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舌端月旦の陰:SNS時代の匿名批評文化

舌端月旦(ぜったんげったん)
→ 口先で人を批評すること。

舌端月旦 、これは文字通り言葉による攻撃、人の欠点や失敗を指摘して楽しむ人々の行動を描写するための言葉だ。

しかし、その原点をたどると、この表現は単なる批評以上のものを内包している。

歴史を遡ると、社会が未だ一部のエリートと呼ばれる人たちによって動かされていた時代、一般大衆には声を大にして意見を表明する権利すらなかった。

その抑圧された社会の中で、人々は噂話や隠語を用いて強者や権威に対する不満を表現していた。

そういった背景から「舌端月旦」は、文字通り弱者の無力さと、その無力さからくる一種の「反抗」を表しているのだ。

この概念が生まれた背景には、権力者に対する直接的な反抗が許されない、または危険を伴うという状況があった。

だからこそ、人々は言葉を武器とし、相手の短所を指摘し、皮肉や風刺を交えた会話を楽しんだのである。

この行為自体が、自分たちの立場を少しでも上げ、相対的なストレスや不満を解消する手段となっていた。

しかし、時代が変わり、インターネットとSNSの台頭によって、この「舌端月旦」はさらに新しい、そしてより複雑な次元を持つようになった。

それはもはや、権力や強者に対する皮肉や風刺ではなく、名もなき他人に対する一方的な攻撃、誹謗中傷へと変わってしまったのだ。

今日のこの行動は、その本質を大きく逸脱している。

なぜなら、かつての「舌端月旦」が持っていた「反抗」という要素は、もはや攻撃対象の人物が具体的な権威や強者である必要がなくなったからだ。

無名の一般人であろうと、その人がSNSで何らかの立場を表明すれば、それだけで攻撃の対象となる。

ここに、現代の「舌端月旦」の危険性が横たわっている。

この歴史的背景を理解することは、私たちが今直面している問題にどう向き合い、それを解決するかについて深く考える第一歩となる。

匿名の批評が、もはや社会的な「反抗」ではなく、個人の感情のはけ口にすぎない現状を、私たちは真剣に見つめ直さなければならない。

現代のインターネット社会

現代のインターネット社会において、「ネトウヨ」という言葉が指すのは、特定の政治的意見を唱え、攻撃的で排他的なコメントをくり返すネットユーザたちだ。

しかし、彼らがなぜそのような行動を取るのか、その心理を探ることは、単なる好奇心を超えた意味を持つ。

なぜなら、その理解がオンラインでのコミュニケーションの質を向上させる糸口となるからだ。

1)身元を隠す安心感

インターネット上では、実名を隠し匿名で行動することが容易い。

この匿名性は、普段は表に出せない本音や攻撃的な意見を露わにする「安全な」環境を提供する。

心理学で言う「非人間化」の概念がここに働き、ユーザはスクリーンの向こうの人間を「実在する人間」として認識することが減り、その結果、普段行わないような攻撃的行動を取りやすくなる。

2)所属意識の強化

ネトウヨと呼ばれる人々は、しばしば特定のアイデンティティやコミュニティに強く帰属している。

彼らにとってのコメントや発言は、自分たちの意見が正しいという確証を得るため、また同じ考えを持つ人々との連帯感を高めるためのものである。

3)対立煽動の循環

SNSのアルゴリズムは、しばしば議論を煽り、感情的な投稿を促すようデザインされている。

これがユーザの極端な意見表明を引き出し、ネトウヨと呼ばれる人々を含む、対立するグループ間の溝を深める結果を生んでいる。

このように、ネトウヨと一口に言っても、彼らの背後には多様な心理的動機が存在する。

これらを一概に否定することなく理解し、どのように健全なディスカッションへと導けるかが重要だ。

さらに重要なのは、彼らの行動を単に「悪」と決めつけ排除するのではなく、なにが彼らをそのような行動に駆り立てているのかを理解することだ。

オンライン空間でのコミュニケーションを改善するためには、技術的な側面だけでなく、こうした心理的側面にも目を向け、それぞれのユーザが抱える問題や不安に寄り添い解決する道を模索する必要があるのである。

匿名性について考える

社会を震撼させるほどの影響力を持つSNSだが、その影で、我々は1つの問題に直面している。

それは、顔の見えない攻撃、つまり匿名性がもたらすネガティブな行動だ。

ということで、SNS上での匿名の攻撃がなぜ起こるのか、そしてその心理的メカニズムについて解き明かしていく。

1)匿名性の罠

匿名性は、個人に自由を与える。

しかし、その自由が責任の放棄につながり、攻撃的な振る舞いを助長する場合がある。

オンライン空間での匿名性は、言動の結果に対する直接的な責任回避を可能にし、人々に通常は避けるであろうリスクを冒させる。

これが、攻撃的かつ非建設的なコメントを生む土壌となる。

2)集団極性化の助長

人間は社会的な生き物であり、自分の意見や立場を他者と共有したいという強い願望がある。

SNS上では、同じ考えを持つ人々が集まりやすい。

しかし、この「エコーチャンバー」は、異なる意見が少ないため、極端な意見が正当化され、更に極端なものへとエスカレートしていく。

これは、集団内の意見が一様化し、極性化する現象であり、攻撃的な言動を正当化する社会的な圧力を生み出す。

3)非対面性による共感の欠如

非対面のコミュニケーションでは、相手の感情を直接感じ取ることが困難である。

このため、SNSユーザーは他者の感情や反応を十分に理解せず、相手に対する共感が欠如する。

これは、他者への攻撃的なコメントや振る舞いの障壁を低下させる要因となる。

4)即興的な感情の表出

SNSの使用は、即興的な感情の発露を促す。

一瞬の怒りや不満が、瞬時にコメントや投稿となって表出される。

この即座の感情の表出は、後で後悔するような言動を引き起こす可能性がある。

このように、SNS上の匿名性が引き起こす攻撃的な行動には多くの要因が絡み合っている。

解決策を見いだすためには、技術的なアプローチだけでなく、人間の心理や社会的な側面を深く理解し、それに基づいた対策を講じることが求められる。

SNSがもたらす便益を享受する一方で、そのダークサイドを克服するための努力は、我々社会全体の責任であり、避けて通ることはできない課題なのである。

匿名の攻撃がもたらす影響

オンラインでの匿名の攻撃がもたらす実際の影響を明らかにするため、ここでは具体的な事例とそれに対するエビデンスを提供する。

これらの事例を通じて、SNSが社会や個人に及ぼす影響の深刻さを理解し、どのような対策が有効であるかを探ることが目的だ。

1)オンラインハラスメントの事例

2018年、ある女性ゲーム開発者がTwitterで性差別的な攻撃を受けた事例がある。

彼女は自身の作品に対する批判を理由に、無数の悪質なコメントと脅迫を受けた。

この攻撃は彼女の精神健康に深刻な影響を及ぼし、仕事への集中を妨げる結果となった。

(出典: "Cyberbullying and Online Harassment", Pew Research Center)

2)フェイクニュースの拡散

2020年のパンデミック期におけるフェイクニュースの拡散は、社会に混乱をもたらした。

特定のグループがCOVID-19に関する誤情報を意図的に拡散し、公衆の健康に対する誤解を引き起こした。

(出典: "Misinformation related to the COVID-19 pandemic", World Health Organization)

この事例は、偽情報がリアルタイムで拡散し、それに基づく攻撃的な行動が現実世界にどのような深刻な結果をもたらすかを示している。

3)集団的な攻撃の事例

SNS上で、特定の個人や企業に対する集団的な攻撃が行われることがある。

例えば、ある企業の不手際が炎上し、何千ものユーザによる批判的なコメントが投稿された事例がある。

この一件は企業のブランドイメージに傷をつけ、実際のビジネスに悪影響を及ぼした。

(出典: "The Impact of Social Media on Business Performance", MIT Sloan Management Review)

これらの事例は、オンラインでの攻撃行動が個人の名誉や精神健康、さらには公共の安全や企業の存続にまで影響を及ぼす可能性を示している。

また、こうした状況に対処するためには、ユーザ自身の意識の改革、プラットフォーム側のルール強化、そして教育機関や政府による啓発活動が不可欠だ。

1つ1つの攻撃的なコメントや投稿が、大きな波紋を引き起こす可能性を我々は決して見過ごしてはならない。

オンラインのコミュニケーション

問題の根深さを理解した上で、このセクションでは、オンラインでの匿名の攻撃やネガティビティに対処し、より健全なコミュニケーション環境を作り出すための解決策と前向きなアプローチを提案する。

1)教育の強化

デジタル時代におけるマナーやエチケットの重要性を子供たちに教えることは、長期的な解決策として不可欠だ。

学校教育において、オンラインでの振る舞い、言葉の影響、プライバシーの尊重、情報の正確な評価方法など、インターネットリテラシーの教育を強化する必要がある。

2)プラットフォームの責任と規制

SNSプラットフォーム自体も、健全なコミュニケーションのためのルール作りとその徹底を求められる立場にある。

ユーザからの報告に対する迅速な対応、不適切なコンテンツの削除、透明性の高い運用基準の設定などが必要だ。

また、ユーザには匿名でない、実名を用いたコミュニケーションを奨励する動きも有効だろう。

3)心理的サポートと啓発

オンラインハラスメントの被害者に対するサポート体制の充実も重要である。

心理的カウンセリングの提供、サポートグループの設立などにより、被害者が孤立することなく問題を乗り越えられる環境作りが求められる。

また、一般ユーザに対するオンラインハラスメントの実態や影響についての啓発活動を行うことで、問題の認識を広め、予防につなげることができる。

4)テクノロジーの活用

AIや機械学習技術を活用し、ハラスメントやトラブルの早期発見、未然の防止に取り組むことも1つの方法だ。

特に、不適切な言葉遣いや攻撃的な表現を自動的に識別し、フィルタリングする技術の開発が進められている。

5)コミュニティの力

最期に、健全なオンラインコミュニティ作りは、ユーザ自身による自律的な活動によっても実現可能だ。

互いに敬意を持ってコミュニケーションする文化を育て、ルール違反のユーザをコミュニティから排除することで、ポジティブな環境を維持することができる。

これらの解決策が組み合わさることで、オンライン空間はより安全で、建設的な議論が行われる場所に変わる可能性がある。

それぞれのステークホルダーが責任を持ち、協力し合うことの重要性をこれ以上なく強調したい。

まとめ

長い歴史を持つ「舌端月旦」の概念が示すように、人は古来から他人の批判や評価を恐れ、またそれに頼る傾向がある。

しかし、今日のデジタル社会では、その1つ1つが個人の尊厳を傷つけ、社会全体の分断を深める要因ともなっている。

この問題に立ち向かうには、個々の行動の見直しと、社会全体での対策の徹底が必要だ。

今私たちが目の当たりにしているのは、技術の進歩がもたらす「距離の縮小」だ。

一方で、それは「心の距離」を拡げてしまうこともある。

SNS上でのコミュニケーションが現実世界の人間関係や社会とは切り離されたものではないことを、我々は常に認識しておく必要がある。

ネット上の言葉が、現実世界での人々の感情や生活に深く影響を与えることを忘れてはならない。

それゆえに、次の一歩として大切なのは「思いやりの心」を持ち続けることだ。自分の言葉が他者にどのような影響を与えるかを考え、オンラインでの行動に責任を持つ。

このことが、この問題に立ち向かい、インターネットがもたらす利便性と広がりを健全なものにしていく道だ。

いずれにせよ、この問題解決への取り組みは決して一朝一夕にできるものではない。

しかし、小さな努力が集まれば大きな変化を生む。

どんなに小さな一歩も、社会をより良い方向に導く力になる。

だからこそ、1人1人が「舌端月旦」を自覚し、ポジティブなコミュニケーションを心がけることの重要性を、再認識する時なのである。


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植田 振一郎 X(旧Twitter)

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。