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チェーンストア理論が崩れたアメリカの大手企業

開門揖盗(かいもんゆうとう)
→ 自ら門を開いて、会釈して盗人を招き入れる意から、自ら災いを招いてしまうことのたとえ。

盛者必衰の理をあらわす。

この言葉を聞いたことがある人も多いだろうが、平家物語の冒頭の一節に出てくる。

どんなに勢いが盛んな者でも必ず衰えるという道理のことで、この世のすべての現象は絶えず変化し、栄えはずっとは続かない、いずれ滅びるという意味だ。

時代は常に変化する。

その変化に対応できないと、あっという間に衰退していく。

チェーンストア理論が崩れた日

チェーンストア理論という言葉をご存知だろうか。

本部に権限を集約し、標準化された均一な質のサービスを多店舗で展開するための方法論のことをいう。

多店舗展開による大量販売に裏付けされたバイイングパワーで、本社(本部)はスケールメリットを活かしたコストダウン効果を得られる。

つまり、大量に仕入れることでコストダウンが可能ということだ。

このチェーンストア理論を推進してアメリカで一時代を築いた企業がある。

Bed Bath & Beyond(ベッドバス&ビヨンド)社だ。

チェーンストアの鑑として優良企業に育てたのは、スティーブ・テマレス氏である。

たたき上げから頭角を現して、2003年にCEOに就任した。

その後、2019年5月に彼は物言う株主に追い出される形で辞任する。

チェーンストア理論が崩れた日である。

Bed Bath & Beyond社の軌跡

Bed Bath & Beyond(ベッドバス&ビヨンド)社は、リネンや寝具からキッチン、浴室回りなどの洗練されたホームファッションをロープライスで提供している企業だ。

かつては40%以上の粗利益率を誇り、米フォーチュンの急成長企業500社ランキングに入ったこともある、超優良小売業だった。

天井に届くほど豊富な品揃え、カラフルな陳列棚、そして商品のコーディネート販売など、日本企業の多くが参考にした企業だ。

3万品目という圧倒的な品揃えで、特に30~40代の女性から絶大な人気を誇っていた。

そんな企業を叩き上げから育ててCEOになったのが、先述したスティーブ・テマレス氏である。

彼がCEOに就任した2003年3月期に37億ドルだった売上高は、15年後(2018年3月期)には123億ドルと約3倍に急拡大している。

その後、下記のとおりM&A(企業買収)をくり返し、CEO就任時に490店舗だった店舗数を2018年には1,500店舗以上にした。

・2003年:クリスマス・ツリー・ショップ(Christmas Tree Shop)
・2007年:バイ・バイ・ベイビー(Buy Buy Baby)
・2012年:コスト・プラス・ワールド・マーケット(Cost Plus World Market)

業績のピークは、リーマンショック後の2010年度と2011年度で、売上高総利益率が41.4%と驚異のスコアを叩き出している。

この急成長の裏側にあったのが、冒頭にあったチェーンストア理論である。

顧客は売り場で買い物をするという大前提が、チェーンストア理論が見事にハマった。

テクノロジーに敗れたチェーンストア理論

チェーンストア理論を敗北に追いやったのは、Amazonだといっても過言ではないだろう。

テクノロジーがリアルからネットへ、消費構造の大変革を起こした。

ネット上で販売するメリットは、人件費などの間接コストが減らせるため、リアル店舗よりも安価に販売が可能になることだ。

となると、リアル店舗もネット販売に負けないように値下げをしていくしかなくなった。

Bed Bath & Beyond(ベッドバス&ビヨンド)社も、20%offクーポンを使った販促などを実施した。

ところが、ブランドイメージの毀損につながり、利益が回復するどころか、底なし沼のように下落し続ける結果となった。

2012年以降は粗利益率が下げ止まらず、スティーブ・テマレス氏がCEO辞任を発表したときには31.7%まで減少した。

既存店ベース売上高も2015年3~5月期以降はマイナス成長ばかりだった。


スティーブ・テマレス氏の手腕を否定する人もいるようだが、彼はBed Bath & Beyond(ベッドバス&ビヨンド)社を急成長させた敏腕である。

それなのに、Eコマース(EC)に乗り出すのが遅れたのが致命的だった。

DX(デジタルトランスフォーメーション)として打ち出したアプリもローンチできず、改革は中途半端に終わった。

後任のCEOが店舗のリストラを断行し、買収してきた傘下のワン・キングス・レーンやクリスマス・ツリー・ショップを売却している。

260店舗近くあったコスト・プラス・ワールド・マーケットも売却せざるを得なくなった。

全盛期には、1,500以上あった店舗は、直近で999店まで減っている。

今後2年間で、さらに約200店舗の閉鎖を予定しているという。

わずか数年で1,500店から800店ほどに店舗数が半減する計画で再編を図っている。

まとめ

無印良品を運営する良品計画の米子会社である、ムジUSA(MUJI U.S.A.)は2006年にアメリカへ進出した。

ところが、2020年7月に連邦破産法11条を申請し店数を大幅に縮小している。

また、2012年にアメリカへ進出したニトリUSA(Nitori USA,Inc.)のアキホーム(Aki-Home)も低迷が続き、ピーク時は6店舗あったが、現在は2店舗のみとなっている。

ユニクロですら、アメリカ市場だけを見ると利益がまだ出ていない状況だ。

各社いずれもDXに乗り出しており、今からが期待される企業だが、チェーンストア理論を実行していた時代があるという意味では共通しているといえるだろう。

顧客は売り場で買い物をするという概念を変え、次の時代へシフトしていくためには、スピーディかつ正確にテクノロジーの導入が必要になるのだ。

リアルからネットへ上手くシフトしていくためには、もちろん様々な情報や検証も必要になるだろうが、なによりも必要なのはトップの決断だろう。

stakはDXのど真ん中を狙える優秀なプロダクトだと自負している。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。