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プロ野球12球団のファンクラブを比較してみた~数年後のファンクラブはどうなる?~

 こんにちは。スタジアムヲタクのモリチッチです。今回の記事では、プロ野球12球団のファンクラブについてまとめてみました。ぜひ最後までご覧ください!

各球団のファンクラブまとめ

 以下の表は各球団のファンクラブ会員区分と年会費を表しています。

表1. 各球団のファンクラブ年会費(単位:円/年)
※日本ハムは欲しい入会特典に合わせて3900円に追加料金を支払う形式

 例えば、阪神は「ハイグレード」「レギュラー」「カジュアル」「キッズ」の4区分の会員種別があり、記載の通りの年会費がかかることを表しています。
 今回の記事では、①、②で表を縦に区切って金額別にサービスを比較した後、③で数年後のファンクラブはどうなるのか考察しようと思います。

①    プレミアム・ハイグレード会員へのサービス(巨人)
②    レギュラー会員(黄色)へのサービスとユニークな会員種別(緑)への言及
③    数年後の予想

①    プレミアム・ハイグレード会員へのサービス

 プレミアムの列で特に特徴的なのが巨人だと思います。ほかの球団の最高額プランが数万円程度であるのに対して、巨人(GRAND SLAM MEMBER)は55万円と頭一つ抜けている印象にあります。
 巨人のプレミアム会員(GRAND SLAM MEMBER)が得られる会員特典は以下の画像の通りです。

図1. GRAND SLAM MEMBERの会員特典
出典:https://www.giants.jp/sp/FC/course/grandslam/

 この会員特典を見た僕の所感は、レギュラープランや他球団のプレミアムプランが「物質的な提供サービスに対応する価格」を設定しているのに対して、巨人のGRAND SLAM MEMBERでは、「ブランド価値に対応する価格」を設定しているところにあると思います。
 GSM限定の4特典はジャイアンツの「ブランド」に対する価値だと思います。こうしたファンがチームの存在に対して感じる価値は、チームがファンに提供するサービスとは別の価値として存在していると思います。巨人のようにロイヤリティやブランドを価値としたビジネスが今後は高単価商品でもさらに発展していくと思うし、低価格帯においても降りてくるのではないかと思います。

②  レギュラー会員(一般の有料会員)へのサービス

 以下の表は各球団のレギュラー会員へのサービスをまとめた表で、年会費で降順に並べています。

表2. レギュラー会員の入会費と特典のまとめ

 ここでは、以下の3点について順にまとめていこうと思います。
(a)  レギュラー会員の入会費がやや高い楽天(赤)
(b)  引き換えチケットのプレゼントがない球団(黄色)
(c)  引き換えチケットのプレゼントがある球団(緑)

(a) レギュラー会員の入会費がやや高い楽天(赤)

 楽天の入会金はやや高いですが、チケットを4枚もらえたり、グッズがもらえたり、クーポンがもらえたりすることを考えると、決して入会費が高いとは言えないと思います。
 むしろ、「年間通して使うお金を前もって集めている」といった理解の方が正しいのかもしれません。約1万円の入会費で、チケットやグッズ、グッズクーポンがゲットできるので、ファンからすれば、入会すれば必要なものがすべて手に入ります。球団からすれば、カスタマージャーニーに合わせた入会特典を用意することで「来場するがグッズを買わない人」や「1,2回しか来場しない人」を減らすことができます。
 このようにして、平均単価の底上げを狙っているのではないかと思います。

(b) 引き換えチケットのプレゼントがない球団(黄色)

 該当の4球団はどれも日本屈指の人気球団であり、他の8球団に比べてファンのロイヤリティに支えられたサブスクリプションになっているように感じました。チケットやグッズのような物質的な価値を積極的に提供するのではなく、「好きなチームのファンクラブ会員である」、「チームを積極的に応援している」といったような、感情的な価値に支えられたシステムになっているのではないでしょうか。
 こうしたチームの強みは、ファンのコア度が強く、リピート率の維持や、更なる高単価商品への誘導への難易度が比較的低いというところにあると思います。それゆえに巨人が年会費55万円のGRAND SLAM MEMBERのような会員種別を設定しても、魅力的に感じるファンが多いのではないかと推測します。
 一方で、物質的な価値が他球団に比べて少ない分、新規会員の獲得が比較的難しいのではないかと思いました。ファンクラブのメリットは一定以上のコア度が無いと気づけないのではないかという懸念ができるのではないかと思いました。
 このソリューションとして重要なのが、表1の様々な会員種別になるのではないでしょうか。価格を下げたり、顧客にマッチした会員種別を用意したりすることによって、入会のハードルを少しずつ下げる工夫がなされているのではないかと感じました。
 多くのチームが用意しているキッズ会員やカジュアル会員はその事例の一つだと思います。また、ソフトバンクのファミリー会員や広島のレディース会員も顧客の属性や特徴をとらえて、入会のハードルを下げた事例なのではないかと思います。

(c) 引き換えチケットのプレゼントがある球団(緑)

 該当の7球団は前述のとおり、物質的な価値をたくさん提供してくれている球団であると思います。チケットやグッズを貰えるということがインセンティブになっているのかもしれません。
これらの7球団は入会金が安く、多くのサービスが得られるため、入会のハードルは比較的低いのだと思います。そのため、新規会員を増やしたり、コア度の低いファンにリピートしてもらったりしやすいという強みがあるのだと思います。
一方で、楽天ほどの手厚さはないため、引き換えチケットの回数しか来場してくれなかったり、グッズやフードを買ってくれなかったりする可能性があるのだと思います。(b)で紹介した4球団にも共通する話ではありますが、ファンクラブの範疇を超えたところでの購入を高めるというのが、球団側の課題となるのではないかと思います。
また、7球団は長期的に(b)で紹介した4球団のように、「引き換えチケットが無くても入会したい」と思えるようなファンの成長がテーマになるように思います。

③    数年後の予想

図2. ファンクラブの遷移予想

 これまでの議論を踏まえると、以上の図のようにファンクラブは3段階の変遷を遂げるのではないかと思いました。数年後にはすべての球団が3段階目の「顧客ベースなファンクラブ」に移行するのではないでしょうか。各チームのコアファンに対するリッチなコンテンツから、ファン歴の浅い顧客に届けたサービスまで、網羅的になっていくのではないかと思います。

まとめ

 最後まで読んでくださってありがとうございました。引き続き、日本・世界のスポーツ界がどうなっていくのかについて深く考えていきたいと思いますので、そのほかの記事についてもぜひご覧ください。
この記事で用いた表は著者が各チームのファンクラブサイトを通してまとめたものになります。会員種別名などは各チームごとに個別の名前がありましたが、集計の都合でまとめて掲載しています

参考資料

・阪神タイガース
2024年度会員追加募集|ファンクラブ|阪神タイガース公式サイト (hanshintigers.jp)
・広島東洋カープ
2024年度カープファン倶楽部会員募集 | ファンクラブ - 広島東洋カープ公式サイト (carp-fan.jp)
・横浜DeNAベイスターズ
オフィシャルファンクラブ 2024年継続手続方法のご案内 | 横浜DeNAベイスターズ (baystars.co.jp)
・読売ジャイアンツ
CLUB GIANTS 2024シーズン|読売巨人軍 公式ファンクラブ
・東京ヤクルトスワローズ
ファンクラブ【Swallows CREW】公式ファンクラブ 2024年度 会員募集 | 東京ヤクルトスワローズ (yakult-swallows.co.jp)
・中日ドラゴンズ
中日ドラゴンズ オフィシャルウェブサイト - 公式ファンクラブ - 2024年公式ファンクラブ会員募集!【会員種別】 (dragons.jp)
・オリックスバファローズ
ファンクラブ|オリックス・バファローズ (buffaloes.co.jp)
・千葉ロッテマリーンズ
公式ファンクラブ【TEAM26】|千葉ロッテマリーンズ (marines.co.jp)
・楽天ゴールデンイーグルス
CLUB EAGLES|東北楽天ゴールデンイーグルス (rakuteneagles.jp)
・埼玉西武ライオンズ
会員種別 / ファンクラブ|埼玉西武ライオンズ (seibulions.jp)
・北海道日本ハムファイターズ
北海道日本ハムファイターズ オフィシャルファンクラブFAV (fighters.co.jp)

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