【短編小説シリーズ】セラセラハウス プロローグ:引っ越し
プロローグ
引っ越し駅からまっすぐ4分ほど歩いて、右に曲がって4分ほど歩くと、承和色(そがいろ)の3階建てのマンションが現れる。路地から見える3階の角部屋の窓は、今日もオレンジ色の光を発している。この暗い地球の街角に光る四角のお月様のように。18時32分。帰宅時間が早いのか、在宅勤務が続いているのか、毎日この時間その窓はオレンジ色に染まっている。301号室。当然のことながら誰が住んでいるかは分からないけど、遠くから見えるその光に、「あ、うちに着いた」と思う住民も結構いるらしい