【短編小説】MISSING 3.どこにもいない人、Nowhere Man
遅い梅雨が始まった。今日も朝からざあざあと雨が降り出した。翼が濡れるとこんなに重いとは知らなかった。羽が乾く間もなく雨が降る。雨が止んでいる少しの間も、空気は湿気を含んでいる。体が弱ってきていた。
そのまま屋上に身を潜めて一日を過ごしたが、結局家に帰ることはできなかった。家には黄色い帯が張回され、警察が最低一人、常にその場を監視していた。住民たちは僕が人を殺したと言った。誰かは僕が行方不明になったと言った。また違う誰かは僕が自殺したとも言った。それもそうで、ここ数か月間僕を見