見出し画像

【2022年】3月に出会った本/映画/場所

3月は、菜の花畑を見に行こう!と初めて神奈川県二宮町へ。本を読みながら電車に乗ること1時間半。久しぶりに海も見れて、気持ちのいい休日を過ごせました。
そのほか3月に出会ったものたちを感想とともにご紹介します。

『成人発達理論による能力の成長』 加藤 洋平

成人発達理論とは「知性や能力が一生をかけて成長を遂げていく」という理論。提唱したロバート・キーガンの『なぜ人と組織は変われないのか』の中での免疫マップの話が面白く、もう少し詳しく学んでみようと思って、この本を選んだ。
内容は人の器(度量や人間性)の成長モデルを中心にそのメカニズムやプロセスを解明したロバート・キーガンの話ではなく、能力(スキル)の方の成長について提唱したカート・フィッシャーの「ダイナミックスキル理論」の実践法を紹介している。研修の参考になるので要約・図解をすすめるとともに資料として持っておきたい一冊。

『園芸「コツ」の科学』 上田 義弘

土づくりからタネまき、肥料、水やり、剪定、病害虫など各段階での植物栽培の「なぜ」がわかる本。ネットで疑問を打ち込んで調べれば解決法は出てくるが、「どうすればいいか」より「なぜそうなるのか」を知りたい性質なのでこういう本に出会えて嬉しい。

『信頼はなぜ裏切られるのか』 デイヴィット・デステノ

刺激的なタイトルだが、信頼とは長期的な利益をとるか短期的な利益をとるかであり、誠実さだけでなく相手の能力も無意識に判断しているという話。
そもそも心はどうやって信頼することを学ぶのかを解説する章で、「幼い子どもが両親など、自分と似ていて安心できる相手から学びたがるが、初等教育の初めにはすでに自分との類似性や気安さへの関心は薄れ、能力や専門領域を重視するようになる」という実験が面白かった。誰かを信頼するときには「あの人は信頼できるか」ではなく「あの人は、現時点で信頼できるか」を問い、過去からの評判ではなく相手の行動の動機を推測する。ということは心に留めておきたい。

『ひみつのしつもん』 岸本 佐和子

「面白いエッセイだよ」と知人におすすめされて読み、読了後に著者がルシア・ベルリンやミランダ・ジュライの小説の訳者だと気づいた。(もちろん名前は知っていたし、本も読んでいたのに同一人物だとなぜか思いつかなかった。アンソロジー『楽しい夜』が好き。)
日常の中の妄想力が爆発していて良かった。

『雨の島』 呉 明益

ネイチャーライティングという分野から創作をスタートさせた台湾の作家・呉明益さんの動物や植物と人間の調和×SFの不思議な短編集。
全編に共通するのは“クラウドの裂け目”(個人のクラウドドライブのパスワードを解読し侵入して、ドライブの所有者の人間関係を解析することで、所有者に近しい誰かにドライブの〈鍵〉を送りつける)という架空のコンピュータウイルスが存在する世界。登場人物たちは、親しい誰かの〈鍵〉を突然受け取り、その彼/彼女の記憶を見るのかどうかを決めていく。途中、何度か良さそうかもと思いつつ浸りきれなかったので、呉さんの他の本を読んでからもう一度読みたい。

『N』 道尾 秀介

「全六章。読む順番で、世界が変わる」という実験的な小説。読者が自分で読む順番を選ぶことができ、そのままの流れで読みにくくするために章ごとに上下逆さまに印刷されている。
デビュー作の『向日葵の咲かない夏』が出たとき、その叙述トリックに「すごいことしてくるな、このひと」と思ったが、昨今の『いけない』の最後の1枚の写真で事件の真相がわかる仕組みも然り「こうしたら新しい読む体験を読者に提供できるのでは」という部分が本の仕組みにまでいっているのが面白い。内容的には登場人物がリンクしているので、途中「こっち先に読んでからあの章読んでたらどんな気持ちだったんだろう」と考えて楽しめた。読んだ順番は623154。

漫画

『銀河の死なない子供たちへ』 施川 ユウキ (上・下巻)

上巻でもう人類がいない世界で暮らす不死の子ども2人と母の「永遠の命」と「終わらない日常」の世界を繰り返し描いて印象づけ、下巻で「成長」や「死にゆくこと」に対する尊さにもっていく話の構成がとても良い。登場から自作のラップを全力で歌う無邪気な姉と火の鳥の漫画を読んでいる天才肌の弟、あまりにも長いこと鍾乳石を見ていたら突き刺さってしまった母など、ユーモアの独特さも好きだった。

『月の番人』 トム・ゴールド

イギリスに住むイラストレータートム・ゴールドの絵本のようなコミック。人類が月でも暮らせるようになり何十年も経ったあとの世界で、主人公はそのコロニーの安全を守るために派遣された警察官。しかし月の生活に飽きた人々はつぎつぎと地球に戻っていき、彼は何ひとつ事件のおこらない月でひとり暮らし続ける。
オール2色刷りの単調なコマ割りの中で時折差し込まれる一面の絵(間)、低い位置で並行移動する乗り物、横顔しか見えない登場人物などが、この世界の静寂をよく表現している。すぐ充電がきれるポンコツのロボットも勝手に縮小されちゃうマンションも主人公が日課的に買うドーナツとコーヒーもどれもさみしくて愛せる。静かな作品なので夜寝る前にときどき読み返したくなる。

映画

『燃ゆる女の肖像』 監督セリーヌ・シアマ

2020年 フランス

18世紀のフランス・ブルターニュの孤島を舞台に、望まぬ結婚を控え修道院から呼び戻された貴族の娘と、その結婚のために彼女の肖像画を描くことになった女性画家のラブストーリー。
絵画のように美しい画づくり、視線の演出、時代背景の中でそれを求めながらも遠い存在であった音楽(音)の存在感、その集大成のラストの長回しに「圧倒的にすごいものを観た」という気持ちで溢れた。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』 監督オリビア・ワイルド

2020年 アメリカ

勉強漬けの学生生活で希望の進学先を手にした女子高生2人組がパリピ野郎と思っていた同級生たちも皆優秀な大学に進学することを知り、卒業前夜のパーティー参加のために奮闘するコメディ。
あらすじを見て「こういうシーンがあるだろうな」と想像した人種や性的マイノリティへのスクールカースト的な展開が全く出てこず、ただただ目標に向かって突き進む2人を楽めた。知らぬ間に「学園モノ」の映画はアップデートされていたのだなと感じた。(派手な同級生も有名大学や企業に進学することから優秀な人物が集まるリベラルな高校という設定というのもあるかも)
卒業前の最後の1日で「私とあなたたちは違う」とお互いに頑なだった人たちが異なるコミュニティの相手の違う一面を知り、理解していく。同級生のキャラクター設定も魅力的で神出鬼没のジジがお気に入り。

場所

吾妻山公園(神奈川県二宮町)

吾妻山公園には1年中咲きほこる花々や、包み込むように生い茂る木々に囲まれた小道があります。頂上には湘南のここちよい潮風を受けながら相模湾を一望できる展望台もあり、穏やかな時間の中で自然を満喫できる公園です。
二宮町ホームページより

見頃は少し過ぎてしまったが、どうしても菜の花畑が見たかったのでTwitterのキーワード検索で見つけた神奈川県の吾妻山公園へ行ってみた。
東海道本線の二宮駅を降りて徒歩5分で公園入口。そこから階段そして山道を登り、標高136.2メートルの展望台までは約20分ほど。山頂付近には全長102メートルのローラーすべり台もある。(すべってみた。長かった)
菜の花畑の向こうは桜の木が並ぶ。登山の先の開けた展望台はひろびろとして空気も清々しく、軽い運動にもできて四季折々の美しさを楽しめそうな良い公園だった。

梅沢海岸(神奈川県二宮町)

吾妻山公園から徒歩10分ほどの距離にある梅沢海岸。この日は人が少なかったが、浜があり、防波堤があり、無料駐車場があり、トイレも完備していることから釣りやイベントなどで訪れる人も多いとのこと。お昼に食べた海岸近くにある「生竜(うりゅう)」の塩ラーメンも美味しかった。公園もあって海もあって二宮町、良いところ。


以上、3月に出会ったものたちでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?