詩〈せいじん 壱〉
うずくのは
胸の奥所なのか
それとも
鳩尾の切れ目なのか
下腹からせり上がってくる
ものは押さえずともよい
いずれ後継もなく
枯れ草のように
燃え落ちる身体なのだ
夢の廃墟に続く道の
黒ずんだ石畳を踏む
甲高の白い足
踵に入る
融雪期のあかぎれのように
遥か足下の
武蔵野ロームを
迷走する
姶良火山の
光る灰を
〈蹴散らし〉
固い生活を版築した
2万4千年の
いま
その先端で
愛憎の劇を刻板する
濃い墨を
摺っている
柔らかい
胸と鳩尾の
在り処を
さぐり
次第に
深く
荒くなっていく
呼吸を
耐える
〈未詳の〉せいじん
祭りの後の
ように
遥か沖まで
寒い潮が
ひいてゆく
がらんどうの
この白昼
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