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吾輩はライカである

吾輩はライカである。作例はまだない。

どこで生まれたかはとんと見当がつかぬ。何でも薄暗くてさっぱりとした防湿庫でニャーニャー泣いていたことだけは記憶している。吾輩はここで初めてすぎっちというものを見た。しかもあとで聞くとそれはカメオタという人間の中で一番変態な種族であったそうだ。このすぎっちというのは時々我々を捕まえてシャッターを押すという話である。しかしその当時は何という考えもなかったから別段恐ろしいとも思わなかった。ただ彼の掌に載せられてスーッと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ち着いてすぎっちの顔を見たのがいわゆるカメオタというものの見始めであろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛を持って装飾されるべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶だ。その後ライカにもだいぶ会ったがこんなかたわには一度も出会したことがない。のみならず顔の真ん中が突起している。そうしてその穴の中から時々フガフガと言っている。どうも咽せぽくて実に弱った。これがカメオタが興奮するフガフガというものであることはようやくこの頃知った。

ふと気がついて見るとすぎっちはいない。たくさんおった兄弟が一匹も見えぬ。肝心の母親さえ姿を隠してしまった。その上今までのところとは違って無暗に明るい。シャッターを明けていられぬくらいだ。はてな何でも様子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。吾輩はカメラバックの中から急に笹原の中へ捨てられたのである。



続きがあるかは分からない。

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