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低所得者の夢、船橋屋のくず餅。

この一年でTwitterの公式アカウントとして、急激に人気を伸ばしている和菓子会社、それが亀戸天神に本社を構える船橋屋です。販売しているのは乳酸菌を使用している、マイルドで上品な「くず餅」がメイン。




平和な家族団らんの象徴


我が家には子供の頃から、両親が大好きなくず餅がほぼ定期的に食卓に並んだ。父方祖父の大好物だったそうで、嫁入りした私の母がよくお土産に持ち帰っていたそう。祖父は黒蜜の残ったお皿まで舐め取っていたらしい。

池袋の家電量販店にパソコンやエアコンなど家電を買いに行った日、お墓参りの帰りなど必ずと言っていいくらいデパートの地下食品街でくず餅を母が購入。夕飯の後にデザートとして切り分けられるのが嬉しかった。

重過ぎず軽過ぎず不思議と飽きのこない味で、子供時代よりも中年になった現在の方が美味しく感じられる。だけどその船橋屋のくず餅と、三年近く引き離されてしまった時期があった。


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くず餅との辛い別離期間


父が亡くなってからほぼ十年、なんとか母と自宅を維持してやって来たけれど、その母も三年前に重い痴呆症を患い施設に。大腿骨を二度骨折し痴呆老人を敬遠する病院にはたびたび拒絶され、仕方なく高額な個室に一年間入院。私も鬱状態で働けなくなり、家の経済はほぼ破綻して日々生きていくだけで精一杯になってしまったからだ。

母の介護でできた重い月々のローン返済を背負う手取り十二万円の身に、くず餅はとても手が届かない贅沢品。Twitterなどで流れてくる写真や、お洒落な表参道店の限定メニューなど本当に羨ましくて眩しかった。それでも「いつかまた、毎週のように食べるんだ」と自分を奮い立たせていた時に、あの非常事態宣言の発令。


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非常時の日々の中での、再会


本来なら壊れかけた風呂場のカランやら伸び切った庭木の伐採に使うべき給付金の一部で、三年半振りにくずもち餅を購入。優しく懐かしい変わらない味だった。両親がまだ元気で、家の中に溢れていた笑い声が耳に蘇る。このくず餅を食べている時は、間違いなく私は幸せだった。寂しいし孤独だけど、もう過ぎた頃には戻れない。


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かなり精神的にも落ち着き、また日常の勤務が出来るようになってから、先日はやっと憧れの「東京駅限定・チーズくず餅プリン」「飲むくず餅」を購入。今月は「鬼滅の刃コラボ・煉獄杏寿郎くず餅」を亀戸天神本店に買いに行く予定。そして年内には表参道支店にて、夢の水くず餅を食べられるように毎日頑張っている。私にとって、船橋屋のくず餅は幸福と安息の象徴なのだ。















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