ナンバー2の男。

これはまだ私が学生の頃、土日祝日のどこかの日でチラシ配りのアルバイトをしていた時の話。
平日は社会人として働いているという30代男性と一緒にチラシを配ることになった。


いちおう仕事の途中にも関わらず、男性はふと私の横に近寄ってきて、
「実は僕、会社の中で2番目にえらいんですよね。まあ小さな会社なんですけど」
と、私に自慢しているのかこちらからは一切何も質問していないのに一方的に話してきた。

「就業時間も7、8時間くらいで。僕の仕事の効率がいいんですかねー?結構早く仕事が終わるんですよー」
と次から次へと話しかけてくる。

人目もあるし、あいつらバイト中なのにペチャクチャ喋ってサボってるなんて思われたくない。しかもこんな冴えない風貌で大して仕事ができるオーラもなく、ただただうざったい奴と一緒にそう思われたくない。


とりあえず何かテキトーな相槌でも打っておこうと「へーすごいですねー」 と棒読みで返し、チラシ配りに没頭するも次から次へとナンバー2の男は話しかけてくる。

「会社のパートの女性陣からも「〇〇くんは仕事はいいとして、あとは結婚だけだよねー」なんていつも言われるんですよねーっ」と、わざわざこちらに近づいて話しかけてくる。
それは、僕はそこそこ稼ぎがあって魅力的な男だから、そこの君よ付き合って結婚してくれないかと暗に言っているのか。

「いやいやあなたみたいに相手のことを考えずに一方的に事を進めるような人間なんて、こちらから願い下げだぜ」と内心思ったが、

「へーそういうのありますよねー。すごいですねー」と話を聞いてるか聞いてないのかどっちつかずのリアクションをとっておいた。


仮にそういう思惑が一毛もなかったとしても、とにかく一方的に自分のことを自慢しているように聞こえることにとてつもなく気持ち悪さとイライラを感じたので、早くこの場を去りたいと思っていた。
私の嫌いなタイプなので、こんな奴と知り合いというだけでも虫唾が走る。

ナンバー2は、このチラシ配りのアルバイトを5年ほど続けているらしい。

そもそも会社の中でナンバー2の男性が、チラシ配りのアルバイトを何年も続けているあたり、ナンバー2のいる会社は本当に大丈夫なのかと思ったが。
そしてナンバー2の懐事情は本当に安定しているのか。


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