SPORTS SENSINGスポーツ科学研究室

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    マガジン

    • 動かして学ぶバイオメカニクス

      読者が全身の逆動力学解析(力,トルク等の解析)のプログラムをご自身で実行し確認できるようになることを目標とする.

    • The Sports Biomechanics Geek

      体系的ではなく,トピックスを選択し,少し数学的・物理的に突っ込んだ話題を取り上げる.個人の感想です.

    • 筋肉と筋電計測

      筋電計測の実際について述べます.

    • フォースプレートによる床反力計測

      フォースプレートの計測原理,フォースプレートで計測される物理量の意味など

    • モーションキャプチャーによる運動計測

      モーションキャプチャーを使用した計測原理,計測方法についてまとめていきます.

    最近の記事

    動かして学ぶバイオメカニクス #22 〜全身の角運動量とCOP〜

    フォースプレートで直接計測される力学量は力と力のモーメントで,これらは身体と地面(フォースプレート)間の相互作用で発揮される力である.そこでフォースプレートの代わりに身体側から相互作用の力とトルクを推定できれば,関節に作用するトルク,COP,摩擦による鉛直モーメントも計算でき,原理的にはフォースプレートいらずの力学計算が可能となる.これを理解し実現するため,ここでは角運動量ベクトルの物理的意味に注目する. はじめに合成の角運動量 角運動量(angular momentum

      • 動かして学ぶバイオメカニクス #21 〜関節のインピーダンスの可視化〜

        こでまでのエネルギーに関する議論では,エネルギーの流れを可視化し(第16章),さらにその流れを構成する力ベクトルと速度ベクトルに分解した(第18章).第19章ではエネルギーの流れを構成する力と速度から,流れの抵抗(インピーダンス,力と速度の比)を導入した.ここでは,実際の運動中の力と速度の関係図を示す. はじめにたとえばボールなどの速度を増加させることは,ボールの力学的エネルギーを増加させることを意味する.力学的エネルギーは重力によるポテンシャル(位置)エネルギーと運動エネ

        • 動かして学ぶバイオメカニクス #20 〜Google Colaboratoryの使い方〜

          紹介したPythonコードを確認したいが,Pythonの開発環境を整えることまでされたくないという方のために,このシリーズではコードをGoogle Colaboratoryで確認できるようにしている.ただし,紹介したコードを実行するためには,モーションキャプチャやフォースプレートのデータが必要となる.これらをダウンロードし,Google Colaboratoryで利用する方法を補足しておく. もし,Google Colaboratoryで計算を行わない場合は,ファイルに保存

          • 動かして学ぶバイオメカニクス #19 〜身体運動におけるインピーダンスマッチング〜

            大きな力を与えれば与えるだけだけ速度が大きくなると考えがちだ.しかし,暖簾に腕押しの状態では力は「有効に」伝わらない.エネルギーの伝わり具合は,その運動の「状態」に強く依存する.ここでは状態に応じたエネルギーの「流れやすさ」を記述し,効率よく伝達するための「流れやすさ」の変換方法などについて述べていく. はじめに前章では効率良い動力伝達のために,力学的エネルギーの時間変化(仕事率)が力ベクトルと速度ベクトルの内積で記述されることから,それらのベクトルの方向を近づけることで効

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          • モーションにおける3次元回転
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            動かして学ぶバイオメカニクス #18 〜動力の力ベクトルと速度ベクトルへの分解〜

            前章では力学的エネルギーの流れを可視化した.そのエネルギーは方向を持たないスカラ量である.解析する上でこれは都合が悪い.スカラでは3次元空間で複雑に動く身体運動において方向の議論ができなくなってしまう.しかし,エネルギーの時間微分は力ベクトルと速度ベクトルの内積で計算できる.つまり力と速度に分解してしまえば,それらはベクトルなので方向の議論も可能だ.ここではこの利点をいかし身体運動における動力伝達のメカニズムを考える. はじめに時間も含めれば運動の自由度は無限に近い.その無

            動かして学ぶバイオメカニクス #17 〜動力伝達の可視化〜

            全身に作用する力とトルクが力学的なエネルギーの流れをもたらすことを前章で示した.トルクと異なり,実質的な運動の効果はこのエネルギーの変化のほうが観察しやすい.ここでは,それらを可視化する方法を示すが,この方法は一例に過ぎず,示し方は工夫次第だ. はじめにこの章では,第16章で述べた力学的エネルギーの時間変化を可視化するコードを示していきたい.次章で運動中の力ベクトルと速度ベクトル,さらにはインピーダンスという観点で効率について考えていく予定でる. 図1は飛び降り動作(左)

            動かして学ぶバイオメカニクス #16 〜動力の伝達〜

            特にロボットの運動との対比を考えると,恐らく身体運動を最もヒトたらしめるものは効率で,運動を行う上でこの呪縛からは逃れられないだろう.ただし,身体の運動における効率を考える上で,一般に機械工学などが定める効率の定義は役立たない.ここではエネルギーの時間微分が力と速度の内積で記述されことを利用して,身体運動における効率を考えるいとぐちについて述べていく. はじめにエリートアスリートのダイナミックな動きは発揮する力の強さの賜物だろう.しかし,これまで述べてきた運動方程式を用いた

            動かして学ぶバイオメカニクス #15 〜3Dでスティックピクチャを動かす〜

            今回は数理的な話題はお休みとし,アニメーションを動かすようにインタラクティブにデータを表示する方法を示す.ロジックを検証する方法,考えを可視化する方法としてこのようなツールも重要である.アイデアやPythonの知識次第で,いろいろな表示方法が可能だろう.ここで紹介する方法はひとつの方法に過ぎないが,読者の便利なツールとして発展させるきっかけになってくれればと思う. はじめにで示してきたように,角度やトルクのグラフを見ていても,実際の現象を想像するのは困難で,得られた計測デー

            動かして学ぶバイオメカニクス#14 〜関節に作用するトルクの物理的意味〜

            多体系の合成の「ニュートンの運動方程式」の物理的意味は明瞭である.もし床反力が身体に作用しているなら,床反力が操作できる唯一の外力となり,それは身体重心の加速度で定まり,全身の運動の仕方を拘束する. 一方,「オイラーの運動方程式」から関節に作用するトルクの意味を考えるためには,同様に合成の運動方程式を導く必要がある.しかし,これまで示した合成の回転の運動方程式には並進力が式に混在し,この式ではトルクの物理的意味がわからない.そこで,並進のダイナミクスと同様に,回転の合成の力

            動かして学ぶバイオメカニクス#12 〜全身の力学解析(コード編)〜

            このシリーズの目的を「関節に作用するトルクを計算すること」としたことを反省している.その計算コードの構築を通して,身体の力学の物理的意味を理解することと述べておけばよかった.いずれにせよ,オイラーの運動方程式を解きニュートン・オイラー法で並進力と回転力を計算する準備が整った.本章では,それをコードに落とす.このシリーズは,これで終わりではないが,一つの大きな区切りを迎えた.このPythonコードを正しく使いこなすには,あくまでもこれまで述べてきた内容の物理的・幾何学的意味,ア

            動かして学ぶバイオメカニクス#13 〜全身の力学解析(補足)〜

            前章でコードを全て示した.ここでは,第11章と第12章を振り返りながら,力学計算とコードについて補足する. オイラーの運動方程式の解法再帰呼び出しによるオイラーの運動方程式の解法は第11章で述べたが,ここでは第12章で示したコードとの関係を補足する. 座標変換 オイラーの運動方程式では,部位$${i}$$の慣性力は各部位(link)に固定されたローカル座標系で一旦計算するほうが有利であり,一方,モーションキャプチャを使用して力のモーメントやトルクを計算する場合は絶対座標

            動かして学ぶバイオメカニクス#11 〜全身のオイラーの運動方程式〜

            このシリーズので目標は,関節に作用するトルクを計算することであったが,この章で,オイラーの運動方程式を解きニュートン・オイラー法で並進力と回転力を計算する準備が整う.ここでは,フォースプレートによる外力の計測も考慮し,身体の多関節構造を考えた全身の回転の運動方程式を完成させる. オイラーの運動方程式の慣性力の計算運動方程式は,計測環境などによって計算方法を適切に考える必要がある.ここでは,フォースプレートとモーションキャプチャで計測することを意識し,全身で関節に作用するトル

            動かして学ぶバイオメカニクス#10 〜角速度ベクトル〜

            オイラーの運動方程式の計算においては,前回の姿勢角度行列から角速度ベクトルを計算し,慣性モーメントとその角速度ベクトルから慣性力を計算することになる.角速度ベクトルの計算自体は簡単であるが,ここではその幾何学的意味を考える. 角速度ベクトルの幾何学的意味と計算角速度ベクトルの計算 角速度ベクトルの意味と導出は, の補足2で述べたので,そちらを参照していただきたい.簡単におさらいすると,回転行列$${\bm{R}}$$は,直交行列であるため, $$ \bm{R}^T =

            動かして学ぶバイオメカニクス#9 〜身体各部の座標系〜

            身体に固定された座標系(原点+姿勢回転行列)は解剖学的な関節角度の定義に関係するが,回転の力学で厄介な問題の一つがその座標系の定義である.数理的というよりも,これを決める作業はどろくさく定義が人によって大きく異なるかもしれない.また計測するマーカの配置にも強く依存する.その意味で,ここでの方法は参考にならないかもしれないが,計測環境に応じて自在に座標系を定義できる力を養っていただけたらと思う. 身体座標系(ローカル座標系)の定義身体各部位のローカルな座標系の定義は,ISB(

            動かして学ぶバイオメカニクス#8 〜身体の慣性モーメント〜

            回転の運動方程式を解く上で,個人ごとの慣性モーメントが必要となる.ここでは,第3章で紹介した同じモデルを使用して,身体各部位の慣性モーメントを計算する方法について述べる.   おさらい第3章で身体重心と質量分布のモデルを示した.このモデルは日本人のアスリートの体形を計測し,体形を均一な密度の楕円の厚みのある板で近似し,身体各部の重心と質量を計算し,体重と身体各部位の長さで記述された統計モデルが構築されていた. 第3章では,各部位の重心位置と質量を算出したが,ここでも同じ

            動かして学ぶバイオメカニクス#7 〜オイラーの運動方程式と慣性モーメント〜

            本章から逆動力学計算を利用して関節のトルクの計算について述べていく.ニュートンの運動方程式と同様で,回転の運動方程式も再帰的に解くため,必要に応じてこのシリーズの復習も行っていただければと思う.なお,今回は実際にコードを動かして確認する作業は含まれない.次のステップに向けての数学的な準備にとどまる. 回転のダイナミクスここで取り上げる逆動力学解析における剛体の運動方程式は,並進の運動を記述するニュートンの運動方程式(Newton's motion of equation)と