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〈7月の悲歌〉


夕刻

風が落ちて


天空を占拠する

紅(くれない)


上は

羽根を持つものの


下は

多足のものの


王国




はるか銀河にかかる

昔日の虹を


栄光のように

勘違いした

こともあった


記憶は苦く

いまだに

灰色の苔のように

若い舌を覆う


宇宙(そら)の

真空で

震える

きみの蒼い


恋人も知らない

海辺の

コテージに


千泊の予約を

入れたあの日


細々と

続く

生存の約束と


いつかもたらされる

死の認知に



髑髏の

うつむいた

顔が


黒目だけの

眼窩を

いま

ゆっくりと

上げる



死なないで

サント


砂のような

生涯でも


夏の果実の

ような

甘く
切ない

思い出もある


死なないでサント

その一心に

息を詰めながら


一迅の

風になって


この世紀を

渡る










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