医療現場の清浄と滅菌 Produced by(株)名優

「医療機器の再生処理に携わる方は、本書をマスターすることで自信と誇りをもって業務に邁進…

医療現場の清浄と滅菌 Produced by(株)名優

「医療機器の再生処理に携わる方は、本書をマスターすることで自信と誇りをもって業務に邁進できるはず」と㈱名優 代表が確信し、翻訳出版した渾身の1冊です。コロナ禍のこの時代、1人でも多くの方が本書により感染管理の知識を身に着けていただくことが焦眉の急と考え、同書の一部を公開。

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医療現場の清浄と滅菌 もくじ

推薦のことば / 監修者序文 /著者序文 Part1 目に見えない生命体1.はじめに 2.病気という「謎」(ミステール) 3.細胞:生命の構成単位 4.微生物学:微生物の研究 5.体と病魔との闘い Part2 感染拡大の予防6.清浄(洗浄)、消毒、滅菌、衛星、無菌法による感染予防 7.バイオバーデン(生物学的負担)を減少させる 8.滅菌前の洗浄 9.様々な滅菌法 Part3 高圧蒸気滅菌10.滅菌剤としての蒸気 11.ベーシックな蒸気滅菌器 12.管腔

    • 14.滅菌の国際規格【最終章】

      他の自然科学分野と同様、滅菌工程についての知識もかつてはとても限られていました。しかし、滅菌すべき物品の特徴や、それらが相互に影響し合う滅菌工程の研究が進むにつれ、多様化した物品をそれまでの方法で滅菌するのは適切ではないことが明らかになってきました。蒸気滅菌工程で問題を起こすのが主に空気の残留であること、ポーラス器材、管腔器材などは滅菌が難しいことなどがわかり、また滅菌物が濡れたままであることが多くあって、今まで述べてきたような問題の解決法が編み出されてきました。 また、後に

      • 13. 工程管理

        本章では、滅菌器の工程管理方法をさらに詳しく学んでゆきます。 この工程管理技術は、原始的な手動式の制御法から、電気機械式の制御法、そして現在の滅菌器で用いられる高度なコンピュータ制御システムへと発展を遂げていきました。 13.1 作業者の役割手動式オートクレーブの作業者は、滅菌に必要な温度と圧力を正しく理解しています。また、プレバキューム、滅菌と乾燥に必要な時間、各工程の順序ももちろん把握しています。平たく言えば、作業者は「滅菌工程を理解している」ということです。この知識に

        • 12. 管腔(ホロー)器材・ポーラス(多孔性)器材の滅菌

          医療の実務では繊維製品を含んだ滅菌物が数多く用いられ、手術室で使われる手術着やドレープなどは包装、滅菌されます。 また、カテーテル、チューブ、針、スコープなど管腔(ホロー)器材も数多くあり、新しい製品では低侵襲手術(MIS)に使用されるものなど、特に長い管腔構造をもつ機器も存在します。 これらの機器はどれも「内部に空気を含む」という共通点をもっており、この空気の存在が機器の滅菌を困難にしています。 本章では、こうした機器をどのように効率的に滅菌するかを学習します。 12.1

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        記事

          11. ベーシックな蒸気滅菌器

          近年の蒸気滅菌器は、ISOやCENに規定される多くの規格に準拠しなければなりません。しかし、そのシステムの中心を成しているのは、旧型と共通の基本パーツです。 本章では、滅菌器の基本型がどのように作られていったのか、そしてそれが如何に近年中央材料室で運用されているコンピュータ式自動制御のオートクレーブに進化していったのかを順番に学んでいきましょう。 本章では、手動式のオートクレーブの基本型について学びます。その多くは、遠隔地や、電力や水の供給が全くない、あるいは充分でない場所で

          10.滅菌剤としての蒸気

          本章では、滅菌剤としての蒸気についてより詳しく学習します。蒸気滅菌工程を理解するには、「圧力・熱・温度とは何か?」という基礎物理を少々おさらいしなければなりません。これらの用語は蒸気滅菌工程を理解するためのキーワードになるからです。 これらを充分理解しているのであれば、本章は読み飛ばしても構いませんが、その場合でも復習することで新たな発見があるかもしれません。 それでは、工程そのものを詳しく見ていきましょう。そもそも、なぜ蒸気は滅菌剤として優れているのでしょうか? どのよう

          9. さまざまな滅菌法

          医療機関では、多種多様な器材が治療や手術に使用されます。感染のリスクが高い部位で使用される器材は清潔・無菌でなければなりません。蒸気滅菌は、現在ではほとんどの医療機器にとって最も一般的な方法になっていますが、器材はそれぞれが異なる性質を持っていることに注意が必要です。 たとえば、綿製品・ゴム製品は乾熱滅菌にかけると傷んでしまい、一部の光学機器は蒸気の湿りに耐性がありません。医療機器には、熱に弱いプラスチック製部品(非耐熱性素材)を含んでいるものも多くあります。 これらの素

          8. 滅菌前の洗浄

          8.1 序論 6.2では、なぜ滅菌前に洗浄を行うことが重要であるかを学びました。本章では、洗浄すべき「汚れ」とは何なのかについて、また中材での実際の洗浄業務、そして洗浄工程のメカニズムについてより詳しく学習していきます。その洗浄に適した特性から、水は洗浄工程において重要な役割を果たします。水質の確保は重要な要素であるため、水質改善の方法も記載しました。また、洗浄を適切に行うには水の力のみでは不充分なので、さまざまな化学物質で洗浄効果を高める必要があります。そこで、洗浄の化学作

          7. バイオバーデン(生物学的負荷)を減少させる

          医療機関で感染拡大を予防するためには清浄、洗浄、消毒、滅菌が必要なことをこれまで学んできました。医療器材が清潔、消毒済み、滅菌済みのいずれの状態かということは、その器材の清浄レベルの目安となります。 この章では、バイオバーデンを減らすために用いられる物理的、化学的手法について見ていきます。微生物の生存には何が必要なのか、死滅する際に何が生じているのかについても触れることにします。最後に「消毒済み」「滅菌済み」の必要条件についてより詳しく定義していきます。 7.1 バイオバー

          7. バイオバーデン(生物学的負荷)を減少させる

          6.清浄(洗浄)、消毒、滅菌、衛生、無菌法による感染予防

          PART1で、医療施設では、病気の蔓延を防ぐためにあらゆる手を尽くすべきことを学んできました。多くの病気を惹き起こしているのは実は小さな生物である事実を知り、そうした生物が人体に害を及ぼし、病を蔓延させることを防ぐヒントを得てきました。 例をあげれば、蛇などの危険な動物に襲われた際に、我々はそれらを退治しようとします。追い払い、あわよくば殺してしまいます。このような行動は、あらゆる小さな生物=微生物に対しても当てはまります。 清浄(洗浄)、消毒、滅菌、そして無菌法はすべて、細

          6.清浄(洗浄)、消毒、滅菌、衛生、無菌法による感染予防

          5. 体と病魔との闘い

          本章では、健康を維持するために体で起こる争闘について述べます。体の防御機能では対処しきれず、それゆえに病気になることもあります。病気が人から人へ、ものから人へ拡がってゆくのがわかることでしょう。病院や医療施設は、そもそも健康を取り戻すところですが、同時に感染のリスクが高いところでもあるため、感染予防のためにはあらゆる手を尽くさなければなりません。 5.1 「永住者」と「短期滞在者」:常在菌と通過菌 体表や体内に厖大(ぼうだい)な微生物が生存していることは、表4.1で見たとお

          4. 微生物学:微生物の研究

          前章で学んだとおり、世界には大きな生物だけでなく、数えきれないほど多くの種類の微生物が存在することがわかってきました。事実、目に見える大きな生物よりも、微生物の種類の方が多いのです。顕微鏡などを用いそれらをつぶさに調べると、微生物についてより多くのことがわかります。 微生物の研究は微生物学と呼ばれます。微生物は微小ですが、人間の生命に大きな影響を与え、中には人間の生存に欠かせないものも存在します。胃の中には食べ物の消化を助ける菌が数多く存在し、パンやビールの発酵には微生物の

          資料まとめ

          参考資料をまとめます ●資料1● 一般的な細菌とその特徴 ≪表中の記号の見方≫ ●グラム染色 + = 陽性 - = 陰性 ●芽胞8(がほう) + = 芽胞を形成する細菌 - = 芽胞を形成しない細菌 ●酸素 + = 好気性(生存に酸素を必要とする) - = 嫌気性(生存に酸素を必要としない) +/- = 通性嫌気性(好気的・嫌気的環境どちらでも生存する) μ+ =微好気性(生存に酸素を必要とするが、大気中の酸素濃度の20%よりも低い酸素でも生存できる) ●形状 (画

          「医療現場の清浄と滅菌」誕生の逸話

          私が、「医療現場の清浄と滅菌」(原著名:Sterilization of medical supplies by steam)を知ったのは、2010年11月、ドイツ、デュッセルドルフで開催していたMEDICA会場でした。 著者であるJanさん(Jan Huijs氏)があるメーカーのブースに自著のPRに来ていたところに行き合わせたのです。 Janさんの熱弁を隣で耳にしていると、本の内容がとても気になり、その場で思わず一冊35ユーロで本人から購入してしまったのでした。 ホテル

          「医療現場の清浄と滅菌」誕生の逸話

          3.細胞:生命の構成単位

          どんな生物でもじっくり観察すると、しっかりと造り上げられた設計に基づいて、精緻に形づくられていることがよくわかります。 3.1 細胞、組織、器官、そして生物 私たちは、たくさんの人間と共に生きています。また、たとえば犬、山羊、牛、草木、その他の多くの生物も人間と共生しています。その中には象や巨木のように大きな生物もいれば、ちっぽけな虫のような、小さな生物もいます。 建築を例に取ってみましょう。建物を作るとき、ひとつひとつは小さなレンガでも、組み合わせれば壮大な建物を築き

          2.病気という「謎」(ミステール)

          人類史の薄明から、人は幾たびとなく病に苦しめられてきました。得体のしれない力がどこからともなく肉体を支配し、私たちの体を蝕むのです。膿(うみ)爛(ただ)れた大きなできもの、激しい疼痛(とうつう)、高熱などをもたらすこともあります。どんなに屈強な人でも、天然痘、ペスト、マラリア、エボラ熱などのような強力な病に冒されれば、命を落とすこともあります。それゆえに、長い歳月にわたって、病気とは人間にとって解くことのできない大きな謎であったのです。人はなぜ病気にかかるのか。病や死をもたら

          2.病気という「謎」(ミステール)