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ロンドンのスーパー・ダイバーシティ

数年前、ロンドンに留学して最も驚いたのは、多種多様な人種・民族があふれているということです。

ロンドン居住者の民族構成

ロンドンに住んでいる人々のエスニック・グループについて、イギリスの国政調査(2011年)よりデータを抜き出し、グラフにしてみました。

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データ元:Census 2011 (Office for National Statistics 2011)

まず驚いたのは、ロンドンの総人口が800万人強ということ。あれ、首都なのに意外と少ない? ロンドンって大都市のイメージがあるのに?
ちなみに、同じ年の東京の人口は1300万人強! つまり、ロンドンの約1.6倍!。日本の大都市の人口と比較すると、大阪(880万人)と愛知(740万人)の中間くらいです。


白人「イギリス人」が少ない

データでみると白人人口は全体の6割にのぼりますが、「白人イギリス人(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの出身者)」が全体の45%しかいないのが分かります。したがってロンドンでは、日本人にとってのステレオタイプの「白人イギリス人」に囲まれて暮らすことはありません。そんな多種多様な人種や民族が暮らすロンドンは、イギリスの中でもかなり特異な街なようです。私が出会ったイギリス人も複数人が「ロンドンはイギリスではない」と言っていました。イギリスは街によって民族構成に特徴があります。インド人が多い、とか。ですので、イギリス留学を考えている方は留学先の街を選ぶ際に、民族構成のデータなども一度見てみると良いかもしれません。

なんて書いていますが、私自身はロンドンに行くまで、こんなに多くの人種や民族が暮らしているなんて知りませんでした。勝手に白人イギリス人ばかりをイメージしていたので、留学当初は驚きました。だけれどたくさんの人々と出会い、様々な国や民族の文化を知ることができたので、結果的にロンドン留学は大正解だと思っています。何より、いろんな民族がいるおかげで、各国のレストランが充実しています。「マズイ」と言われるイギリス料理ですが、ロンドンではいろんな国の料理が食べられるので、「イギリス料理」を食べる必要がありません。


大英帝国のなごりが色濃く残る

ロンドンの民族構成で特徴的なのが、大英帝国時代の植民地からの移民が多いということです。もっとも多いのがインド・パキスタン系。大英帝国の最大の植民地だったインド帝国からの移民で、全体の1割弱を占めています。私が出会った中では、銀行員や寮のスタッフがインド系でした。あと、この地域からの留学生も多かったです。インド、パキスタンでは英語が公用語なので、留学生も流暢に英語を話します。彼らは独特の英語を話しますが、慣れれば割と聞き取りやすいです。

ちなみに、大英帝国の植民地は以下の通り。ピンク色の部分が大英帝国の支配下にあった地域です。当時の大英帝国の繁栄ぶりがよく分かります。これらの旧植民地の国々に対してイギリス人がどのような思いを抱いているのか分かりませんが、大学院の授業でイギリス人の先生が"sorry"という言葉を遣ったことはありました。学校教育の中でどのように教えられているのか興味があります。

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(画像引用元:イギリス帝国 - Wikipedia リンクからもっと大きな画像が見れます)


公立学校では300以上の言語が話されている

「ロンドンの公立学校では、300以上の言語が話されている」という言説を大学院の授業やニュースなどでよく耳にしました。これは、イギリスの教育省の"the Annual School Census"という調査によるもので、イギリス国民にとってもセンセーショナルな調査結果だったようです。「300以上!」と聞くとものすごい数のように感じますが、実際には英語や他の言語の「方言」も含まれているのでちょっと大げさです。

例えばこちらのテレグラフの記事。

イギリスの公立学校に通う生徒数は110万おり、方言も含め311もの言語が使われているとのこと。そしてロンドンをはじめ大都市圏では、英語を母語とする生徒がマイノリティになってきている地域もあるそうです。

また、ロンドンの教育大学からもっと詳しい分析が発表されています。

Language, ethnicity, and education in London (リンク先はPDF)

このレポートによると、ロンドンの公立学校の生徒のうち英語を話すのは60%。残り40%の生徒が40以上の言語(方言含めず)を話しているそうです。英語以外の言語のトップ3は、ベンガル語(バングラディッシュとインドの西ベンガル州で使用されている言語)、ウルドゥー語(パキスタン、北インドで使われている言語)、ソマリ語(アフリカ東部で使われている言語)とのこと。

ロンドンで生活をすると、いろんな国の人たちが自分の母語訛りの英語を話します。おかげで「日本語訛りの英語でも良いや!」と開き直ることができました。日本人は、私も含め、「正しい英語」や「ネイティブが使う表現」なんかにこだわりすぎる印象があります。(「あなたの英語はネイティブからするとこんなに変!」という書籍やテレビ番組、多いですよね。)だけれど様々な訛りの英語に日々ふれる中で、「通じれば良いや」と思うようになり、「そもそもネイティブって誰?」と考えるようになりました。例えば、ロンドンで生まれロンドンで育った、生粋の「ロンドンっ子」であるインド系3世のインド訛りの英語は、「ネイティブ」の英語と分類されるのだろうか? こんなことを日々考えさせられ、自分の「英語観」を大きく揺さぶられました。


以上、ロンドンのスーパー・ダイバーシティsuper diversityについてでした。日本のように同質性の高い社会に慣れていると、ロンドンの多民族・多文化・多言語はとても刺激的で面白かったです!

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