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Sports Biomechanics Geek #5 〜スイング運動の回旋運動における自然さ〜

投球動作(ただしファストボール)のリリース前後の前腕の回内運動や,ゴルフスイングのインパクト前後のシャフト軸まわりの回転運動のように,スポーツのスイング運動のリリースやインパクト近くで回旋運動が目立つ.バイオメカニクスの研究者の中には,このような回旋運動は,わざわざ肘関節に回内のトルクを与えずとも発生する「自然な運動」では?と考える人もいる.確かに,多くのスイング動作ではそのような回旋運動がともなうので,そのように考えるのは自然な発想だ.ではそれは本当に力学的に自然に発生する運動なのだろうか?一方,下肢や体幹でも,運動の中心は腰などの体幹長軸まわりの回転運動が中心である.これは明らかに動力を生み出すために必要な運動に思えるが,やはり回旋させることは力学的に運動の本質だろうか?前章では動力伝達における効率を考え,それがスポーツに限らずヒトの「自然な」運動パターンを形成し,さらにそれがトレーニングの特徴をも記述することを述べたが,ここでは異なる視点から回旋運動の「自然さ」を考える.



はじめに

スポーツのような身体運動は,ひねり・ねじりなどの回旋運動を中心に構成されている.回旋運動が目立つことから,それが運動のスキルの本質と考えがちだ.また,「運動連鎖」という概念を考えると順次性が大切で,特に腰,胸,腕などの回旋運動の連鎖で運動を記述し,そのような回転運動を強調することがトレーニングの本質と思えるが,はたしてそれは正しいだろうか.

冒頭の問いに対して結論を先に述べてしまうと,末端のスイング運動の回旋運動は力学的に自然に発生する力による回転ではない.仕方なく回旋しているというのが適切だろう.また,腰の回旋運動自体も動力伝達において必要な運動とは言えない.こちらもどちらかというと解剖学的幾何学拘束から,仕方なく腰を回していると考えた方が良いだろう.

本章と次章では,回旋運動の力学的な本質について考え,本章では特にスイング運動の回旋運動について考える.

スイング運動における前腕の回旋運動

身体運動における「回旋運動」とは,手や足などの末端を除けば,身体の各部位の長軸方向まわりの回転と定義することができ,関節間を結ぶ軸まわりともいえる.

以下の動画は投球のリリース後に前腕が回内している様子を示している.

これを見ると,顕著な左前腕の回内運動が観察される.ただし,カーブなどの変化球では回内運動は観察されないことにも注意されたい.

バドミントンのフォアハンドのスイングでも,インパクト前後で前腕の回内,ラケットのシャフト軸まわりの回転などが観察される.ゴルフスイングでは,クラブのシャフト軸まわりの回旋運動が観察される.

スイング運動における,これらの回旋運動はなにゆえ観察されるのだろうか?

力学を学んでいると,これをジャイロ効果(ジャイロ作用:補足1)と呼ばれる現象によって説明できるのではと考えてしまうかもしれないが,残念ながらこれは2つの理由で正しくない.ここで対象とするのは,クラブ,ラケット,前腕などで,そもそも,ジャイロ効果の例題で扱われる,コマや円板のような重心まわりに対象な構造ではない.また,コマのようにもともと大きな角運動量があることが前提だ.ジャイロ効果の議論を当てはめるには前提が成り立っていない.また,仮にそのような構造であったり,大きな角運動量が存在したとしても,実はこのような運動ではジャイロ効果は反対方向の回旋運動(回外運動など)の回転運動を引き起こす.投球運動における自然な回転方向は,むしろ反対方向(投球なら回外)の回転方向を向いている.

ジャイロ効果について,ご興味のある方は,文献1〜4などを参照されるとよいだろう(文献3は古すぎて手に入らないかもしれないが,例が豊富な良い教科書だ.図書館などで探してみるとよいかもしれない.文献4も,古くてますます手に入らないだろう.しかし,コンパクトで若干難しいが,重要なことがたくさん書かれた教科書である.昔の力学の教科書はそれぞれ個性があり参考になる教科書が多かった).

では,なにゆえ回内などの回旋運動が発生するのだろうか?それは,ラケットやゴルフクラブなどの道具の有無で多少事情が異なる.

道具を用いたスイング運動

前章

でも説明したが,スイング運動では,内力(拘束力,関節に作用する作用反作用の力でもある)によるエネルギー伝達が「自然な」スイング運動という運動パターンを形成している.安定なスイング運動実現のためには,手首のストッパー的な機構が必須だが,それ(ストッパー,図1参照)さえあれば大変位でもスイング運動(補足2:実際には振動ではなく過渡的な運動)は,力学的に安定かつ自然な運動パターンとなる.少なくとも構造的には二重振り子である.

図1:剛体二重振り子運動と蝶番関節

ゴルフスイング,バットスイング,ラケットのような道具を用いてスイング運動させる運動では,「腕」と「道具」がこの二重振り子(double pendulum)を構成する.スイング運動は,手首の部分で蝶番関節(球関節でも良い)のように動く必要がある(図1).図2に示すように,スイング中クラブの瞬間回転軸の方向はおおよそ同じ方向を向いており,クラブのスイング運動はクラブ全体がほぼ平面的な運動をすると言い換えても良い(補足3).しかし,実際には右手と左手で構成されるクラブと腕を接続する部分の構造は蝶番関節ではない.するとあたかも蝶番関節があるように平面的なスイング運動を行うためには,前腕の回旋運動が必要となる.

図2:ゴルフスイング時のクラブ(剛体)の瞬間回転軸(Helical Axis)とヘッドの曲率中心

ゴルフスイングのような運動は,スイング途中まで腕とクラブの角度を保っていれば(ストッパーのように固定していれば),カオスにならずに力学的に自然で安定な運動である.このようなスイング運動を行うことが飛距離を得るためには力学的に必須の運動となる.この意味ではクラブの回旋運動は必要ない.しかし,繰り返しになるがクラブと腕間は蝶番関節ではないので,スイング運動を維持するためには,クラブのシャフト軸まわりの回旋運動を行うしかない.腕や手に解剖学的な拘束のため,このような回旋運動を行うことでスイング運動を実現している.また,ボールに当てようという操作により,安定な運動に回旋運動を加えることも余儀なくされる.

このとき,クラブの慣性モーメントは腕と比べてかなり大きく,腕はクラブの遠心力によってかなり強く引っ張られる状況にある.

実際のスイング運動は少し複雑な3次元運動をしており,スイング運動中回内・回外や内旋・外旋などの腕の回旋運動がともなっている(図3)(補足4).

図3:ゴルフスイングにおける両手の回旋運動

また,特にゴルフクラブの場合は,特にシャフト軸から偏心した位置にヘッドがあり,やはり反対方向に(ヘッド位置がインパクト位置から遠ざかる方向へ)戻ろうとする性質がある.このことは,実際に力学解析を行えば確かめることができ,「回旋(回内)方向のトルクをヒトが与えないと発生しない運動」である.

バットスイングもラケットのスイング運動も,基本的には同じ理由から,トルクを与えて回旋運動が起こっていると考えられる.

なお,この回旋運動を与えるトルク自体はさほど大きくなく,そもそも小さいという点も重要かもしれない.ただし,小さいからヒトが容易に発揮できるかというと,それは別問題である.

ゴルフスイングなどでは,なにも考えずとも,安定で自然なスイング運動に引っ張られるように自然に,回旋運動のトルクを与えるしかない状況に追い込まれていると考えるのが自然だろう.

投球動作

図4:投球動作の回旋運動

一方,投球運動やバレーボールのアタックのようなスイング運動では,手先に道具を持たないため,道具の拘束を受けない.なお,野球の投球ではボールという道具を持つが,バットなどと比べて慣性モーメントが小さく無視して考えてもよいだろう.

また,ここでは前腕+上腕を一つの振り子とみなしているが(補足5),これを単振り子的に考えるか,さらに体幹以下を一つの振り子とみなして,二重振り子的と考えてもよいだろう.

いずれにせよ,このようなスイング運動では,「前腕の回旋運動を制御するために必要なトルクはさほど大きくない」というのがポイントだ.前腕の回内,回外のどちらの方向の回転のトルクも容易に与えられる.運動の目的によって比較的に容易に操作できる運動だ.別言すると自然な運動でなく,特に制約がなければ,運動の目的に応じてどちら方向の回旋運動も行える大きさだ.

前腕の回内運動は力学的に自然に発生する運動ではない:
 野球の投球では,どちらに回旋させるかはボールの回転の制御に影響を受ける.ファストボール(ストレート)では,肩の内旋運動と肘関節の伸展運動を行いながら,指先でリリースまでにボールに投球方向に力を与えることを続ける.このとき,ボールを制御するうえで,解剖学的・幾何学的拘束から回内運動が必要となる.しかし,カーブ反対方向の回転を与える際には回内よりは回外運動のトルクが優勢のときもある.

図5:前腕に作用するトルクの回内外成分

ここで,$${\bm{I}}$$を前腕の慣性テンソル,$${\bm{\omega}}$$を前腕の角速度ベクトルとすると,図5は,おおよそ最大外旋位からリリースまでのファストボールの投球中の,前腕に作用する慣性力$${\bm{I} \dot{\bm{\omega}}, \bm{\omega} \times \bm{I \omega}}$$と,肘関節に作用するトルクベクトル$${\bm{\tau}}$$のうち,「前腕の長軸まわりの成分(回内外成分)」を抽出したものである.負の値は回内方向を示している.

肘関節で回内方向にトルクを与えているが,慣性力$${\bm{\omega} \times \bm{I \omega}}$$の項は極めて小さい.もはや回旋方向も気にしなくて良いぐらい小さい.その意味で,最大外旋位後では「上腕の内旋運動の勢いやジャイロ効果で,前腕の回内運動を力学的に特に誘発していない」.

ラケットなどの慣性モーメントの大きな道具を持つ場合は,道具に引っ張られその影響を強く受けるが,大きな道具を持たない場合はボールの回転やインパクトなどの,戦略的な目的が回旋運動の方向を強く拘束する.たとえば,カーブを投げる,その反動動作による怪我を避けるように,さらに反対方向に回転させるなど.これらは,必ず何らかの目的から発生する運動である.

道具の有無に関係なく,自然に発生する回旋のトルクは小さく,前腕の回旋(回内外)運動はヒトが与えるトルクで左右される.力学的にそのような回旋方向の力・トルクを与えない限り,スイング運動の回旋運動は起こらない.

自然に発生する回旋のトルクが小さい数理的理由:

図6:前腕の座標系の例

数理的にこのトルクが小さくなることを示そう.ジャイロ効果に影響を与える式は$${\bm{\omega} \times \bm{I \omega}}$$で,その成分を示すと,

$$
\bm{\omega} \times \bm{I \omega} =
\begin{bmatrix}
\omega_y \omega_z (I_z - I_y) \\
\omega_z \omega_x (I_x - I_z) \\
\omega_x \omega_y (I_y - I_x)
\end{bmatrix}
$$

となる.図6に示すように,前腕の長軸方向を$${x}$$と定めると,前腕に発生する回旋方向のトルクは$${\omega_y \omega_z (I_z - I_y)}$$となる.ここで,$${I_z, I_y}$$は前腕の長軸に直交する軸まわりの慣性モーメントで$${I_x}$$より小さく,かつ,零ではないが$${I_z, I_y}$$の差は小さい.つまり,わずかな$${I_z - I_y}$$で発生するトルクは,小さくなってしまう.

なお,回旋方向$${x}$$の$${\omega_y \omega_z (I_z - I_y)}$$に関しては小さいのでもやは符号(方向)は気にしなくてよいが,リリース前の肘が伸展しているフェーズでは,図6に示すように前腕の座標系定義の関係から,図6のような解剖学的な角度定義と一致しなくなるため,議論を割愛する.

また,投球におけるリリース後の肘関節は伸展気味で,上腕と前腕は直線的に並ぶ.このことから,前腕の回旋運動は,肘関節の拘束から上腕の内旋運動に誘導されて自然に起きる成分も存在する.

なにゆえ回旋運動が自然な運動と感じるか?

そもそも「自然さ」など感じない方もいるかもしれないが...

スポーツに限らずヒトが行う身体運動に感じる自然さや美しさは,立ち振舞いや身のこなしにおける「所作」と呼ぶことがある.所作の美しさが,本当に力学的な自然さからくるものかはわからない.メジャーリーガのダイナミックで多様な動きに対して,日本人選手の動きは,どこか美しさもあるが,この違いは文化の違いから,つまり自然さとは無縁の理由から「運動パターンが形成されている」のかもしれない.

また,回旋運動にもどこか自然さを感じるが,それは力学的な自然な運動に付随して,幾何学的・解剖学的拘束や,運動の目的による拘束によって発生していることに注意をされたい.しかし,我々がそのような回旋運動に自然さを感じる理由は,前章で述べた動力を効率よく伝達する運動に感じているだけだろう.

このような内容であれば,最後に示した式などによる理論的な考察である程度判断が可能であるし,実際に運動データがあれば(たとえば前腕にモーションセンサを取り付け,角速度を計測するだけでもよい)確認ができる.


おわりに

身体運動は当然,厳密に力学法則にしたがって運動する.

また,身体運動は生物の運動である以上,生命の原理が運動を強く拘束する.したがって,生命特有の問題,スポーツ特有の拘束がいかに我々の身体運動を拘束するかという観点で身体運動やスポーツ運動のバイオメカニクスを記述する必要がある.このような拘束は物理法則と比べると緩い拘束だ.我々の運動には冗長性があり,多様な戦略を許し,個性を生む.それゆえスポーツは見ていて楽しい.

次章では体幹などの大きな動力を生み出す側の回旋運動の意味について考えていきたい.

自然さという切り口では,冒頭でも取り上げたが,「運動連鎖」という順次性も代表的なところだろう.前章ではSSCに否定的な意見を述べたが,それと関連すると「反動動作」も,我々の身体運動で観察される「自然な」運動パターンである.これらについては,またどこかで述べていきたい.

補足

補足1:ジャイロ効果

前章でもお話した故小林先生の授業では必ず登場する内容に,ジャイロ効果の実演があった.授業でも盛り上がる実演であった.コマやブーメランなど,ジャイロ効果の説明の仕方はいろいろあるが,小林流の回転円板(自転車の車輪)を用いた例を示す.

図7:車輪の旋回

図7の車輪(円板)のハンドルを支えながら

  1. 車輪を$${x}$$軸まわりに角速度$${\omega_x}$$で勢いよく回転させる.

  2. 次に,ハンドルを左右に傾けながら,$${y}$$軸まわりに角速度$${\omega_y}$$に回そうとする.

すると,(原理を知らない人は)あら不思議,

3. 正の$${z}$$軸まわりの回転が発生し,

ハンドルが勝手にきられて,自転車なら左方向に回る方向に車輪の向きが変わってしまう.

下記の動画(音声あり)は,結果手に発生する回転が,椅子ごと回ると少し状況が異なるが,同じことを示している.これは自転車のハンドルを切る動作と同じであることを示している.つまり私達はハンドルを回すことで,自転車の進行方向を変えていると考えがちだが,車輪が高速に回転しているときは,自転車を左右に傾けることで方向転換していることを示している.


ここで,注意が必要となる.ジャイロ効果は円板,ブーメラン,コマなど慣性モーメントが一番大きい軸まわりの角運動量が主として存在し,重心まわりの回転を中心に行っている場合などにある近似が成立する.

つまり,剛体の$${\bm{I}}$$を慣性テンソル,$${\bm{\omega}}$$を角速度ベクトル,$${\bm{\tau}}$$をトルクベクトルとすると,剛体のオイラーの運動方程式は

$$
\begin{aligned}
\bm{I} \dot{\bm{\omega}} + \bm{\omega} \times \bm{I \omega} = \bm{\tau}
\end{aligned}
$$

と書けるが,ある軸まわりの回転が主体で安定となり,

$$
\bm{I} \dot{\bm{\omega}} \approx \bm{0}
$$

とみなせる場合に成立し,角運動量を$${\bm{L} = \bm{I} \bm{\omega}}$$とすると

$$
\begin{aligned}
\bm{\omega} \times \bm{I \omega} &\approx \bm{\tau}\\
\bm{\omega} \times \bm{L} &\approx \bm{\tau}
\end{aligned}
$$

が成り立ち,これより前述の議論を可能とする.

ここで,前述の車輪の例を持ち出し,議論をわかりやすくするため,この式を

$$
\bm{\tau} = \bm{\omega} \times \bm{L}
$$

と順序を入れ替え,さらに先程の車輪の回転軸を明示すると

$$
\bm{\tau}_z = \bm{\omega}_y \times \bm{L}_x
$$

と書くことができる.この式は,外積の性質から$${x}$$軸まわりの回転に,$${y}$$軸の回転を与えると,それらに直交する$${z}$$軸方向のトルクを発生することを示している.

すなわち,車輪軸$${x}$$まわりの角運動量$${\bm{L}_x=\bm{I \omega}_x}$$が大きく安定で,$${x}$$軸まわりの角運動量を一定にしようとするとき,つまり前述の1の$${\bm{I} \dot{\bm{\omega}}_x}$$が変化しないように安定なときに,2の$${y}$$軸まわりの回転を与えることで,3の$${z}$$軸まわりのトルクが車輪に発生してしまうことを,この式が示している.

しかし,例えば投球の前腕の運動は主として肘関節まわりの内旋運動が中心の運動だが,図5でも示したように,そもそもこの近似が成り立っていない.また,$${\bm{\omega} \times \bm{I \omega}}$$の項は小さいこともあるが,反対方向の回転が発生していることにも注意されたい.

補足2

例えば,腕とクラブは物理的な構成としては二重振り子だが,これは振動ではないので注意をされたい.その意味でこれを二重振子と呼ぶには抵抗があるが,構造が二重振子と捉えるのが良いだろう.区別してやはりスイング運動と呼ぶのが適切だ.

補足3

ゴルフスイングでは回転軸はとくに一定である.ただし,ゆっくりと平面が移動しながら運動する.

補足4

クラブの運動は平面的だが,厳密には少し複雑な運動だ.図3はクラブの瞬間回転軸(helical axis)(緑色の矢印)を示している.瞬間回転軸は剛体の運動を一つの回転運動で記述している.ただし,ここではクラブのシャフト軸まわりの角速度成分を除くことで,クラブの運動をわかりやすく示している.軸方向がおおよそ同じ方向を向いているので,おおよそ同じ回転軸ではあるので平面的な運動を構成しているといえる.しかし,クラブヘッドのある曲率中心(center of curvature)を描くと,それはスイング中移動しているので,クラブ全体は平行移動しながら動いている.

ここでは,これらの物理量の意味を説明していないが,スイング運動における瞬間回転軸と曲率中心はスイングの特徴と意味を可視化してくれる(図8).

図8:アマチュアとプロのスイング時のクラブの瞬間回転軸(シャフト軸まわりの回転を除く)の比較

補足5

一見すると,「上腕」と「前腕」がそれぞれ振り子を構成し,手を無視し腕全体で二重振り子を構成すると考えがちだ.

しかし,肘関節を蝶番関節とみなすとその軸方向に注目すると,とくにリリースやインパクトに向けて,その軸方向と投球方向などはおおよそであるが一致している.この状態では,力学的に力発揮方向だけ考えると,腕全体は伸縮するひとつの棒とみなすことができる.なぜなら肘関節はその方向に対してロックされている(動かない)からである.

そこで,投球動作の投球方向に関しては,「上腕」+「前腕」全体で伸縮するひとつの腕と考えることができる.

図9:可変長振子としてみた腕

参考文献

1)小林一敏,スポーツの達人になる方法(テクノライフ選書),オーム社,1999

2)広瀬茂男,機械工学選書,ロボット工学ー機械システムのベクトル解析ー,裳華房,1987

3)V.D. バージャー,M.G. オルソン,力学ー新しい視点に立ってー,培風館,1975

4)鶴井明,工業力学,培風館,1986



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