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短編小説 「昼下がりの君へ〜赤い空の下、ダンとジュン」

前回のお話↓


昼食のタンパクサンドを食べ終え、庭でくつろぎながら、いつもの赤い空を眺めていると小さな黒い影が見えた。なんだろう、今回はなんだろう胸がうるさくなってきた。空を覗き込みながらそれが落ちてくるのを待った。昨日は「バンクボム」その前は「メモリーボム」今回のボムはなんだろう。プレゼントをもらうときはこんな感じなのかな。


次第に影はだんだん大きくなって、それともに静かになっていった。あれはダンの荷物だ。コンピューターでアニメのフィギュアやグッズを頼んだんだ。

「ダ〜ン!」叫べばすぐに駆けつけてくれるそれがダンだ。二階の窓が開く音が聞こえ、ひょいとダンが頭を出した。空を覗きこむダンはいつも嬉しそうな笑顔を浮かべる、今日もそうだった。ダンの頭が引っこんで、地響きのような音をたてながら階段を降りてきた。そして、裸足のまま庭に出てきた。ダンは僕の友達、僕の家族。背の低いちょっと太ったダン、アニメのTシャツがトレードマーク。

「ダン、今日はなにが届いたの」荷物に夢中のダンに聞いた。ダンはその場で駆け足で足踏みしながら頭を振っていた。

「チクショ〜、サテライトデリバリーの我慢できねぇとこはパラシュートが開いてからなんだよな」ダンは落ち着きなくひとりごとのように言った。僕の質問は聞こえてないみたいだった。でも、それがダンだ。僕もコンピューターでなにか頼んでみたいな……。ダンみたいにお金があれば僕も頼める。

トン、ようやく荷物が地面に降りたった。ダンがすぐに駆けつけて、包装をビリビリに破きはじめた。サテライトデリバリーの荷物の包装を破く早さはダンが一番。メモリーボムやバンクボムの容器がもっと簡単に開けられればきっと僕が一番だ。

「ようやくきたぜ」ダンはフィギュアの箱を空に見せつけるよに持ち上げた。「ジュン、見ろよゴジラだぜ」滅びた国の特撮怪獣のフィギュアを僕に見せた。

「それは飾るの」ダンはお気に入りフィギュアは飾って、大事なフィギュアは箱にしまっていた。ダンが好きなフィギュアやアニメはすこしは好きだ。すこし好きのなかでゴジラは一番好きだった。

「いや〜、こいつは箱にしまっておくぜ。なんせこれはレアモノだからな」ダンはそう言って家の中に戻って行った。「ジュンには悪いがこいつは飾らねぇ」それでいい。それがダンだから。

「ねぇダン、僕もコンピューターでなにか頼んでみたい」なんでもいいんだ。そう、なんでもいい。毎週のフードデリバリー以外に、なにかが届く楽しみを僕も味わってみたい。だって、ダンはそれでいつも楽しそうにしているから。

「いいけど、なに頼むんだ」ダンは振り返って僕に言った。

「クレヨンかな」すぐに思いついたのがそれだった。

「いいぜ、何色のクレヨンだ」


青いクレヨンがいいな……、青い空を大きな画用紙に描きたい。赤い空になる前の青い空を描きたい。




時間を割いてくれてありがとうございました。

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