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【子ども・大人】諦められないのは真剣にやってないからだ|2022年3月|漫画家の藏丸先生

中学生のハローワーク、22年3月1回目のゲストは、『数学ゴールデン』が人気の漫画家、蔵丸先生。別件で九州に帰省しておられたタイミングだったため、「田舎の台所に座る金髪の日本人」という不思議な絵柄でご登場(^^)。元数学の先生というだけあって中学生との距離感をすぐに掴んでくださる。実はこの金髪、ご自身の漫画『数学ゴールデン』のゴールデン(=金髪)にかけている。「必勝を祈って、こんな張り切った髪の色に(笑)」という話が出る頃には、台所の背景も金髪も気にならなくなっていた。


現在35歳。30歳まで高校の数学の先生をしていて、今は漫画家さん。なぜ、そんな思い切った転職を? 「普通10代に持つことが多い夢や悩みを20代まで引っ張っていて、自分に何が出来るんだろうと考えたら、数学と漫画だったんです」。
 
そして、教師をしながら漫画の賞に応募して見事新人賞を受賞。「本気でやるなら東京に」と言われて上京。今は「数学」をテーマにした漫画を描いている。

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もちろん、教師の仕事も楽しかったし、将来の不安もいっぱいあったけど、よりリスキ―な方向を選んだ。
 
理由はたぶん、子ども時代の不完全燃焼感が残っていたから。「昔は、真面目にやってるヤツは格好悪いという価値観があったんです。周りに合わせて遊びながら“もっと別のことが出来るんじゃないか”とモヤモヤしてました」。そして今描いている「数学ゴールデン」の主人公は、昔憧れた“全力で勉強して青春する少年”だ。

ただ、新人賞を受賞するのとプロになるのは全然別の話。商業的にやっていくまでに、いろんな挫折があった。賞をくれた人気雑誌には類似テーマの漫画があって掲載できなかったり、予定されていた雑誌の創刊が延期になったり、単行本が出る予定が電子書籍に変わりそうになったり…。
 
30代で家も出て、仕事もうまくいかなくて、将来も真っ暗。「当時は(と言っても数年前)借金も増えるし精神的にも大変でした」。そんな時には、一度自分をリセットして切り替える必要がある。「受験勉強でも何でも、うまくいかなかったらガラッとやり方を変える方がいい。意識してるところがズレてたんだろうな、って考える方が、前に進めるから」。
 
そして考えたのは、漫画の内容を変えるのではなく、読者の手に届く所に行く方法。切羽詰まって、知り合いの伝手を頼って新聞にインタビューされてみたり、すでに人気があるような体(てい)でエッセイを書いてみたり。結果は意外と好評で、「そんなことも出来るんだ」と自分の新しい面を知った。露出の多さが漫画にもつながって、業界的には不可能だと思われた「電子書籍→単行本」に戻すことにも成功。薄い氷の上を渡り歩いてくような、ホントに小さい積み重ねで今に至る。

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崖っぷち時代、心に響いたのは「諦められないのは真剣にやってないからだ」という言葉。今、夢に挑戦する人にアドバイスする機会があれば、「ちゃんと失敗することを積み重ねる大切さ」を伝える。失敗して人生経験を積めば、人間的にも成長するし、話すネタも描く内容も広がる。「真剣にやってない人はいつまでも辞めないんです。だから、本気でやり切って辞めるなら、それも幸せだと思っています」。
 
勉強と漫画。全然違う世界に見えるけれど、「相手にどう伝えるか」を考える点では似ている。「今、いろんな経験をして、50代でまた教師に戻りたいとも思うんですよね。漫画を描くことで誰かにどう伝えるかは勉強できているから、この状態で教師に戻れば、またいい化学反応が起こるはずだから」。

どんなにピンチでも、時間が経てば「それも楽しかったかな」と客観的に見えてくる。「わ~これもあれもダメかも!!」という所をなんとか踏みとどまってきたこの何年かは、確実に漫画の、いや人生の糧になっている。「自分に対しては、もう何でもチャレンジしようと思ってますし、中学生のみなさんも早い段階からいろいろやってみたらいいですよ!」と力強いエール。

その直後、「…って、スミマセン、えらそーに。ボクもずっと揺れてるし、決めたから一直線っていうタイプじゃないんで」と、頭をかきながら照れる笑顔が、特別な才能だけで漫画家になったわけじゃない、ということを思い出させてくれた。

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▼オキツ 神戸シュタイナーハウス代表 大人クラス担当
書く人、聴く人、考える人、作る人、遊ぶ人。小さな勉強会や仕事、普段の暮らしの中で、ちょっと立ち止まって考え、言葉にし、行動してみる。少しずつ、みんなで幸せになっていけたらいいな。
ブログ毎日更新中。「自由の哲学を読む」~日々の暮らしから~
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