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短編小説 「男2人のホワイトクリスマス」


空が灰色に染まり雪が降るホワイトクリスマス。僕、ユメトとカズキはカズキの実家の庭で体に雪がどれだけ積もるか確かめていた。


「頭に積もってっか?」とカズキが鼻をすすりながら言った。頭に目を向けると、僕の頭から雪が滑り落ちた。カズキのアフロ頭に1センチくらいの雪が積もっている。

「全然積もってない」とアフロに雪が積もっている絵をもう少し見ていたいから嘘をついた。嘘をついても気づかないはず。この間、ペットボトルのキャップを5個乗せて置いてそのまま半日を過ごした頭だから。

「積もってないのか?ユメトの頭には結構積もってたぞ」と僕の頭を指差しながら言った。

「アフロだと積もりにくいんだよ」とまた嘘をついた。


僕らはあと3日で24歳。いい大人がこんな子供みたいな遊びをするなんて正直……楽しい。もう少しだけ遊んでいよう。スキーウェアを着込んでいるから防寒対策もバッチリ。遊びはこれから。


「なぁユメト、鳥ってなんであんな自由に飛べてるんだ?」鳥の姿は見えなかったが、カズキの目は遠くを見つめているようだった。

「急にどうした?」

カズキは少し考えてから答えた。

「さっき、木の上にカラスがいたんだ。雪の中でも、あいつらは何でもないように飛んで行ける。それが羨ましくて、鳥は自由でいいなって思ったんだ」

僕からしたらカズキのほうがよっぽど自由だ。「外に出て雪がどれだけ積もるか試そう」と言い出したんだから。それなのに鳥のほうが自由に見えるだなんて、どれだけ自由なんだ。

「ああ見えて生きるのに必死なんだよ」と僕は見えもしない鳥を思い浮かべながら続けた。

「飛ぶのはエサを探したり、子孫を残すためにパートナーを見つけるために飛んでいるんだ。少なくとも、エサを探したり、子孫を残そうとしていない、ただ雪を浴びている僕よりかは必死こいて生きている」

「へぇ〜」とカズキが小さくつぶやいた。カズキの目は一瞬考え込むように見えて、少し間を空けてからカズキはゆっくりと空を見上げた後、僕の方に顔を向けて微笑んだ。

「ユメトはいつも面白いことを考えるよな」

「カズキには負けるよ。雪がどれだけ積もるか、試そうだなんて思いつかないよ」

「そうか」とカズキは手を頭に伸ばした。カズキのアフロ頭には分厚い雪の山が積もりに積もっていた。

「体にも庭にもたくさん雪が積もったし、雪合戦でもするか?」とカズキは頭の雪を丸めて作った雪玉を見せて言った。

「やろう」と僕は頷いた。

それから僕らは疲れ切るまで雪合戦を楽しみ、雪だるまも作って、男2人のホワイトクリスマスをはしゃぎまくった。

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