し、教えないのです。
そうして世の中に予め記載されているもの、
額面通りのことしか理解出来ないように調教します。
しかし繰り返しますが世の中の殆どは明文化されていません。
つまり文字しか読めないという事は、
『誰かが意図したことしか理解出来ない人間』ということです。
これは先ほどお話しした演者という存在にとても近いものです。
こういう人の事を昔は指示待ち人間などと言ってバカにしていました。
しかしそういう風にワザと育てていたのです。
本当にひどい話です。
彼らにとっては殆どの人間は人間ではなく家畜や奴隷だったのですから、
その扱いもある意味当然と言えます。
本当に汚らわしく恐ろしいことですが、事実でした。
そしてこういう調教育を施された人たちは、
自分で何かを発見したり問題点を見つけ出すことなど出来ません。
つまり何の能力も無い人にされてしまうのです。
ですから簡単に騙せるのです。
こういう人たちは、悪人がわざと人を騙すために工作した罠を見破ったりなど出来ませんからいくらでも騙されました。
年齢は一切関係ありませんでした。
恐ろしいことです。
80年生きたって関係ないのです。
あまりにも幼稚でずさんな事にだって一瞬で騙されます。
何故なら昔の人達は、幼い頃から学校やテレビや親たちから
嘘ばかりを教わり、嘘だけで育てられてきたからです。
人は嘘によってどうなるのか?
迷子になるのです。
方位磁石が間違っているのと同じなのです。
北へ行くべきなのに方位磁石が北を南と指したら、
それを見た人は永遠に正しい目的地へ辿りつけません。
彼らは幼い頃からこうして嘘によって人生の迷子になりました。
そしてそのまま大人になったのです。
人生には必ず『真実』が必要です。
これは絶対です。
真実だけが人をまっすぐに導きます。
ここで大切なことは、人の成長についてです。
人は真実がないと成長出来ないのです。
だからこそ悪人はより人々から真実を取り去ります。
成長させないようにするのです。
そうすれば50になろうが80になろうが赤子だからです。
簡単に騙せるし簡単にあしらえるのです。
先ほどの文字の話もそうですが、悪人たちはこの事実を知っています。
真実の大切さも、文字になっていないものを
読む力の大切さも知っています。
だからこそ隠蔽するのです。
そうすれば自分たちが常に人々の上に立てるからです。
人々を支配できるからです。
だから彼らは積極的に嘘を教え込み、真実を隠蔽するのです。
この手法は真実を知っている、真実を独占している
悪人たちには最高の手法なのです。
人は真実で成長します。
だから嘘では成長が止まるのです。
幼い頃から嘘を受け入れた人はどうなるか?
嘘を受け入れたそこまでで成長が終わり、そこから先は進めないのです。
つまり路頭に迷うということです。
一見大人に見える人間も、結局はその嘘を受け入れた時の年齢から
一切成長をしていない子供なのです。
だからいつまでもスポーツばかりやって身体を鍛えたり
テレビを見たりゲームをしたり映画を見たり
恋愛ばかりだったり食べ物や物に固執したりするのです。
その行動の通り、彼らは子供そのなのです。」
舞台袖からスタッフジャンパーを着た男が2人やってきました。
下手側から現れたその男たちは、講演台を挟んで反対側にいるミドリミチをやって来るなり黒い32口径スナブノーズで撃ち始めました。
2丁の拳銃による計12発の乾いた発砲音が撃ち終わるまでのその僅かの間に、舞台上で唐突に繰り広げられた惨劇を目の当たりした聴衆達は即座に行動を起こしました。
全ての聴衆が隣り合う者たちとアイコンタクトと、一言二言のやりとりで役割を決めました。
全体の3分の1が避難と救援のために外へ走りだし、また3分の1がスマートフォンを取り出して撮影を始め、残りの3分の1の半分が通報をし、残りの者たちが壇上へと駆け出しました。
新しい政府の時代では、特に若い者たちはこのような事態への演習を充分に済ましていましたから誰一人慌てることなく成すべきことを成せました。
壇上で男たちが全ての弾丸を撃ち終え目の前に白煙が立ち込めたなか、黒い目出し帽ごしに標的であるミドリミチの姿を確認しようと煙を手で払いながら一歩ずつ近づくと、そこには全く無傷のミドリミチが強力に彼らを睨みつけたまま立っていました。
男たちは顔を見合わせ、次の一手を検討している刹那にミドリミチは背中に用意していた警棒を取り出し、彼から見て右側に位置する大柄の男へ駆け寄りその警棒を振り下ろしました。
しかし、その動作が緩慢なうえに大げさであったため、ミドリミチの放った警棒は大柄の男にあっさりと左手で掴まれてしまいました。
ミドリミチは全身の力を込めて強く警棒を引っ張りますが、大柄の男は相当に力が強いようで全く警棒を離しません。それどころかミドリミチが両手で引っ張っても男は左手一本で警棒を引き寄せ、ミドリミチはズリズリと身体ごと引きずられる始末です。
ミドリミチは賊が警棒をしっかりと掴んだことをこうして確認した後、警棒の握りに取り付けられたスイッチを押し、男に7万ボルトの電流を浴びせました。
男は強力な電流を浴びた衝撃で、固まったまま垂直に飛び上がりそのまま壇上に倒れました。
自分の胸元に手を入れ、何かを取り出そうとしていた小柄な方の男は、崩れ落ちた相棒を確認するなり、すぐにしゃがみ込み足首へ手をやりました。
男はアンクルホルスターから予備の22口径を取り出し、顔を上げて講演台の向こうにいる標的へ視線を向けたところ、そこには誰も見えません。
しかし首を上げ更に視線を上に向けると、そこには舞台を照らす強力なライトを背中に受け、講演台から飛び上がって警棒を振り上げるミドリミチの姿がありました。
ミドリミチは講演台から飛び降りる勢いに合わせて警棒を振りおろし、体重を載せた強烈な一撃を賊の頭部へ叩き込みました。
聴衆が素早く判断し、壇上へ上がって講演者を助けようとするその僅かな間に、初老のミドリミチは自らの手で2人の賊を完全に倒してしまいました。
聴衆は壇上へ上がるなり、すぐに倒れた男たちを取り押さえましたが、もう全くその必要はありませんでした。
そこへ物音と救援の声で駆けつけた警備員たちが会場へ飛び込み、取り押さえている聴衆に代わり犯人の身柄を押さえつけました。
「マスクを外せ! 上着を脱がせるんだ! ボディチェック!
持ち物を奪え! 足と手を拘束しろ! 」
ミドリミチは警備員に鋭く指示を出し、警棒を背中に戻しました。
警備員はその指示に従い行動しました。
ミドリミチはスマートフォンを取り出し、目出し帽を外された犯人の顔と全身を撮影し始めました。
それを見た壇上にいる聴衆たちも同じようにしました。
警備員がボディチェックで押収した犯人の持ち物が床に投げ出されます。
財布、スマートフォン、使用した拳銃、身体に直接ガムテープで貼り付けた刃渡り約10インチのククリナイフ、22口径のポケットピストル、プッシュダガー、クイックローダー2つ、ムーンクリップ4つ、大麻、虹柄の数珠、
自害用と思われる手榴弾・・・
ミドリミチは犯人の財布を取り、中から身分証などのカードを取り出して床に並べて撮影します。
次に犯人のスマートフォンを確認し、それぞれの指紋を使ってロックを開けるとすぐに指紋認証からパスワードロック「0000」へ変更し、メールとアドレス帳をゆっくりとスライドさせながら自分のスマートフォンで動画を撮影しました。
ひと通り撮影が終わるなり、ミドリミチは新しい政府と新しい警察へ直接情報をやり取りできる専用のアプリを使い、今撮影した画像と映像を送り情報の保存と共有を行いました。
それを見ている聴衆たちも同じようにしました。
そのやり取りを行っている間に、今度は通報を聞きつけた警察と特殊部隊が突入し、素早くミドリミチを保護すべく武装した隊員たちが彼の元へ駆けつけました。
この会場の外では特殊部隊の車両が7台やってきて、付近の警護と犯人組織の仲間がいる可能性を考え捜索が行われています。
いつの間にか頭上にもヘリコプターが数台飛んでおり、同じように会場の安全を確認しつつ、不審な車両や人物の捜査が行われていました。
部隊の責任者が壇上へ上がりミドリミチの身体を心配しましたが、賊の弾丸が全て外れていましたから全くの無傷でした。
責任者はすぐにこの場を自分たちとともに離れて安全な場所へ避難するようにと話しましたが、ミドリミチはそれを強く断りました。
「私は無傷だ。それにこの会場で行われるべき講演はまだ途中である。
もしこの講演が途中で終わったとしたら、私の命こそ取れなかったものの、こうして真実を伝える行為の妨害には成功したということになり、
悪人側には手柄になってしまうだろう。」
その言葉を聞いた責任者は納得し、自分たちの部隊に無線で連絡を行い、更に7倍の人数をこの会場近辺へ配置し、講演が終了するまで誰にも妨害をさせないように安全を確保することを指示しました。そして騒音で講演に支障をきたしてはならないのでヘリコプターを遠ざけるようにも伝えました。
こうして物々しい騒動が起きてから5分後に、講演が再開されました。
ミドリミチは賊に襲われた事実など無かったかのように壇上で平然と立ち、聴衆が元の席に戻るのを見届けていました。
会場の中は聴衆の周りをぐるりと囲むように武装した警官たちが配置されています。
また、壇上には特殊部隊の隊員が複数名おり、さっきとは打って変わり物騒な雰囲気になっておりました。
そこへ舞台袖からスタッフが現れ、武装した隊員に止められた後、ミドリミチのもとへアイスティーを届けてくれました。
ミドリミチはこれ幸いとばかりに顔をほころばせ感謝して受け取り、すぐに一息で飲み干して更に彼にお代わりをお願いしました。
その姿を見ていた聴衆も、彼と同様に顔をほころばせ穏やかな笑いが場内を包みました。
「人は真実によって成長し賢くなり、嘘によって道を誤り愚かになります。これには年齢性別は一切関係なくいつでも起こりうるものです。
そして嘘偽りを並べ立てるものたちは常におりますから、そのためにも人は常に真実を求める必要があるのです。」
ミドリミチはさっきまでの騒動が無かったかのように話し始めました。
2人組のヒットマンに至近距離で12発も弾丸を放たれたのに、その言葉にも仕草にも一切の恐れも不安もありませんでした。
「そして人が嘘偽りに溺れ、愚かになることで真っ先に苦しみ
死んでいくものがあるのです。
それが子どもたちです。
トンネルのカナリヤのように、何か危機があったときは
まず最初に一番弱いものが苦しみ、死んでいくのです。
しかしその弱い者たちは一番罪がありません。
しかし苦しめられ死んでいくのです! 」
本日は講演なのでやっていませんが、普段の授業では生徒たちにドンドンと質問を問いかけて答えさせる方法をとっています。
ミドリミチの授業では誰もお客様にさせず当事者、参加者にさせるのです。
「大人が愚かであると子供が死ぬのです!
これは時代も国も関係ありません。
永遠に続いてきた不幸な事実なのです。
先ほどお話したあの愚劣極まりないウイルス騒動のとき、
ゲームやお酒や食べ物や動画に染まっていた愚かな大人たちのせいで、
一体どれだけの子供が苦しみ殺されたことでしょうか!
子どもたちは自分で自分を守ることが出来ません。
だから保護者がいるのです。
しかし、その保護者たちが愚かであったなら、
一体誰が彼らを守るのでしょうか?!
そうです、誰も守れないのです。
だから殺されました。
幼い子どもたちが自殺に追い込まれていきました。
当り前です。街を歩けばあまりにも愚かな大人たちが、
誰も彼もが真夏でも強風のときでも麗らかな春日和でも、
湿気の舞う雨の日でも、路上でマスクをしていたのですよ!
気が狂っているのがよく分かるはずです。
あの時代であっても、そのウイルスなんて存在しないことが
すぐに暴かれていました。そもそもちょっと考えれば
誰にでも分かるものなのです。
与党政権のものたちが誰一人としてまともにウイルスを警戒せず
感染もせず、連日高級レストランやホテルなどで
税金を使って飲み食いして遊び呆けていたのですよ。
年末には芸者を呼んで忘年会もしていたのですよ。
どうして彼らには感染しないのでしょうか?
ガバガバに空いた紙っ切れのマスク一枚で防げると
本気で思っていたのでしょうか?
忘年会で芸者がマスクをしていたのでしょうか?
それなのにどうして地方都市の庶民たちは
電車やスーパーや路上で一日中マスクをつける必要があるのでしょうか?
与党政権に属する政治家には感染しないという忖度ウイルスなんて、
どうやって信じることが出来るのでしょうか?
例年みんながかかっていたはずのウイルス性の病気は
この年から激減しました。バカバカしいです。
単にすり替えているだけです。
挙げ句にはそのウイルスの存在を証明することが、
世界中の誰も出来ないのです。論文が存在せずしてワクチンを作り、
子供にまで打っていたのですよ。どうやって作成できたのでしょうか?
しかも前例の無い急ピッチの作成なうえに、これによって人体に悪影響が
あっても訴えないという書類にまでサインをさせられていたのです。
そのウイルスの感染を識別する検査は、10種類以上のウイルスで陽性結果を出すのです。つまりどのウイルスに反応したのかは分からないのです。
でもこれだけがこのウイルス騒動の根拠だったのです。
何しろ論文すら存在せず、誰一人として分離に成功したものもいなかったのです。そのことがバレたと同時にあらゆるウイルスが存在を認められていないことも分かりました。
それらしい不気味な画像が流布しましたが、それはただのCGでした。
しかしCGとも言わず、雰囲気と圧力で人々にまるで写真であるように思い込ませ続けたのです!
そんなことを本気で信じることが出来ますか?!
今ここにいる方たちには不可能でしょう。当時の私にも勿論不可能でした。しかし、多くの人々は本気にしたのです。
そして真実を知っている者たちを虐めました。
マスクをせずにいる者たちをイジメ抜き、睨みつけ嫌がらせをしました。
いいですか皆さん。これが愚かな人たちというのです。
テレビを見て、ゲームをやって、動画を見て、お酒を飲んで、食べ物や
見た目にだけ人生を使っている者たちというのは必ずこうなるのです。
それがこの国の人々の大多数だったのです!
皆さん、このことは絶対に忘れないでください。
これはいつでも起こりうることなのです。
この国にはそういう下地があるのです。恐ろしいことですが、
これを忘れた時は、また起きると思っていただきたい。」
壇上の上手側には先ほどミドリミチへ向かって発砲された弾丸を回収する鑑識がおります。彼らも時折手を止め,思わず振り返って彼の話を聞いておりました。
「私は最初にお話しました。それは悪人との闘い方。
闘う時の武器についてです。
その武器についてお話します。」
ミドリミチはホワイトボードの空欄に大きく、後ろの人でも見えるように文字を書きました。
『思い』
「詐欺師というのは必ず数字を使います。
『数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う』というように
詐欺師というのは数字、つまり情報、データを駆使して相手を論破し
言いなりにさせ自分たちの主張を通させます。
そこに善人も負けじと正しいデータや情報を使って闘います。
これは確かに大切なことです。
これを否定なんてしませんし、してもいません。
しかしこのやり取りにはひとつ弱点があります。
それは善と悪の判断がつかない人にはよく理解出来ないという問題です。
情報やデータ、数字は専門性が帯びますし理解にはそれなりに
知識も知性も経験も必要です。
しかし、未だに何が正しいのかが分かっていない、
悪人たちの嘘に人生や思考を絡めとられている人にとっては
単に混乱しか与えないのです。
そうなりますと結局そのような人たちはどうなるか?
長いものに巻かれるのです。
有名で多数派だと思われるものに付いて行ってしまいます。
つまりはテレビが支持する人物や政党、人気ユーチューバーやCM、
大企業に従うのです。
これをして『理解出来ない人が悪い。騙される者にも責任があるのだ』
と言って切り捨てようとする気持ちも分からなくはありませんが、
しかしそれはやはり不幸な話だと思います。
先ほども言いましたが、人は嘘によって成長が止まるのです。
つまり一見大人に見えても実際は赤ちゃん同然の人物も沢山いるのです。
『分からない奴は置いていく』というのは、悪人によって
成長するチャンスを奪われた気の毒な人を見殺しにするようなものです。
彼らにだって真実を知る機会やきっかけは与えるべきだと思います。
そしてそれを知ったとしても、受け入れて成長するにはやはり
長い時間と苦労が必要なのです。
教える側にはその忍耐も要るのではないでしょうか。」
そう話すミドリミチの瞳は遠くからでも分かるほど、寂しさを滲ませていました。
「理解出来ないものはそれを恥と考え、それ故に
人にも尋ねることが出来ず、またしても成長のチャンスを
失うことになります。特にそれは年齢が重なるごとに起きやすくなります。
そしてその恥を隠すために解ったフリをしてまたしても自分に嘘をつき、
ますます何が正しいのか分からなくなり更に迷子になっていくのです。
どうしてこのような混乱が生まれるかというと、
それは情報、データには『色』が無いからなのです。
悪人でも善人でもどっちであっても同じものが使えてしまうのです。
それは自動車などの物と同じなのです。
善でも悪でも免許さえあれば全く同じ車種を運転することが可能なのです。善人が家族の送り迎えに使おうとしようが、悪人が人を轢き殺すために
使おうとしようが、それを事前に止めることは出来ません。
何故なら使うときにはそんな気持ちの確認などされないし、
それを確認は出来ません。
『運転』という意志と『免許』という資格さえあれば、
心の中に何を抱えていようとも使えるのです。
それは包丁でもチェーンソーでも斧でもクリケットバットでも同じです。
それを使う人の気持は関係なく使用が許されます。
つまり使用している物では使用者の気持ちや考えは判断出来ないのです。」
ミドリミチはホワイトボードに書いた「思い」という文字をグルリと大きな丸で囲みました。
「ですからこの『思い』が必要なのです。
これはその人の『色』です。
これを出すことが必要なのです。
何故ならこの『色』こそが善か悪かを分ける指針だからです。」
そう言いながらペシペシと手に持ったマジックで「思い」という文字を叩いて主張しました。
「人が情報によってコントロールされることは今更言うまでもありません。
人という肉体は情報という存在によって動かされます。
当り前ですね。
信号が赤から緑に変わったら歩き出すのは当然のことです。
目から入ってきた情報で人は肉体をどう動かすかを判断し実行します。
さきのウィルス騒動でもそうでした。
この真実を知った人たちは本当のマスクをし始めた歴史的事実もあります。
彼らは顔から汚い雑巾を外し捨て去り、
その代わりにツバの長いキャップやサングラス、
ノイズキャンセリングイヤホンやヘッドホンをつけ始めたのです。
つまり悪しき愚かなウィルス騒動はメディアウィルスと呼ばれたように、
実際は目と耳からウィルスが侵入していたのです。
情報というウィルスです。
街中にマスクを強制するポスター、存在しないウィルスで
人々を脅かす張り紙、表皮常在菌を殺し皮膚を破壊する
強力なアルコールの強制や人との距離を取るように命令するアナウンス、
そしてアルミニウムや水銀、そして胎児の細胞まで混入させた
毒物の強制摂取の報道などなど、これらは全て目と耳から侵入する悪です。
この情報毒、つまり嘘偽りを防ぐ事こそが大切だと気づいた者たちが
自分たちを守るために目と耳にマスクをし始めました。
そしてそのうちに大人たちはそれも不要になりました。
何故なら真実を知って賢く成長したからです。
つまり目と耳から侵入してくる悪しきウィルスは
『真実の知性』という情報のマスクによって防がれ、
肉体も知性も魂も守られるようになったからです。
しかし、これはあくまで消極的な防御に過ぎませんし基礎的なことです。
今の時代であってもこれらの悪しき情報ウィルスはあります。
ですから今でもこのキャップやイヤホンを使った防御は有効です。
しかし私が伝えたいのは、皆さんに差し上げたいのは武器です。
強力な剣です。
これを全ての人に持ってもらい使えるようになってもらいたいのです。
私が差し上げたその剣を、生涯に渡って研いで磨き上げ、
毎日振るって腕を上げ、そして悪を倒すことに使って欲しいのです。」
この極めて具体的で力強いミドリミチの言葉に聴衆は思わず大きな拍手をして感動をアピールしました。
ミドリミチも平手を掲げて彼らの気持ちに受け答えをしました。その僅かな雰囲気の緩みを見たスタッフは今一度隊員に許可を取って彼にアイスティーのお代わりを差し出しました。
「ありがとう。
思いに必要なのは自分自身の気持ち、考え、夢、希望、愛、未来、理想。
自分の、自分だけのこの思いがあって初めて実現出来るのです。
この気持ちを明確に整理して伝えること。
それが『思い』です。
もしあなたが悪と闘うとき、
あなたがあなたの『思い』を相手に告げた時、相手はどうするか?
情報やデータを使った時の闘いでは相手が情報を使えば
当然自分たちも情報を使います。
つまり同じ土俵、プロトコル、拳に拳、銃に銃といったように
同じものを使うのです。
では、悪に対して『思い』で闘ったら
相手は相手なりの『思い』を返して来るはずです。
しかし、それが出来ません。
何故なら悪は本音を吐けないからです。
悪の本音は悪です。
つまりそれは口にしてしまったらその瞬間に悪が負けるのです。
だから悪は絶対に『思い』を告げられません。
相手は善の『思い』に対して『非科学的だ』とか『非論理的だ』とか言ってはぐらかします。
そうやって絶対に自分の『思い』を表に出さずに
すむように逃げまわります。
これが悪の姿です。
悪は悪の思いを持っていますが、それは悪以外には
絶対に認められない汚れた考えです。
だから隠すのです。
光の下へは出せないのです。
だから彼らはその思いを隠しに隠しながら
騙せる人間を使って代理をさせるのです。
そうやって生きてきました。
だから嘘や詐欺や隠蔽や工作が得意なのです。
アリジゴクが罠を掘るのがうまいのと同じです。
賢いわけでも何でもありません。
彼らがコソコソ生きていく為にやってきた事ですから
上手くて当然なのです。これはこれで真実です。
ですから皆さんには皆さん一人一人の
『思い』を探し見つけてもらい、それを書いたり話したり考えたりして
『使える』ようになってもらいたいのです。」
ミドリミチは受け取ったアイスティーを一口飲んでから講演台に置き、ホワイトボードに書き始めました。
「重要部分:『私は・・・』」
「これが大切なのです。
必ずこの『私は・・・』を意識してください。
科学的だとか論理的だとかそんなことは関係ありません。
あなたがどう思い、どうしたいか、どうなって欲しいか、
どうなるべきと考えているか、これが大切なのです。
現在の新しい政府になるまで、長いこと私達人々は
この事を教わることが出来ずにいました。
いえ、それどころかまず最初に『破壊すべき』とさえ教えこまれ、
そして幼い頃から人生を奪われてきました。
しかしようやくこの時代になってこれを教わり
愛することが出来るようになったのです。
ここが大切なのです。
この『私が』のところです。
これは今の時代でもいくら強調してもし足りないのです。
何故ならこれまで一度もこれを教えたり書き残したり
研究されたりしていないので学ぶべき前例が無いからです。
これから私達が作っていかないとならないものなのです。
ですが、単に『私は・・・』と言って思いを話したところで
好き勝手な妄言と言われても否定しづらいのも事実です。
その発言にどれほどの信憑性があるものなのか、その言動がどれほど相手に対してまたはその議論に関して意義があるものなのかは注意が必要です。
きちんと関連性がありその議論の延長線にその『思い』が無ければ
なりません。そうでなければただの子供のワガママであり、かえって相手に軽んじられてしまいます。
しかし、きちんとした『思い』には『根』があるのです。
それが情報やデータ、そして正しさ、真実です。
つまり『思い』とは情報や正しさを元にしているのです。
情報が根なら、思いは幹です。
この2つがきちんと繋がっていることで初めて強力な武器になります。
これを理解して下さい。」
会場の入り口の方で何やらガヤガヤとした物音が聞こえています。
どうやら何らかの荷物が届いたようで、それを不審物ではないのか?と疑った警官たちが取り調べ、特殊部隊の隊員が爆発物の疑いをもって対応しています。
「勿論悪人はその自分の『思い』すら嘘をつく事が充分に考えられます。
彼らは嘘の専門家ですし、その生涯を全て嘘で作り上げてきたのですから
造作も無いこととも言えます。
しかし、繰り返しますがここで本当に大切なのは『私』なのです。
人は嘘をつき罪を重ねると『私』が死んでいきます。
自分がいなくなってしまうのです。
自分に立ち返ろうとすると過去の罪がやってきて
それと向かい合うことになるから
出来るだけそうならないように生きていこうとします。
その結果、自分が無くなるのです。空っぽになります。
しかし空っぽだと何も出来ないので彼らは自分に都合の良い
ニセの人格を作り上げます。
それは当然のことですが『嘘』です。
つまり嘘が彼らの人格、精神、魂、人生そのものになるのです。
世間的には自分が無いものというのは何かを悟った無欲な人格者と
思われますが、違います。
狂人です。
彼らの心の中はその作り上げた嘘の人格を真実であり盤石であると
思い続けることに必死です。
ですが殆どのものはその彼らの人格を維持するだけの強力な嘘を
手にすることは出来ず、何処かのタイミングで自我が崩壊します。
そうやって滅んでいきますが、それが早ければまだ改心のチャンスが
ありますが、大抵は残念なことに晩年にやってくるのです。
その前にチャンスがあっても殆どはそれを受け入れません。
彼らはプライドからそれを払いのけ、ますます自分を逃げ道の無い
どん底へ追い込んでしまうのです。
ですからそのチャンスは結局人生の終盤やってきて、
それで初めて受け入れるのです。
つまり敗北を認めるのですが、そんなことしてももう時間が無いのです。
彼らがこれまでに行ったことはもう謝罪し
罪を償うチャンスなんて無いのです。
こうして嘘によって人は滅びますが、その間に苦しみや悪や不幸が
そのものによって世界にばら撒かれるのです。」
入り口からダンボールが運び入れられています。
どうやら安全が確認されたようでした。
「したがって悪人は自我が弱く、脆いのです。
正しい人の『思い』は真っ直ぐで力強く誰が聞いても納得出来るものです。悪人のそれとは違うのです。
ですから『思い』同士で闘ったら絶対に善が勝つのです。
しかし悪は悪で大変に長い歴史があり、悪のテクニックなどが
マニュアルとなって存在しています。
そしてそれを徹底的に幼い頃から学んでいる者たちがたくさんおります。
これらは大変に強力です。よくよく注意が必要です。
そのマニュアルというのが悪魔崇拝でありカルト宗教です。
彼らはここから嘘や悪や偽善や詐欺のテクニック、
そして先ほど話した嘘の人格を維持する精神的な修行や
知識を学び会得するのです。恐ろしいことです。
しかしこんなことをする連中が山ほどいるのです。
この新しい政府の時代になった今でもいます。
日夜闘っていますが、まだまだいるのです。
しかし過去の政府の時代にはその存在すら隠蔽されていました。
ですが現在は正しい人たちの活動により悪の正体が露わになったのです。
ですから対策も取れるし恐れることは無くなったのです。」
会場の後ろには長テーブルが複数用意され、そこに到着した荷物が置かれはじめました。
「皆さんは力強い『思い』を手にして下さい。
それを一切恥じること無く堂々と言えるようになって下さい。
恥じるべきは自分の思いすら言えない者たちの方なのです。
自分と向き合う勇気も無い者たちなど相手にすることはありません。
素直に正直に真っ直ぐに自分の思いを見つけ出し、
それを世の中に対して語り告げるのです。」
ミドリミチは腕時計を確認しました。
「残念ですがそろそろ時間のようです。
皆さん、最後に『思い』を告げる練習をしましょう。
ここでは私に続いてください。」
ミドリミチはホワイトボードを消し、貼った紙も外した後、ボード全体を覆うほどの大きな紙を貼り出しました。
「ではみなさん、この紙に書いてあることを大きな声で読みます。
いいですね?」
ミドリミチはこれまでにない大きな声で、
「私は、正しい者たちが幸せになれる世界を作りたい!」
その声に続いて会場の全員が叫ぶように続きました。
「わたしは正しい者たちが幸せになれる世界を作りたい!!」
「私は、私利私欲のために嘘を垂れ流し、真実を隠蔽するものを倒す!」
「わたしは私利私欲のために嘘を垂れ流し真実を隠蔽するものを倒す!!」
「私は、同調圧力に屈してマスクをしたり、非科学的で非人間的な
毒物の接種などしないし、絶対に子どもたちには打たせない!」
「わたしは同調圧力に屈してマスクをしたり非科学的で非人間的な毒物の
接種などしないし絶対に子どもたちには打たせない!!」
「私は、獣ではない!人を獣として扱うことを許さない!
獣のように管理することを認めない!」
「わたしは獣ではない!!人を獣として扱うことを許さない!!
獣のように管理することを認めない!!」
「私は、正しいものだけを信じる!
そして自分をどこまでも清く正しく賢くするために努力をする!」
「わたしは正しいものだけを信じる!!
そして自分をどこまでも清く正しく賢くするために努力をする!!」
「私は、悪魔崇拝を破壊する!
カルト宗教を破壊する!
これに従う敵を全て倒す!」
「わたしは悪魔崇拝を破壊する!!
カルト宗教を破壊する!!
これに従う敵を全て倒す!!」
もし入り口が搬入のために開いていなかったら、窓ガラスが割れていたのではないかと思うほど、凄まじい声が場内に響き渡りました。
「この『思い』はあくまで一例です。
これからは皆さん一人一人がそれぞれの思いを見つけ、
そしてそれを毎日告げて下さい。
心の中でも結構ですし声に出しても結構です。
これが皆さんの力になります。
悪がはるか昔から存在するように、
この思いの力もはるか昔から存在し様々な呼び名があるものです。
『思い』であり『願い』であり『祈り』というものです。」
聴衆は一斉に立ち上がり割れんばかりの拍手が巻き起こりました。
「ありがとう。
皆さんならきっと私の若かった時代のように
悪や嘘が世界を支配することは無いでしょう。
今日はとても素晴らしい日でした。
皆さん本当にありがとう。これで講演は終わりになります。
皆さんお帰りの際にはお土産がありますのでお受け取り下さい。
さきほどお話した本当のマスクを人数分用意しています。
ツバの長いキャップとノイズキャンセリングイヤホン、
それとチープですがタフで機能性に優れた腕時計を用意しています。
色やカタチ、サイズ等はお好みでどうぞ。」
聴衆は皆一斉に出入り口に用意されたお土産コーナーへと走りだしお祭りのように賑やかになりました。
ミドリミチはその姿を満足気に眺めながらアイスティーを飲んでいると、
特殊部隊の責任者がやってきて彼に感謝の言葉をかけました。
「ありがとう。私の方こそあなたたちへの感謝でいっぱいです。
無事安全に講演を終えることが出来たのはあなた達のおかげですから。」
2人は強く握手を交わしました。
そして責任者はミドリミチを自分たちの車両で送ることを提案しましたが、彼は丁重に断りました。
「私はいつもどおりに自分のオートバイで帰りますよ。
それよりも彼らを安全に家まで送って上げて下さい。
これからの未来を担うものたちを。」
「ご安心下さい。彼らを送る手配はもう出来ています。」
壇上で慈しむように、2人は若い聴衆たちの背中を見つめました。
彼らも来年は小学生になります。大人になっていくのです。
かつての古い時代であったなら通う学校が悪に支配されていましたから、
真実を知る大人たちは気が気ではありませんでしたが、今のこの新しい時代では心から素直に彼らの成長を喜べたのでした。
ミドリミチは駐輪場でジェット型ヘルメットを被りエンジンをかけました。
ミラーには貰ったばかりの、色とりどりのキャップを被った子どもたちが物々しいバスに我先にと乗り込んでいました。
「ミドリミチさん! さあ帰りましょう!」
責任者は装甲車の窓から叫びました。
その声を聞いたミドリミチも頷いて走り出しました。
彼の走るバイクの前後は護衛として装甲車やパトカーが囲んでおり、
上空には急襲用ヘリと攻撃ヘリが飛び交っています。
本日、ミドリミチの講演は無事に終わりました。
しかし彼はこれからも様々なところで世界の真実を伝え続けていくのです。
決して若くない年齢ですが、これから彼は走り続けます。
相棒である年代物の52ccにボアアップしたタウンメイトと共に。
【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5
「今から数年後・・・」第11章 まとめ記事
おわり
第12章につづく
【ほかにはこちらも】
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