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車いすでワーキングマザーの私が管理職に。「困ったときはお互い様」の精神で、誰もが働くことに希望が持てるチームでありたい

スタッフサービスグループの特例子会社である株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート(以下、SSBS)では、多様な障がい特性のある社員が活躍しています。同社が注力しているのは、誰もが働きやすく、力を発揮しやすい職場づくり。さまざまな制約のために働き続けることが容易ではなかった人たちが、自分の持ち味を活かして仕事をするには、どのような仕組みや体制が有効なのでしょうか。

SSBS 総務人事部 ゼネラルマネージャーの手嶋てしま ちからと、身体障がいがあり、子育てをしながら管理職として働く稲田いなだ ひとみにインタビューしました。



ダイバーシティ&インクルージョンが加速する社会。多様性を活かす職場の実現が急務

昨今は、多様な人材が組織に集まり一人ひとりが個性を発揮して価値を生み出していく、ダイバーシティ&インクルージョンの必要性が加速しています。女性やシニア、障がい者などの多様な人たちが活躍するには、誰もが働きやすい環境を整備することが必要です。それは物理的なバリアフリーや制度面を充実させるだけでなく、多様性を尊重し、違いを認め、活かしあうカルチャーをいかに浸透させていくかも大切だと言われています。

SSBSでは、スタッフサービスグループの特例子会社としてさまざまな障がい特性の社員を雇用してきた歴史から、多様性を活かしあう組織運営を大切にしてきました。「障がい特性で区別しないチーム運営」と「一人ひとりにあった、心と身体の健康サポート」を重視した職場づくりをおこない、約8割の社員が勤続5年以上、約半数が勤続10年以上を実現しています。(2023年2月1日時点)

また、近年では自身の障がいと向き合いながら、子育て・介護などと両立して勤務を継続する社員も増加。もともと根付いていたお互いの障がい特性を理解しながら協力し合う風土がベースにあるからこそ、障がいだけにとどまらないさまざまな事情を尊重しあい、誰もが活躍できる環境へとポジティブな変化を続けています。


「できない」ことよりも、「できる」ことに注目してチームで助け合う

手嶋 力(てしま  ちから)
株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート
総務人事部 ゼネラルマネージャー

SSBSでは障がい者への配慮を「長期的で安定的な能力成長や、常に一定の仕事の成果を生み出すために必要なこと」と捉えています。SSBS社員の障がい特性は身体、精神、知的…などさまざまです。また、高い能力を持つ人であっても体調に波があったり、仕事と治療との両立が必要であったり、体力面や精神面に不安があり就労継続に配慮が必要なこともあります。

そのため、「一人ひとりに任せられる業務内容や、適した任せ方が異なる」のが大前提です。一つの役割をチームで担当し、苦手なことやできないことは、別の人がカバーし合うようにしています。例えば、聴覚障がいのある人は電話対応は難しいけれど、その分パソコンの入力作業を対応。人工透析を受けるために15時に退社する人の仕事を、別の人が引き継ぐ。このような「助け合いの精神」を大事にしています。

チームで協力して仕事に取り組むうえで必要なことの一つが、業務を可視化すること。作業ベースで業務を細かく分解してマニュアルに落とし込むだけでなく、各作業を誰に任せられるかを可視化する目的で、個人が習得済みの業務に〇をつける「能力マップ」を作成しています。この能力マップは、管理者の手元に置いておくのではなく、チームのみんなに公開し相互理解を深めるためのツールとして使用しています。お互いの特徴を理解するときは、「できないこと」にフォーカスするのではなく、各々が「できること(役に立てること)」に注目するのが大切で、一人ひとりの個性や強みを理解し、「困ったときはお互い様」の気持ちを醸成することが、健全なチーム運営には欠かせません。

一方で、なんらかの制約を抱えながら働くことは不安も大きいので、職場の仲間の助け合いだけでなく専門家のサポートも重要です。SSBSでは、保健師4人と精神保健福祉士2人が常駐しており、現場の管理職と連携を取りながら、身体的、精神的に必要なサポートをおこなうことで安心・安全な職場を目指しています。

こうした取り組みを当たり前におこなってきた歴史があるため、育児や介護といった障がい以外の事情についても特別なことと考えすぎず、あくまでも周囲と同じ一つの事情として対応できている組織が当社には多いと感じます。また、障がい者の管理職登用では素質・能力・適性をフラットに見て総合的に期待できる人材を抜擢しています。できない業務があっても、勤務できる時間が短くても、構わない。管理職だけに完璧を求めるのではなく、チームで補い、チームで業務成果を生み出すという考え方です。

これは本質的には障がい者雇用だけの話ではありません。人は誰しも得意と苦手を併せ持ちますし、育児や介護との両立など時間に制約のある働き方も増えていくでしょう。そんなとき、一人では無理でも、チームで補いあえば良い。このような考え方が社会全体で広まることで、多様な人材活用が進んでいくと考えています。


どんな立場になろうと、働くことは私が私であるために必要なこと

稲田 瞳(いなだ ひとみ)
株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート
サポートセンター統括部 西日本サポートセンター一課

私が車いす生活になったとき、三人の子どものうち末の子は小学生になったばかり。まだまだ手がかかる時期で、本当に大変でした。それでも私は働くことを諦めたくなかった。友人の紹介でSSBSに巡り合い、業界も職種も未経験で入社しました。車いすで働くことも初めてでしたが、新たな人生を生きる気持ちで挑んだのです。

しかし、そんな意気込みとは裏腹に、私は入社直後に2度体調を崩して入院。かつての自分と同じようには身体が動かないことを頭ではわかりつつも、つい頑張りすぎてしまったのです。それは、育休から復帰したときに、出産前のように働けない自分に愕然とした気持ちに近かったです。もう昔のようにはいかないんだと現実を突きつけられたようでした。

そんなとき、一緒に働く先輩や同僚の存在が支えに。働きはじめたばかりで休んでしまい恐縮している私に、「大丈夫?無理はしないでね」と温かな言葉をかけてもらったことに救われました。SSBSでは急に体調を崩したり、通院や治療などで勤務時間が一定でなかったりと、それぞれの事情があるのが当たり前。困ったときはお互い様だと、チームで助け合う風土があるおかげで、安心して働くことができたのです。

もちろん、その後も悩みや葛藤にぶつかることはゼロではありませんでした。自分の特性が原因で人一倍時間がかかったり、工夫をしないと他の人と同じようにはできなかったりすることも。でも、なにごともやり方次第と捉え、どうしたらできるのかを考え抜くうちに、自分ができることと、助けが必要なことを周囲にきちんと伝えることが大切だとわかってきました。すると、家族や職場のみなさんが私のことを受け止め、理解し、力を貸してくれたのです。そんなみなさんがいたからこそ、私は仕事でさまざまな経験を積むことができました。

2019年10月からマネージャー職に。ほどなくしてコロナ禍に突入し、急遽在宅勤務になったことも重なって、管理職として早々に難しい局面がやってきました。でも、このときもチームの仲間が新任マネージャーの私を支えてくれました。離れて働くメンバーに声をかけると、「稲田さんこそ大丈夫?」と心配してくれ、「こうしたらいいんじゃない?」とアイデアも投げかけてくれました。先頭でチームを引っ張っていくことだけが管理職の姿ではない。マネージャーの私もチームの一員として、困ったときやできないことは明るく相談し、みんなで力を合わせて組織を運営すれば良いと思えるようになりました。

だからこそ、今の私が大切にしているのは、困ったときはお互い様であると同時に、一人ひとりがゼロ対ゼロの対等であること。「できないことは誰にでもあるけれど、それを自分の得意なことやできるところで補って、フラットな関係性でいること」が健全なチームには必要だと思っています。

これからもチームで価値を発揮することを大事にし、より広い範囲で障がい者雇用に携わっていくのが私の目標です。まだまだ障がい者にはさまざまな場面での選択肢の幅が狭く、目の前のことで精一杯という人も多いです。諦めや妥協の現実を実感する一方で、SSBSで自分の可能性が広がったからこそ、一緒に働く人たちにも自身の可能性の広がりを感じてもらえる場面を増やせたら嬉しいです。

またそれは、障がい者に対してだけでなく、世の中の多くの働く女性に対しても同じ想いです。私は妻になっても、母になっても、車いす生活になっても、仕事を続けることを選択しました。どんな属性も関係なく自分が自分でいられる時間が、仕事だったからです。私が仕事を続けられたのは、信念と周囲のみなさんのおかげ。だからこそ、これからは自分と同じように障がいのある方や働く女性など、諦めそうになっている誰もが、希望を持ってチャレンジできるよう、教育面からサポートしていくことにも挑戦したいです。

家族と過ごしている様子

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