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書評:新卒デザイナーのための本9冊

こんにちは。IDLの川原です。

だんだんと暖かくなり、春が近づいてきました。4月から新人デザイナーとして働かれる皆様、おめでとうございます。

目の前には、ならなければいけない姿と自分の現状との、大きなギャップがあると思います。本稿では、学生からデザイナーになるための処方箋(?)として、9冊の書籍をご紹介します。通りすがりの本屋のディスプレイに目がとまったくらいの距離感で、気になるタイトルについて拾い読みしてください。

ご紹介するのは、私が昨年4月にIDLのアルバイトから新卒デザイナーとなった際にIDListsからプレゼントとしていただいた9冊です。

1 コンヴィヴィアリティのための道具(筑摩書房)

著:イヴァン・イリイチ
木継さんからいただいた、道具について考えるための一冊。
私たちは大抵、道具を「便利か」「儲かるか」の観点で評価しますが、この本は「ある種の人間性を損なわないか」という観点からの評価を提案します。
デザイナーとして生き生きとした社会を作りたいあなたのための、コンパスになるはずです。

2 考具(CCCメディアハウス)

著:加藤昌治
山下さんからいただいた、新人に寄り添う一冊。
考具すなわち思考のための道具として、フレームワークやアクティビティを紹介してくれます。
デザインのプロジェクトは即興的です。この本の言葉を借りれば、既存の考具を改造して、組み合わせて活用することが多いです。基本的な考具について知ることは、このような応用のための第一歩となるでしょう。

3 人生で大切なたった一つのこと(海龍社)

著:ジョージ・ソーンダーズ
白井さんからいただいた、人生の羅針盤的な一冊。
大学の卒業式に行われた8分間のスピーチを、子供の絵本ほどの文量にまとめた本です。説教くさくなく、読者の心にメッセージを届ける力をもっています。
「デザイナーとして成功すること」より大切な目標を見つけられます。

4 蘇る変態(マガジンハウス)

著:星野源
阿部さんからいただいた、イマジネーション渦巻く一冊。
星野源の自伝で、彼の脳内で渦巻く変態チックな妄想が記録されています。思春期的な妄想を大人が共感できるように仕立てあげるのは、彼の才能でしょうか?
創造的仕事のトップランナーの頭の中を知りたいあなたに。(下ネタだらけですが)

5 ひかりぼっち(イースト・プレス)

著:マヒトゥ・ザ・ピーポー
髙塚さんからいただいた、ロックな一冊。
GEZANというロックバンドのフロントマンによる自伝です。孤独を抱えながら、世界を駆けまわり、自分にとって大切なものを探す・つくる生き様が綴られます。
そんな創造のスタイルに共感したあなたに。

6 くる日もくる日もコロナのマンガ(KADOKAWA)

著:しりあがり寿
菊石さんからいただいた、批判的でユーモアある一冊。
コロナパンデミックが始まった当時の、朝日新聞連載の4コマ漫画をまとめた本です。
漫画による風刺とは社会の「こりをほぐす」営みのようで、その意味でデザイナーと似ています。他の業界からインスピレーションを得たいあなたに。

7 美女と野獣(Little Simon)

野坂さんからいただいた、飛び出す絵本(!)。
まさかこの年齢になって絵本を楽しめるとは思っていませんでした。本でここまでできるのか、と驚かされる仕掛けが満載で、「おおー!」と声が出てしまいます。
愛の溢れるイノベーションに触れたいあなたに。

8 水と礫(河出書房新社 )

著:藤原無雨
遠藤さんからいただいた、内省的な一冊。
不思議な読書体験を得られる本で、事前情報なく読むのがベストです。折角なので、私もあまり説明しません。
新しい経験を探しているあなたに。

9 好き好き大好き、超愛してる(講談社)

著:舞城王太郎
酒井さんからいただいた、超現実的な一冊。
スピード感と即物的な刺激のある現代小説で、なんだかTiktokの時代という感覚を受けましたが、実際には10年前に書かれた小説というから不思議です。
現代の感性について考えたいあなたに。

「読まずに避けてきた本」を知れば、その後の仕事が変わる

色々とご紹介いたしましたが、最後に視点を一段上げて、私の新卒一年目の生活において読書がどれほどの重要性を持ったのかを記します。個人のケースですが、もしかすると何か示唆があるかもしれません。

知識の形成という観点で言えば、本は明らかに有用でした。デザインを題材とした書籍はたくさんあり、仕事に必要なことは大抵本に書かれています。

他方、人格形成の観点で言えば、ここ一年、本から見つけた言葉よりも、上司やクライアントが発した言葉の方がよほど強烈に刻まれています。デザイナーとしての自分を形成する言葉は、結局ほとんど本ではなく周囲の人間から与えられました。しかし読書は違った形で私の一年目を支えました。

私は本を読みすぎるタイプで、入社してからも多分200冊以上は読みました(社会や哲学に関する新書や古典を読んでいました)。この読書を今振り返ると、私のデザイナー一年目の人格形成に影響したのは、知識というより、読まずに避けてきた本を読む経験だったと思います。

新しい環境は多様な刺激に満ちていました。新人の学習とは、一面では、この環境に、弟子として自分を没入させてゆくことのように思えます。師匠からかけられる言葉は全て素直に受け入れる必要があるとしみじみ感じました。そう考えると、かけられる言葉の一部を聞かずに避けることは、仕事に馴染んでゆくことを幾らか遅らせていると言えるはずです。

避ける本がわかれば避けている師匠の言葉もわかります。僕の場合は語学本を執拗に避けていました。語学アレルギーです。しかし勇気を出して語学本を一冊読み切ってみると、アレルギーは改善しました。その直後に、「そういえばあの時上司が、良い英語論文が集まるサイトを勧めてくれて僕は聞かないふりをしたが、やはり読んでみるべきかな」というふうに、かけられた言葉を時間差で受け入れられたりします。

もちろん環境に没入しきると健康を損なってしまうような場合や、望む自分になれないような場合には、そうすべきでないと思います。しかしもし、あなたが環境に恵まれたと思うなら、それを大いに活用すべきです。この文章がそのために役立てば幸いです。


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