「君の名前で僕を呼んで」レビュー。
こんにちは、雲州はとむです。都内は花散る春の雨なのですが、そんな土曜日にピッタリな映画をご紹介します。
「君の名前で僕を呼んで」……、おいおい今更かよ!まだ観てなかったのかよ!!と思われるだろうけど。昨日やっと吹き替え版で観ました。
Amazon fire stick にて、タイBLを片っ端から消化してるんですけど、さすがに同じようなストーリーとテンポに疲れちゃって。
物語は1983年の北イタリアの避暑地にて語られる、少年のひと夏の思い出。考古学者を父に持つエリオは、インテリジェンスで裕福な両親の影響を受け、語学とピアノ演奏を得意とする優秀で美しいユダヤ系の少年。
毎年、避暑地にある別荘で夏を過ごす一家のもとへ、大学院生のオリヴァーが研究員としてやって来る。見るからにブロンド知的ハンサムなオリヴァーに、反抗期特有の興味津々で突っかかるエリオ。二人は不思議な好感を抱き惹かれあっていく。
端的に言うと、カンヌ系が好きな人ならかなりツボにハマるんじゃないかなと。空気感や音楽、視線の交わし方、台詞の一つ一つが組紐のように繊細に織り込まれています。イタリアの夏は乾燥した暑さなんだなあという日差しも、映像が伝えてくれる。
美しいけれど、怠惰な夏休みの湖周辺。近くに住む女の子との気まぐれな情事と、それに終止符を打った時の罪悪感。そしてそれを凌ぐ、知性溢れる年上の包容力を持つ男性への情熱。
とにかく一番の注目は、今をときめく主演のティモシー・シャラメの怪しいまでの艶やかさですね。市川染五郎くんによく似ていて、「傾城の美少年」がまさに相応しい……。彼はこれから、映画界を背負っていく一人に成長するだろうなあ。
「DUNE砂の惑星」リメイク版でも、確かに昔のカイル・マクラクランを彷彿とさせるミステリアスさを発揮していて、トークも面白かった。そうそう、先日は「youは何しに日本へ?」に、偶然出演したんですよ。たまたまcool JAPAN イベントにゲストで呼ばれた時に、成田空港でインタビューを受けていました。
相手役のオリヴァーを演じたのは「アミハマ」こと、ロシア系ユダヤアメリカ人のアーミー・ハマー。長身金髪の、この人も本当に目立つ男性ですが、「どこかで見たな……、あれ?アミハマ? 『UNCLE』のアミハマ!」と、なんだか懐かしかったです。彼は石油王の孫なんですが、色々あって最近は仕事を干されちゃってるから……。
私は、昔から吹き替えの入野自由くん(「千と千尋の神隠し」ハク)と、人気絶頂な津田健次郎(「遊戯王」海馬瀬戸とか「テニスの王子様」乾貞治)が大大大好きなので、特に声にも酔いしれつつ聞けたのも嬉しかった。
Blu-rayを購入するまでの作品ではなく、憂鬱な雨の一日にのんびりとリラックスしつつ、眺めたい作品です。幼稚だけど熱く、そして明確な形になる前に終わってしまった子供時代の初恋。そのエンディングの瞬間まで、ティモシー・ハラメの既に、存在自体が甘やかな罪にも近い美貌を堪能して下さい。
この作品は、原作小説の途中までしか描かれておらず、続編製作が決定しているようです。主演は変わらないだろうけど、相手役はどうなるんだろう。
こういうタイプの映画って、私にとっては「ビジュアルを言語化する」「三次元映像を、脳内で二次元に変換する」最高の訓練アイテムなんですよ。ストーリーの途中はちょっと退屈するかもしれないし、そもそも登場人物に感情移入できるかは、視聴者次第なんだけど。知力智力を鍛える為に、とても素晴らしい芸術だと思います。
「無の音」ってありますよね。金属的な無音か、暖かな春の陽気か、銃弾の名残とか。そういう「無音」をビジュアルだと視覚に直接訴えられるけど、文章だとそうはいかない。あまり描き込みすぎるとウザいし、逆に言葉足らずだと読み手に伝わらない。
そういう「無音」表現をどうするか、映画やドラマ、アニメはいつも考えさせてくれる。だからこそ、表現者は多岐に渡るジャンルを食い漁るべきと、日々学んでいます。
私個人としては、自分の一人息子が魅力的な青年に心を奪われている事実をきちんと察していて、またその恋が儚く散っていくだろうと確信しつつ、思い出作りの手助けをさり気なくしてくれる両親に脱帽しました。
オリヴァーが現実世界に戻ってしまった後、お父さんがエリオに伝える言葉。
「今は哀しいだろう。私にも似た経験がある。だがお母さんや君の存在を超えられる物ではなかった。辛くてもその今の想いを、殺そうとしないで欲しい。人間は様々な出会いと体験をして重ねるうちに、自分の傷心を無視して無理矢理、
立ち直ろうとしてしまう。だがそれを続けていると、三十歳になるまでに心が枯渇してしまうんだ。だから、その感情を大切にして大人になって欲しい」
一度しか観てないけど、こういうニュアンスだったお父さんの名台詞。これだけで、お父さんがどんな青春を重ねてきたか、どれだけ豊かな感受性を持つかよく分かりますね。日本だとこういう言葉を子供に伝えられる人、いないからなあ……。
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