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スペンディング・ファースト、米国でMMTが行われようとしている


◆MMT(現代金融論)の専門家ケルトン教授のツィート

米国で新しい経済学の現代金融論-Modern Monetary Theory 略称MMTを昨年日本に紹介するプロジェクトにかかわった。ケルトン教授を日本に招聘して立命館大学と共に研究会を開催したのだ。

20190717ステファニー・ケルトン (2)

一年もたたないうちに、MMTの主要ポイント「スペンディング・ファースト」(まず、支払いが先)が、実行される状況となった。感染症だけでなく経済学的にも歴史的事件に私たちは直面している。

コロナウイルス騒ぎで株価が激しく動き、世界経済が翻弄されている。トランプ大統領と米国議会は200兆円の巨額の予算を組む話をしている。ところでその財源はどこから来るのだろうか?

それについて、ケルトン教授が一連のツィートを行った。Google翻訳の助けを借りて、紹介する。長いので、先に進みたい人は解説まで飛んでほしい。

THREAD  スレッド
民主党は、主要な議論を通じて、あなたの支出提案を「支払う(賄う)」ことが何を意味するかについて人々と話す大きな機会を逃しました。議会が「お金を払わずに」2兆ドルを費やす準備をしている今、それが何を意味するかについて話し合う必要があります。

まず最初に、議会がその支出に「お金を払っている(賄えている)」と言うことはどういう意味でしょう?私は上院で働いていましたが、この言葉は予算策定の世界で具体的な意味を持っています。議会のメンバーが法案を起草するとき、スタッフはしばしば他のメンバーからのサポートを求めてそれを買い物します。

必然的に、スタッフが受け取る最初の質問は、「あなたの支払いは何ですか?(資金の捻出方法は何ですか?)」です。
たとえば、1兆ドルのインフラの予算要求がある場合、赤字にならないようにその支出を完全に相殺する計画を彼らは知りたいと考えています。それが、支出に対して「支払う(賄う)」ことの意味です。

これは通常、増税を伴います。十分な量の新しい「収入」をもたらすことができれば、支出を完全に「支払う(賄う)」ために「財源を見つけた」と主張できます。これがPAYGO--Pay As You Goの背後にある考え方です。赤字に追加しないでください。

議会が完全に「支払い済み」の支出法案を可決すると、連邦準備制度に2セットの指示が送信されます。最初の命令セットは、FRBに特定の銀行口座のサイズをマークアップするように指示します(支出が行われるときに)。ここで説明します:

私たちは、これが「財政的責任」の縮図であると誤解させられました。あなたの優先事項を「支払う(まかなう)」ということは、政治家が「真面目」であり、その計画が「数学」が追加されるので「信頼できる」ことを示しています。それはでたらめです!

今、この状況で財政支出を税金で相殺しようとするのは狂気でしょう。なぜなら、私たちの景経済は財政的支払いを求めているからです。そして今、財政的支払いは崩壊しています。私たちはFRBが今すぐに予算額どおりに政府の銀行口座に追加することを求めています

平常時でも、相殺(増税等による処置)をしないでできることはたくさんあります。たとえば、サンダース上院議員は、810億ドルの医療債務をキャンセルすることを提案しました。オフセットなしでそれを簡単に行うことができます。医療債務を取り消すことで、それらの人々はそのお金を他のものに使うことができます

それは(他の形の債務の節約と返済とともに)消費支出を押し上げるだろうが、米国経済はその追加の消費支出を容易に処理できたであろう。インフレを加速させるリスクがないことは、相殺の必要がないことを意味します。

別の例:数人の経済学者(私も含む)が学生ローンの借金をキャンセルする提案をモデル化しました。マクロ効果を調べたところ、「支払う」経済的な理由がないことがわかりました。

いつもできるとは限りません。いくつかの支出提案は非常に大きいため、相殺が必要です(つまり、税負担」)。大きな支出は本当にインフレをもたらします。増税等の処置を必要とする前に、より高い需要の観点から、経済はどの程度対応できますか?

現実には、ほとんどの場合、経済には十分な余裕があり、相殺することなく財政支出(または減税)を拡大することができます。それを「財政空間」と考えてください。十分な財政スペースがあり、サンダース大統領候補が提案していたことの一部です。

しかし、私たち(民主党)はそれを認めませんでした。代わりに、すべてを「支払う(まかなう)」必要があると偽った。ぶら下がっている果実はありませんでした。 1兆ドルの赤字(または数兆ドルの国債)に直面していたため、上限に達しました。

今何が起こっているか見てください。それから学びましょう。そして、私たちがこの危機を乗り越えたとき、そして私たちは、政府と通貨発行の支出能力について、新しく改善された理解を得ようと思います。それが必要になります。 アジアとオーストラリアでも炎上しています。

◆解説 私たちが直面していることとバーナンキのヘリコプター・マネー

ケルトン教授は経済学会の中では異端といわれるMMT派である。昨年日本に来た時も一部で話題になったが、日本の経済専門家からは大バッシングだった。今も、日本は一部の人しか理解を示そうとしない。

彼ら独特の表現がいくつかあるスペンティングファーストは「政府は財源がないと予算は組めないというが、そんなことはない。まず先に政府の支払いがあるのだ」という内容だ。これは古代貨幣、貨幣発行の原点をイメージすれば、簡単にわかる気なしである。

租税貨幣論は少しわかりにくいかもしれないが、紙切れに過ぎない貨幣をだれもが受け取ってくれるのは、最後に政府が税金として受け取るからだ、という考え方である。

このMMTの中軸メンバーケルトン教授達が今回の巨額財政を「やった」と喜んだのは、税金で回収することをなんら議論されることなく200兆円ものばらまきを決定したからである。日本でもさんざん言われてきた財政再建はどこに行ったのだろうか。アメリカは赤字を垂れ流してハイパーインフレにならないのか。そういう議論は議会で一切出なかった。

仮にハイパーインフレが起きたとしても、現実に起きている危機を救うことが大事だ、そう議会は判断している。そしてハイパーインフレが起きなかったとしたら、これまで財政再建が重要、ハイパーインフレが怖いと言ってきた人に対して、MMTは勝利する。自説の正しさが証明されるタイミング、ケルトンさんはそう考えているのである。

今や米国における経済学・財政学の状況は激変した。コロナウイルスの騒ぎとなって、世界中でパニック(恐慌)状態となり、経済的な大混乱が起きている。その状況をケルトンさんが上げた画像で見てみよう。世界経済は二週間で経済活動の主要項目、消費が100%消えている。消失しようとしているのだ

ケルトン教授がフォーカス

この事態をうけて、米国では200兆円という巨額の予算について議会で話し合われ、トランプ大統領がまもなくサインし実行すると思われる。そうでもしないと、内需が消失して大恐慌が来る。そのことにみんなが気がづき始めたのだ。先週は100兆円だったのに、予算はどんどん大きくなっている。

恐慌が起きようとしている。それも未曾有の事態、1929年の大恐慌を超えるような事態が起きようとしているので、各国が対応で終われているのだ。ウイルスよりも大変な事態である。世界一の経済大国、米国で今まさにMMTの主張どおり、スペンディング・ファーストが行われようとしている。

これは政府貨幣といわれるものである。中央銀行が政府に直接お金を渡すことであり、リーマンショックの時に行ったことを再現しているのである。極めて簡単、中央銀行が政府の通帳に2兆ドルと印字するだけである。

そしてこれがバーナンキがリーマンシッョクの時に行った行ったヘリコプターマネーのことだ。

筆者はMMTのすべてが正しいとは考えてはいないが、経済を理解するにあたって新しい視点を切り開いたと感じている。一番は、スペンディング・ファーストという話。まずは貨幣が発行されてこそ、経済取引が始まるんだよ、という話である。以前、古代史という貨幣の成り立ちに絡めて解説した

◆米国と日本の財政制度の違い 「社会保障基金国債」の創設に向けて

米国の状況だけを見ると異世界の話で何を言っているかわからないだろう。景気が気になる人がNHKの「国会審議」を見ても、いらいらするばかりだろう。どうして、米国はあんなに巨額の予算の話が出来て、日本は「できない」の一点張りなのか。

実は巨額の財政支出は、日本でもできる。スペンディング・・ファーストとは法律で禁止されている日銀の直引き受けのことである。つまり、法律を改正すればできるのである。別の方法もある。国債の発行である。赤字国債もしくは新しい名前の国債を作り、発行する事だ。

いま日銀は市場から国債をもっと買いたいと思っているが、市場が売ってくれない。市場に国債が足りないのだ。この低金利なのに、銀行や保険会社が国債を手放さないのだ。市場は国債を求めているので50兆でも100兆でもいくらでも政府が国債を発行すれば買う。日銀が目標を達成するまで絶対に日銀が買ってくれることが分かっているからだ。

どんな名目の国債であってもよい。それが貨幣愛が行きついた世界、デフレが蔓延した、もしくは恐慌が引き起こす世界で起きていることなのだ。

この先、世界各国、ユーロのような共通通貨を持つ国々は異なるが、それ以外の国、米国、オーストラリア、イギリス、スイス、中国・韓国、アジア諸国は巨額の財政を組んでくるだろう。そして、統一通貨を持つユーロは沈んでいくだろう。

しかし、このままでは一番負けるのは日本だ。世界の財政と金融の拡大の流れについていけていないからだ。Reflation政策、世界は通貨再膨張政策に乗り出す。日本もその流れについていかなければ、リーマンショックの時のような大幅な円高に直面する。

今しかない。いま、大量の国債発行を行い、需要の低下を埋め合わせるとともに、医療関係者のバックアップ体制を取って、一人でも命を救うことだ。

◆日本の課題

日本は、このタイミンクでケルトンさんの解説に気付かないといけない。

Watch what's happening now. Learn from it. And when we get through this crisis--and we will--let's come out with a new-and-improved understanding of the spending capacities of a currency-issuing government. We're going to need it.

今何が起こっているか見てください。それから学びましょう。そして、私たちがこの危機を乗り越えたとき、そして私たちは、通貨発行政府の支出能力について、新しく改善された理解を得ようと思います。それが必要になります。

コロナウイルスで死ぬか、経済的苦境で死ぬか、死ぬことに変わりはない。しかし、医療で助かる命があるように、経済的苦境で死ぬことを防ぐ手立てもある。

私たちが直面しているのは医療の問題だ。イベントの中断、ライブハウス、フィットネスセンターの閉鎖、旅行や飲食店の低調などは、すべて医療にかかわって求めに応じて起きた事態であり、医療の専門家から感染症の広がりを防ぐために求められていることだ。だから、医療の一部として社会保障費で支払われるべきものである。

今回のコロナウイルス対策に関わる内容をすべて新規の社会保障国債発行で賄えばいい。そして、財源は考えなくていい。米国のコロナウイルス対策予算で起きていることは、日本にそれを教えてくれている。

今回の事態は千年に一度どころか、数千年に一度の事態、人類が初めて直面する危機である。その危機にあたって、国民全員でその危機を乗り越える必要があるのだ。一部の人々のことと思っている議員・公務員、いや国民全員に言いたい。グラフが示すように、国民国家全体の話なのだ。

そして、年金の問題、少子化の問題、介護の問題。これらすべてすべて社会保障費に関わることだ。充分に物価が上がるまで、国債を発行して市場に販売し、日銀はマネーを供給すればよい。そして消費税を廃止し、社会保険料を下げればよい。行き過ぎたときにはじめて、消費税を上げれればよいだけだ

いま、消費税減税に反対する人は、リーマンショックで何が起きたのかを全く理解できていない経済のわからない人だと思ったほうが良い

多少英語が出来て、経済の興味のある人ならば、すぐに私の考えに気が付くはずである。いま、まさに危機の時だからこそ。

私たちは将来の医療費や年金の増加に向けて、44%もの大幅な国民負担を強いられている。果たしてそんなことが必要なのだろうか。

通貨発行益を利用して、そこから財源を得ればよいだけの話である





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