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#150人工知能の指示に反発した中国芸能人から分かる一般中国人

今回は『牧野家族(LET IT BE)』で見られた、中国人は「誰かにコントロールされたくない」と感じていることについて、書いてみようと思います。番組の詳しい紹介は今月末か来月初旬になりますので、少々お待ちくださいませ。

まずこの番組は、湖南衛視で今年7月16日から9月30日に放送されました。放送時間は毎週土曜日、日本時間23:00から(毎週土曜日、中国時間22:00から)でした。3組の芸能人(1.容祖儿2.王子文吴永恩のカップル3.张翰)が中国の雲南省麗江市で暮らします。22日間、AI分析に従って生活実験を行います。

他の番組との大きな違いは、誰がミッションやルールを発表するかにあります。これまでの番組形式だと、監督がその都度それを発表し、出演者はその指示に従って進行していました。しかしこの番組では、AIが逐一それを発表する形式を採用しています。 出演者はAIの指示に従って行動します。

人工知能が出演者のデータを分析します。行動分析や性格分析などを行います。AIが出演者と対話したり参考となるアドバイスしたりします。この分析を通して、人間の生活をより豊かにしようというのが狙いです。

そして、张翰(チャン・ハン)。なぜ彼を取り上げたいかというと、彼が番組内で「誰かにコントロールされたくない」と言い放ったからです。これは、一般的に日本人が感じる典型的な中国人像に合っているともいえます。例えば、これらはよく日本人が直面する中国人ではないでしょうか。

・ルールを無視する、「ルールはルールだから」が通用しない
・自分の都合で物事を判断する
・個人主義でチームのことを考えない

スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』には、こう解釈されています。

全ての人が「私は自分で自らを律することができる人間である」ことを示そうとするだろう。それは人々の間に「仕組み」とか「システム」の力を借りることを潔しとしない気風を生む。要するに、「私はマニュアルなどなくてもきちんと挨拶ができる」「私は人に指図されなくても、ちゃんと結果を出せる」ことが、「立派な人」の条件であると考えるようになるのである。

『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』田中信彦(著)P111

「仕組み」とか「システム」はまさにAIのことを指します。なぜなら、それらの力を借りて、この人はこうしたほうがいいよ、あの人はああしたほうがいいよという分析がなされるからです。その分析が人間に行動の変化を求めるわけです。

この仕組みやシステム、いわゆるAIとは対極にいるのが中国人です。自分は自分の力で自己管理ができる人間であると、自己評価しています。自分のことを一番知っているのは自分自身であると、認識しています。中国人と中国語で会話するとわかりますが、彼らは自分のことを定義したがる癖があります。「私は○○な人だから(我是一个○○的人)」というフレーズは定番中の定番です。

この张翰という人物、結構クセのある人間なのです。私はこれまで、彼が出演したバラエティ番組をいくつか見てきました例を挙げると、『花儿与少年第一季』『亲爱的·客栈第三季』『初入职场的我们』『五十公里桃花坞』です。この4作品から見る限り、まるでワンマン社長のようなタイプに見えてしまうのです。

ワンマン社長の特徴というと、パワハラ気質な傾向がある、自分の考えこそが正しいと思っている、自分の好き嫌いで物事を決定する、感情のコントロールがうまくできないなどが、挙げられます。実際に、彼はAIから感情をコントロールをするのが下手だと分析されました。

ちなみに、YouTubeコメント欄には张翰に賛辞を贈る中国人視聴者が多数見られました。「自分でしっかり考えられる人だね」と。つまり、仕組みやシステム、ルールに囚われない人が素晴らしいという風潮が、中国人にはあるのです。

番組スタッフはAI分析に従って生活実験を行ったらどういう結果が表れるのだろうか?を掲げて制作するわけです。しかし、ルールは通用しません、自分の都合で判断します、製作チームのことを考えません。ただただご機嫌を伺いながら、ミッションを課していくしかないのです。

もしかすると张翰を見ることで、私たち日本人は一般的な中国人の姿までもが理解できるのかもしれません。彼は注目すべき芸能人の一人です。

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