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椿雪花@世界と繋がりたいコミュ障ライター
2020年9月4日 12:22
忘れられないことがある。それは、時が経てば経つほど、真綿のように優しくわたしの首を絞めていく。 まだ子どもだった頃に起こった悪夢のような出来事。それから25年経ち、愛する人と、これから生まれてくる愛しい命に恵まれても、真綿の紐は、わたしの首を捉えて放すことはない。ふとした瞬間に、脳裏をよぎるのだ。あの子は、この世に生まれて幸せだったのだろうかと。いつも、いつも。わたしの頭を悩ませていた疑問は
2019年9月15日 09:44
「もう冬か」「まだ夏だよ」いや、秋か。と一人呟く男を見て、もう少し面白い返しはないのかと呆れた。真面目すぎる。「0点」「低すぎる」返事をしただけなのに酷い仕打ちだな。男が存外楽しそうに言う。あなたの返しはちっとも面白くないのだけど。目で訴えると、男は苦笑を漏らした。「わかりやすい?」「結構、わかりやすいよ」俺にとっては。悪い気はしないな。可愛げがないな。可愛くなくて
2019年7月26日 21:04
真っ赤に染まる雲は、燃え盛る炎にでも包まれているようだ。ふ、と息を吐いて横の少年を見る。自分から「朝焼けが見たい」と言ったくせに、呑気に欠伸をしている。呆れながら、朝焼けに視線を戻す。あの雲に触れたら熱そうだな、と思った。そりゃあ、あの綺麗な白い花も萎んでしまうわけだ。「眠い」隣の少年が呟く。人をこんな所まで連れてきて何を言っているのやら。失礼だと思わないのか、と溜息を吐く。「呆
2019年7月12日 21:29
梅雨の日だった。しとしと雨が降っていて、休業中のお店の屋根を借りて雨宿りをしていた。小雨なら傘がなくとも帰れはするのだが、その日は何となく、のんびりと雨が止むのを待とうと思った。(……天気予報士はよく嘘を吐く)全てはデータではないということか、はたまたデータの読み違いか。どちらでも構わないけれど、信じている身にもなって欲しい、と内心ごちる。「こんにちは。雨、止まないね」不意に、横か
2019年7月8日 19:54
「無理でしょ」 当たり前だといったトーンで、少女は言い捨てた。一蹴された少年は呆気に取られてから、ふっと息を吐いた。苦笑を浮かべる。「冷たいな」「そう?でも、無理なものは無理だわ」 「人は同じものを見られるか?」というのが、本日の二人のお題だった。少年が持ってきた題なのだが、それを口にした瞬間元も子もない結論を言われるのだから、少年は乾いた笑みを浮かべるしかない。「だって