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スマホやタブレットにつきまとう依存という問題

議論百出(ぎろんひゃくしゅつ)
→ 様々な意見が出て活発に議論されること。

今やスマホを持っていないという人はいないといっても過言ではない時代になった。

スマホだけではない。

タブレットも含めれば、1人1台どころか複数のデバイスを持っているという人も多いだろう。

日本では流行らないといわれたり、年配の方は持たないといわれていた頃が懐かしい。

一方で、ずっとつきまとう問題がある。

依存だ。

スマホやタブレットにつきまとう依存という問題

2021年にスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書、スマホ脳がベストセラーになった。

そのスマホ脳によると、便利さがある一方で、過度な使用は睡眠障害やうつ、記憶力や集中力の低下、学力の低下や依存に結びつくという指摘がされている。

果たして、本当に手放せなくなっているスマホは依存しやすいのか、また脳に悪影響なのだろうか。

世界保健機関(WHO)は、国際的な診断分類、ICD(国際疾病分類)において最新の第11版のICD-11で、行動における依存症として、ゲーム障害も含めて定義している。

これは、ギャンブルや薬物といった物質使用と同様の定義となっている。

ゲーム障害の定義

  • ゲームのコントロールができない

  • 他の生活上の関心事や日常の活動よりゲームを選ぶほどゲームを優先する

  • 問題が起きているがゲームを続ける

  • その行動パターンによって個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野において著しい障害をもたらすほど深刻である

上記の4項目が12ヶ月以上続く場合、ゲーム障害、いわゆるゲーム依存とされるというものだ。

つまり、依存というのは日常で使うというレベルではなく、かなり深刻な問題であるということが理解できる。

ストレス解消のためについ手に取るとか、好きという程度のものを依存とイコールで結びつける傾向がある。

それを病的で依存だと煽る風潮があるが、そんなレベルではないということだ。

精神科医が依存を判断する際には、どのような苦痛があるかが基準になるという。

端的にいうと、病的であり苦痛を伴うものが依存ということになる。

例えば、SNSなどを始めて面白くて一定期間はまっても、ある程度で飽きるというのが通常だ。

それが、日常に支障をきたすほどに苦痛を伴ってSNSをやるようになるのが、まさに依存なのである。

SNSに対する依存という問題

上記でも少し触れたが、スマホやタブレットに依存することは、SNSに依存していることとイコールに近い見方をされる傾向にあるように思う。

SNSでは、通知が来ていないか確かめたくなること、いいねがつくことで私たちはある種の承認欲求を満たすことができる。

この脳の報酬システムを刺激するゆえに、SNSにはアルコールや薬物と同じような中毒性があるとする見解だ。

アルコールや薬物などの物質使用障害が出ている人には、それを使用したときに快感ホルモンのドーパミンを放出する報酬系が働いている事実がある。

要するに、アルコールにおいてもギャンブルにおいてもゲームにおいても、共通して報酬系が動いている。

だからこそ、スマホも同じでやっぱり危ないという話になりがちなのであるが、脳科学の歴史をひもとくと、報酬系はやる気の研究として長年研究されてきている。

1998年にイギリスのケンブリッジ大学のシュルツらが行ったサルの研究がある。

その研究によると、ドーパミンニューロンは報酬そのものではなく、報酬を予期させるようなときや予想外、あるいは期待以上の報酬が得られたときに反応しているという。

仕事や学習において、やる気が起こるのはそれによるご褒美が期待できるときで、そのときにはドーパミンがぐんぐん分泌されている。

つまり、人間にとってドーパミンはやる気、モチベーションの基本システムそのものであることが大前提にあることを知っておくべきだということだ。

単純に美味しいものを目の前にしても活性化する。

生きる上で役立つと思えるときや、楽しいときに脳は活性化するようにできているのが人間の脳だということだ。

それなのに、スマホはドーパミン系を刺激するから危ないと決めつけてしまうこの方が危険だということだ。

まあ、過大評価ということだ。

物質依存と行動依存について

物質依存とはアルコールや薬物への依存、行動依存とはゲームやギャンブルなどの依存のことだ。

結論からいうと、両者のメカニズムの違いについてはまだ明らかになっていないことばかりだ。

脳の神経細胞が集まる、灰白質や神経の受容体の変化は、薬物とギャンブルでは明らかに異なり、薬物使用では明らかだったがギャンブルではわずかだったという報告がある。

アルコールも薬物もギャンブルも物質や行動によって快楽が得られると思われており、それがくり返されることによって脳がその刺激に慣れてしまうというイメージだ。

その結果、より強い刺激を求めるようになって、物質使用や行動がコントロールできなくなってしまうというのだが、医学的には間違いだといえる。

おそらく、アルコールや薬物への依存である物質依存の方が、身体に与える影響は大きいとされているのが現状だ。

そして、物質依存や行動依存の背景になる素因は研究されている。

  • 不安傾向が強い人

  • 抑うつ傾向が強い人

  • 衝動性が強い人

こういった人は依存する傾向が強いという。

また、発達障害的傾向のある人もなんらかの行動にはまりやすい傾向があるとされている。

依存を大きく捉えすぎる問題

まず、報酬系はやる気を支える仕組みそのものだということをしっかり把握しておくべきだ。

やる気に関係する、やる気の中核といわれる脳の線条体は、昆虫でも、動物でも、移動する生き物なら全てが持っている仕組みなのである。

あっちに移動したほうが生き残る確率が高くなるぞという活動させるモチベーションとして線条体が発火するというわけだ。

人間も同じで、楽しいことがあるかもとか、褒められるかもと思うことでモチベーションが高まる。

子どもは親や周りの人たちに良くできたねと褒められることを期待して行動を起こしているというように、教育の根本にも報酬系がある。

それなのに、報酬系が活性化させるメカニズムだけ取り出して病的だということが、そもそも間違っているのだ。

では、なぜこんなにも依存ということに関してずっと問題視されるのか。

IT企業経営者など一見、専門家的なポジションにいる人が、自分の子どもにはスマホやタブレットを触らせる時間を制限しているといったことを主張するからだと思っている。

これは、明らかに弊害だと私は断言する。

まとめ

たった数人の本当にエビデンスがあるのかどうかもわからない主張を簡単に受け入れすぎだということだ。

なにもこれは、スマホやタブレット依存の問題だけでなく、勝手にバイアス(思い込み)が働いているといえる。

この傾向があるのは、人間の脳のワーキングメモリ、つまり脳のメモ帳が同時に3~4つのことしか処理できないからというのが根本にある。

だからこそ、SNSやゲームといった報酬系は依存という言葉を結びつけやすいし、そういった情報は注目度も高い。

今後も同様に入ってくる情報も多いと思うが、そのときには、日常生活に重大な破綻をきたすレベルで、しかも長期間続いているのかということを冷静に判断すべきなのである。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。