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短編小説 「昼下がりの君へ」


コトッ、昼食のタンパクサンドを食べ終え、庭でくつろいでいると、芝生に金属製の球体カプセルが降ってきた。見上げるといつもの赤い空が見え、飽きもせず太陽が輝いていた。僕が産まれる前は空は青かったらしい、とはいえ、金属が落ちてくるのは珍しいことだった。


こういう時は、ダンの出番だ。ダンは僕の友達、そして、僕の家族。ダンは家の二階全フロアを自分の部屋として使っていた。僕の部屋は一階のこの庭に出入りしやすいダイニングだった。狭くはない、絵を描ける32インチのテーブルが置けているから。

「ダ〜ン!」叫べばすぐに駆けつけてくれるそれがダンだ。ダンの部屋のドアが勢いよく閉まる音が聞こえ、地響きのような音をたてながら階段を降りてくる。

「どうしたジュン」棒付きキャンディを咥えた、背の低いちょっと太ったダン。アニメのTシャツがダンのトレードマーク。

「これを見てよ」僕は金属の球体を指差した。

「メモリーボムじゃないか」どうやら、ダンは球体のことを知っていたようだ。『メモリーボム』ダンはそう言った、ボムーーボムは爆弾のことだ、生物や物を破壊する危険な物、指先が震え寒気がしてきた。ダンは爆弾に近づいて触ろうとした。

「触っちゃダメだよ」僕の叫び声にダンはピックっとして、僕の顔を見てキョトンとした。

「ジュンこれはデジタル音声や手紙を保管する容器だ。爆発なんかしねぇよ」ダンは笑いながら言った。「ビビリなジュンは見飽きちまったよ」ダンはメモリーボムを手に取ると、なにかぶつぶつ言いながらそれを観察していた。

「本当に平気なの」僕はダンが爆破されないか指を咥えながら見ていた。

「これは、衛星メモリーボムみたいだ。初期型だからおそらく中身は手紙だ」ダンはメモリーボムをひねって開けようとしたが、顔が真っ赤になるだけだった。「開かねぇよ。しかたねぇ壊すか」ダンは倉庫からノコギリを持ってきて開けようと試みた。

「手を切らないでよ」ダン一人で切ればいいのに球体だから僕が押さえることになった。

「しっかり押さえちょれ」金属の粉が僕の手にこぼれた。ダンは夢中でノコギリを動かしていた。「手紙は平気なの」中身が心配だった。空から降ってきた球体はボムと名前がついていたけど、爆弾じゃないとわかれば中身が気になる。

「平気さ。さぁもう少しだ」

中身が見えた、白い物が見える。僕の手には金属の粉がたくさん溜まっていた。

ついに、ボムから手紙を取り出すことができた。

「なんて書いてあるの、ねぇなんて書いてあるの」僕は文字を読むことができないから、ダンに読んでもらうしかなかった。

「読めねぇこれ、日本語だぞ」ダンは僕に手紙を見せた。確かに文字みたいな記号が書かれていた。だけどその文字は僕にも読めなかった。

「ダンなんで滅んだ国の手紙が空から降ってきたの」夢中で手紙を読むダンに聞いた。

「きっと決戦前に打ち上げたんだ。タイマーで指定した日に落ちるようにしたんだ」ダンはそう言って家の中に戻っていった。僕もダンの後を追いかけてダンの部屋に向かった。「ダン読めない手紙をどうするの」ダンはなにも答えてくれなかった。

ダンの部屋はアニメのフィギュアやポスターで埋め尽くされていた。ダンは机の上に手紙を置いて写真を一枚撮った。

「手紙をコンピュータで翻訳しよう」ダンはイスに座ってコンピュータをいじりはじめた。

「ねぇなんて書いてあるの」

「そうあせるな。すぐに終わる」

ダンの言う通り翻訳の結果がすぐに画面に映し出された。

ダンはそれを読んで僕に教えてくれた。


そのあと、ダンと僕は夜空に大きな青い花火を打ち上げた。



時間を割いてくれてありがとうございました。


続きを書いてみました。
ぜひ読んでください。
タイトルは「昼下がりの君へ〜ダンとジュン」です。

さらに続き。

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