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短編小説 「これから、海へ行こ」


「学校、終わったし、これから海行こうよ」高校生のヨシトが唐突に言う。

「えっなんで?まだ四月だよ」同級生のハルカが言う。

「いいじゃん。海はいつ行っても、いいもんじゃん」ヨシトが言う。

「帰りにクレープ食べるの付き合うならいいよ」ハルカが言う。

「それでいいよ行こう」

 一緒にクレープを食べるのを条件にヨシトはハルカと海へ行く事に決まった。

 電車に揺られる事三十分。二人は海岸近くの駅で下車。

「なにか喋ってよ」ハルカが言う。

「早く海見たいね」ヨシトが言う。

「やっぱり黙ってて」

「進路決まった?」

「大学に進学だけど。そっちは?」

「同じ大学に進学」

「そう。走ろ!」

 ハルカが急に海岸まで走り出した。

「待ってよ!」

「嫌だ」

 二人は海岸まで二百メートルの距離を全速力で走って行った。

「ハァハァ、ハァハァ〜苦し〜」

「これぐらいで息あがっちゃうなんて、もっと運動した方がいいんじゃない?」

「うるさい」

「海どころじゃなくなったね」

「走るからじゃんか」

「休もう」

 二人は浜辺に座り込んだ。

「キレイだね」ハルカが言った。

「そう……だね」

「まだ四月だから、ちょっと寒いね」

「うん」

「今度は夏に来ようか」

「夏前にもう何回か来よう」

「うん、じゃあそうしよう」

 二人は三十分程、海を見ながら話を続けた。

「そろそろ、クレープ食べに行こう。私もうお腹すいた」

「いいよ」


 終わり。

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