きみが産まれるまでの250日
※「仏」とは夫のことである。
2020年2月5日(水)
生理が3日遅れるという非常に珍しい事態。仏が出張なので、この間に確かめておこうとエムザ(東京で言うところのマルイ)の地下にある薬局で妊娠検査薬を買う。5種類もある中で、唯一「オムロン」という馴染み深いメーカー名を見つけて購入する。悪いことをしているわけではないのに、なぜかレジであたふたしてしまう。
2020年2月6日(木)
実は昨日の夜も検査薬を試してみたのだが、狙いが定まらず「尿をかけないでください」の部分にかけてしまう。私のような人間のために二個入りで販売しているのだ。
気を取り直して、紙コップを使用して検査薬を試してみる。案の定、ラインが現れた。思いの外、落ち着いている私。
U産婦人科に向かう。推定80歳くらいのおじいちゃん先生が出てきた。エコーで確かめるのかと思いきや、子宮ガン検診の時と同じように金属の棒を突っ込まれる。え、赤ちゃんいるかもしれないのに、こんなにグリグリしてOKなの?妊娠に気づくのが早すぎて、赤ちゃんが見えないので、1週間後に再度検診に。
仏に焼肉が食べたいと連絡して、焼肉屋で待ち合わせる。「赤ちゃんできた」と言ったら、「マジか」と言いながら目の前のタンをカピカピになるまで焼き続けていた。レアが好きなのに。
2020年2月8日(土)
大好きな先輩の誕生日を祝う。「妊娠したかも」と伝えると喜んでくれた。
無口で無愛想な大将が「妊娠が確実になったら、葉酸をとるといいですよ」とアドバイスをくれた。ツンデレ。
2020年2月14日(金)
会社の休みをとった仏と一緒に、再びU婦人科へ。今日は推定70歳のおばあちゃん先生。
今日は赤ちゃんの形も見えたが、心拍までは確認できず。
出がけに「妊娠中気をつけることは?」と尋ねると、「あなた、スモーカー?違ければいいわ。お酒はほどほどにね」と言われた。え、ほどほどでもダメでしょ。(あと、急なカタカナ)
2020年2月29日(土)
富山で出産するため、私が生まれた産婦人科に切り替える。「なぜこの病院を?」と聞かれ、「ここで私も生まれたんです!!」とキラキラした目で伝えたら、「あ、そうですか」と素っ気ないひとこと。私を取り上げてくれた人の息子なのに。親子でお世話になってるって、結構頻繁にあるのかな。
無事、心拍が確認できたが予定日まではわからず。
ちなみに、私が生まれた瞬間にお父さん先生は「お〜七夕生まれだから夕子ちゃんやな〜」と勝手に命名していたらしい。
2020年3月2日(月)
仏から、「腹巻および抱き枕は4月1日着で購入済み」との連絡あり。妊婦についていろんな情報を仕入れて、対応してくれているらしい。つくづく仏だなあと実感する。私よりもつわりについて詳しい。自称、「金沢で一番妊婦について詳しい”をのこ”」とのこと。
2020年3月11日(水)
仏がお腹に耳を当てて、「ポコポコいってる!」と言っていた。多分、私の腸が活発に動いてる音。
便秘と頻尿がひどい。
2020年3月18日(水)
取材のため東京に来た。北陸生活に慣れすぎて、どこへ行っても人との距離が近く感じる。みんなテレワークしてるのかと思ったら、満員電車は満員だし、レストランもまあまあ入ってる。
夜、シェアハウスで仏の写真を見ながら「あ〜仏かわいいなあ〜」と言ったら、一緒に住んでいる後輩に「それはひどいツワリだね」といわれた。本当にひどい後輩だ。
▲そのとき見ていた写真
2020年4月2日(木)
産婦人科に行くと必ず検尿を求められる。意気揚々と紙コップを持ってトイレに向かったのに、いつも通り放尿してしまった。慌てて最後の数滴だけ採取。ひとりでトイレで笑ってしまう。
▲こんな感じ
2020年4月29日(水)
まったくツワリがないまま安定期を迎えることに。別にお腹の中に異物間もないし、赤ちゃんがいるという実感がまったくない。仏にそれを伝えたら、「4ヶ月間も生理が来ないのに実感がないの?」って言われた。そういえばそうだ。生理の存在をすっかり忘れていた。
しばらくお腹に手を当てていたら、ちょっと動いた気がした。赤ん坊、もしくはガスが。
2020年5月7日(月)
数日前に、仏のご両親から腹帯が届いた。「戌の日」に腹帯をして神社にお参りする習慣があるらしい。戌の日を調べたら5月7日だった。ついでに満月なので「いい日」な気がしていた。
ところが今日、夜になるまで戌の日のことをすっかり忘れていた。20時に散歩がてら近くの神社まで歩いてお参り。おかげで写真が一枚もないよ。すまんね。
2020年5月10日(日)
やはり、気のせいではなくしっかり胎動だ。腸内ガスかもしれないとか思ってごめんよ。
2020年5月17日(日)
初めて夢に、生まれる子が出てきた。生まれたばかりなのに、「親に似てペチャパイにならなくてよかったわ〜」などと声をかけていた。
2020年5月18日(月)
5ヶ月検診に行ってきた。超音波検査中に先生が「次回の検診でこの股間ポイントを確認して、性別を判断します」と言われた。「股間ポイント」の表現の的確さがジワジワきて、何度も動画を見返している。
めちゃくちゃよく動いている。父親に似て、落ち着きがないなあ。
2020年5月21日(木)
最近はコロナの影響でもっぱらオンラインミーティングだ。
妊娠を報告した画面越しの相手から、「なんだか、優しい顔つきになったね」と言われたが、それはZOOMの「外見を補正する」機能の賜物であって、残念ながら母親としての自覚が芽生えたからではない。
2020年5月27日(水)
徐々に妊娠報告をしているが、その反応はパターンがあることがわかった。
①おめでとう
②予定日はいつ?
③男の子?女の子?
なんでそんなに性別を気にするんだろうと思ったが、まあよく考えたらそれくらいしか話すネタがないのだ。生まれてもいない子に「かわいいね」とも言えないし。まあ当然か。
2020年6月6日(土)
最近よく、夢をみる。今日の夢は、甘いジュースをたくさん飲んだら体内の浸透圧が変化して、赤ん坊が半分出てきてしまう夢だった。
慌ててもとに戻した。
2020年6月12日(金)
仏と、仏のお母さんと、「バースデイ(赤ちゃん用品店)」に出かけた。出産後にかかる費用を試算するためにおむつコーナーに行ったら、仏が「1日に2枚くらい使うとすると…」と言い出したので、引っ叩いておいた。
おむつ1日2枚は可哀想すぎる。
2020年6月16日(火)
コロナが少しずつ落ち着き、外で人にあう機会も増えてきたので妊娠を報告している。
カフェのママも、近所の料亭の女将さんも、寿司屋の大将も、クリーニング屋のおじちゃんおばちゃんも、みんなみんな生まれるのを楽しみに待ってくれているよ。
2020年6月18日(木)
胎動が激しく、頻繁に膀胱を蹴られるので尿意センサーがイカれてきた。
いっトイレ!おべんきで!にょーいどん!
2020年6月20日(土)
久しぶりに友達とご飯。
「無痛分娩にするの?普通分娩にするの?」と聞かれて、「普通分娩がどれほど痛いものなのか一回経験してみたいから普通分娩にする〜」と答えたら、「その考え方、めちゃいいね!!!!!」と褒められた。
「私は、なんで女だけ理不尽な痛みに耐えなければならないのだってずっと不公平さを嘆いてきたからさ…」と友達は続ける。なるほど確かに、仏が私の代わりにお尻の穴から産んでくれて、出産の痛みを感じなくて済むのであれば、ぜひお願いしたいところではある。
▲そのとき友達が撮ってくれた写真
2020年6月23日(火)
妊娠中の友人が、お腹を叩くとそれに反応してポコポコとお腹が蹴られる胎動動画をインスタにアップしていた。非常にかわいいので私も撮ってみたが、タイミング悪く、ただひたすらに自分のおっきいお腹をポコポコと叩く人の動画が撮れた。映えなさがすごい。ただの腹太鼓。
2020年6月28日(日)
母が「夢に赤ちゃんが出てきたよ〜!!かわいすぎてたくさんチューしちゃった!」と報告してきたので、虫歯がうつるから絶対にやめてくれと注意した。
2020年7月6日(火)
出産予定日まであと100日。きっとあっという間なんだろうなあ。
明日は28歳の誕生日。「誕生〜日は〜いつの日も〜〜〜〜雨〜〜〜〜♪」とわたしの中のサザンが歌っている。
2020年7月10日(金)
「〇〇だからきっと××だわ!」などと言った迷信めいた論説を各方面から展開されてきたので、メモしておく。
・お腹が出てるから男の子だわ!
・お腹が下の方に下がってるから男の子だわ!
・おっぱいが黒いと女の子。白いと男の子。
・足の裏と子宮の温度は一緒になるから、靴下履きなさい!
2020年7月12日(日)
人生初、59キロ台に突入だ!
え?58キロ台は経験したことがあったのかって?
アメリカに3ヶ月いただけで激太りして58kg超えてた話は内緒だぞ☆
2020年7月13日(月)
頻尿症状が出るようになってから、ほぼ毎日夢を見ている。正確にいうと、見た夢をしっかり覚えている。
だけど、小学生の時に見た「家の裏口からルージュラが入ってきて家族を襲う夢」ほど怖い夢にはまだ出会っていない。
2020年7月18日(土)
最近読んで、一番安心した記事。
「普通に力んで大丈夫です」の心強さたるや。
2020年7月31日(金)
病院で、逆子になっていますと初めて言われる。
体調が良いので調子に乗って、毎朝ヨガの「ダウンドッグのポーズ」をしていたからかもしれない…。
仏にそう伝えると「え、何そのポーズ?今場所の琴奨菊の立ち合い?」って言われた。調べたらめっちゃ似てた。
2020年8月4日(火)
育児本にも、川上未映子の「きみは赤ちゃん」にも、「妊娠中は肌がツヤッツヤになる!!!」と書いてあったが、一向にその気配がない。
2020年8月5日(水)
イボ、当社比300%!
首のうぶ毛、当社比500%!(=髭)
2020年8月6日(木)
仏から、「これ買わなきゃ」とラインが来ていた。在宅ワークしながら子供のご機嫌をとるときに使うらしい。わかるよ、絶対に可愛いんだけど、ポチるのは早すぎる。
2020年8月17日(月)
本日は検診。「体重は標準なんですが…足が…長いですね…」と言われる。完全に仏の血だ。
コロナの影響で、立ち合いも面会も全て禁止。退院時まで私ひとりで頑張らないといけないことがわかった。ちょっと心細かったけれど、自分の母親の出産話を聞いたら一人の方がいいかも…と思えてきた。
母が陣痛で苦しんでいるとき、
①父は一眼レフを構えて写真を撮りまくり母をイラつかせ、
②祖母(母の母)は病室に友達を連れ込んで談笑し母をイラつかせ、
③挙げ句の果てに、なかなか生まれてこないので母をおいて家族で寿司を食べに行く
という私の家族は、立ち合えたとしても同じ歴史を繰り返すに違いない。
2020年8月19日(水)
最近の趣味は、妊婦用アプリ各種を読んで誤字脱字を見つけることです。今日も一つ見つけて嬉しかったです。
2020年8月23日(日)
失礼な後輩たちから、「ふーみん、おっぱい大きくなりましたか?」とう問い合わせが増えているので、お答えしておこう。
一切ならない。
かたや友人は妊娠初期で4カップくらい大きくなっている。きっと、出産後は大きくなるだろうと信じていたが、今日母親に、
「期待しちゃダメよ。あんた、おっぱい飲むときの姿は『大木にセミ』としか言いようがない状態だったから」と言われたので、今日をもって期待するのをやめることにした。
▲「大木にセミ」
2020年8月31日(月)
初めての4Dエコーに挑戦。口をパクパクしていてかわいい。
3Dエコーは縦横奥行きの3次元。4Dエコーはそれに時間軸が加わるということらしい。
2020年9月3日(木)
妊娠アプリは、これまでずっと「今はオレンジくらいの重さだよ!」「今はメロンくらいの重さだよ!」などと赤ちゃんの重さを伝えてくれていたのだが、今日見たら急に「今は小型のウサギくらいの重さだよ!」と急に動物で例えるようになった。昨日まで野菜だったのに、動物に成長したのか…と感慨深い。
2020年9月14日(月)
ちょうど予定日1ヶ月前。体重も61キロになり、流石に身体が重い気がする。
今日は検診で、助産師さんに「運動量は妊娠前の6割程度を意識してください」と言われたので、「ここから駅まで歩いたりしているのですが、歩きすぎでしょうか」と聞いたら、「ここから……駅まで??どの駅の……ことですか?」とびっくりされた。
富山駅までの散歩は歩きすぎらしい。
2020年9月14日(月)
今日、久しぶりに市内電車を利用した。夕方で利用者が多い時間にもかかわらず、急に運転手さんが私の元へ走ってきて、
「冷房、寒くないですか?弱めますね」
と言われた。確かに直接風が当たって寒かったのでありがたかったが、「社会に初めて妊婦として認識され、対応された」経験だったのでドギマギしてしまう。運転手さんの名前を覚えておけばよかった。
2020年9月21日(月)
コロナでほとんど人に会わないので、妊娠報告ができていない人がたくさんいる。
同じくらいに予定日の産休中の同級生から急に連絡があり、今度ランチをすることになった。「ふふふ…会ったらお腹大きくてびっくりするだろうな」とサプライズを企画していたら、
「史菜って予定日いつ?」
とラインがきた。言うたん誰やねん。
2020年9月23日(水)
今日から「正期産」(=いつ生まれてもいいよ)の時期に入ったらしい。「正産期」かと思っていたら、「正期産」だった。出産にまつわる用語は難しいものが多い。
ミルケアという妊娠アプリによると、赤ちゃんは「ドリアンくらいの重さ」らしい。例えのクセ。
2020年9月27日(日)
5ヶ月の頃から、「5ヶ月にしてはお腹が出てるね」とよく言われていたが、前に迫り出す形でどんどん大きくなっているので、後ろ姿は妊娠前と変わらない。
「後ろ姿変わらない妊婦」と各方面で話題になっている。
▲photo by @shinyachi
2020年9月30日(水)
これまで、妊娠によるマイナートラブルは頻尿くらいしかなかったが、ついに「恥骨が痛い」というやつを経験。これか!これが恥骨の痛みか!!
「ヨッコラセ」が最近の口癖。
2020年10月2日(金)
ついに、10月。7月〜9月あたりがあっという間すぎて、体感は3週間分くらいしかない。
今日はおいしいおいしいお寿司を食べた。来週は2つおいしいお店を予約したので、それを食べるまではお腹の中にいてね、と毎日声をかけている。
2020年10月7日
今日はじいちゃんと仏と美味しいものを食べに出かけた。
ノドグロのでっかいのを焼いてもらって食べた。目玉まで舐めて満足した。
この日までお腹の中にいてね、と言い続けてきた甲斐があった。
2020年10月8日
出産前、最後のオンライン取材とオンラインミーティング。
さあさあ、もうそろそろ出てきてもよいぜよ。
2020年10月9日
明日出てきたら、誕生日がゾロ目になるので、めちゃくちゃ歩いてみる。
14936歩、8キロ。
先輩にそれを伝えたら「そんな思い通りにはいかない」と言われる。「のびのびと、自分らしく育ってほしい」と言いながら、早速親の思い通りにしようとしている自分に気づく。
2020年10月10日
ふーむ、今日は出てこなさそうだ。
11694歩、5キロ。
2020年10月11日
今日生まれると、漫才コンビを組んでいる後輩(ボケ)と同じ誕生日になってしまうので、人生出オチ感がすごい。だが、残念ながら生まれず。
生理痛のような痛みがある。
12697歩、6キロ。ついでにピクニック。
2020年10月12日
2020年10月13日
誰だい?「分娩台に乗ったらあとは力むだけだから楽だったよ」と言った奴は。うん、私の母親だね。
そっからも十分に大変だったよ。痛すぎて叫んだら、声出さないでと怒られたよ。
出産前は会陰切開(おまたが避ける前に切ってもらうこと)とかいろいろ言ってたけど、「どれだけ裂けてもいいから早く出てきて!」と思ったよ。
陣痛始まって8時間目には、無痛分娩にしなかった自分を呪ったよ。
我が子の顔見たら痛さ忘れるとか言われてたけど、こんなに痛いのに忘れられるわけないね。
こんな痛いからどんな大きい子出てくるんだろうと思ったけど、出てきて第一声は「小さい」だったよ。あ、赤ちゃんは喋ってないよ。私の第一声だよ。
人生初の入院、からの点滴(刺される時に「刺してる間ずっと痛いんですか?」って聞いてしまった)、からの酸素マスク……
からの人生初の貧血……
さあ、今日は寝よう…ゆっくり寝よう…
2020年10月14日
母乳の大量生産がはじまり、全ての乳腺が痛い。痛すぎる。身体を動かすとおっぱいが張り裂けそう。おまたの痛みなんかどうでもよくなるくらい痛い。
それをみて、ベテラン助産師さん「あなたのような張り付いたおっぱいが一番母乳いいのよ!痛いのは母乳がたくさん作られてる証拠!今日が峠!」
人生で初めておっぱいを褒められる。(褒められてるよね?)
2020年10月15日
めっちゃ悪露(産後に子宮の中のさまざまなものがでてくる)でた!と思ってトイレに行ったら、ふつーに尿漏れだった。いや、これは尿漏れというよりただのお漏らし。びっくりした〜
2020年10月16日
本日の朝ごはん
味噌汁・煮物・ブロッコリー・白米・カロリーメイト(チョコレート味)
賞味期限切れそうな非常食出したやろ…
午後、看護学校の学生が部屋にやってきておしゃべり。
「旦那さんとの馴れ初め教えてくださ〜い(キャピキャピ)」という若いテンションに頑張ってついていく。
2020年10月17日
我が子、初めての外の世界。
君にはどんな未来が待っているんだろうね。
さあ、一緒に帰ろう。
すてっぴぃ@無痛分娩布教委員会委員長兼書記
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